『なつぞら』比嘉愛未が魅せる“大人”のオーラ クールなだけじゃない表情の豊かさが魅力に

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2019年08月14日 06:01  リアルサウンド

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 凛とした美しさだけでなく、演技派女優としても一目置かれる女優・比嘉愛未。現在放送中の『TWO WEEKS』(カンテレ・フジテレビ系)の母親役、12年ぶりの朝ドラとなる『なつぞら』(NHK総合)のマダム役など、今や大人の魅力溢れるキャラクターを演じ話題となっている。


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 比嘉と言えば、まずはドラマデビュー作ながら主演を務めた2007年NHK連続テレビ小説『どんど晴れ』。最近の朝ドラは、ある程度キャリアのある俳優を主演にする傾向にあるが、この当時は2156人の応募の中からオーディションで比嘉が選ばれた。物語は、名門旅館という伝統と格式の前でひとり懸命に努力を重ねながら周囲の人々を変え、成長していく女将奮戦記。古き良き時代の明瞭な王道の展開において、清廉潔白で奥ゆかしい比嘉の存在感がヒロインと重なり、後の女優人生のイメージにも繋がった作品だと言える。


 そして2008年から2017年の間に3シーズン作られ、スピンオフや映画まで制作された人気作『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)での看護師・冴島はるか役。『どんど晴れ』の笑顔から一変、当初は言いたいことをはっきり言い、実力のない同世代のフェロードクターたちを見下した言動からは、一見冷酷な印象を受けた。一方でいざという時に頼もしい存在であり、同僚たちが彼女の心の扉をどんどん開けていく面白さがあった。比嘉は実年齢より大人の自立した強い女性の雰囲気を出すのがうまく、だからこそそれが崩れた時の動揺する姿や、シーズン3で流産してしまった時の自分を責めて涙を流すシーンなど、滲み出るような感情表現が視聴者の心を揺さぶる。


 『なつぞら』で演じているマダムこと前島光子はベーカリー兼カフェの「川村屋」のオーナーとして、広瀬すず演じる奥原なつが上京して最初に面倒を見る、最初の東京の母親的存在。2015年の『まれ』で写真出演をしているが、朝ドラで演技を披露するのは12年ぶりで、その成長した姿を見せている。広瀬すず相手だけではなく、かつての朝ドラのヒロインである山口智子や松嶋菜々子といった、一回り、二回り先輩の女優たちと競演しているが、比嘉はドラマの公式サイトで、「あの時代に、最先端のものを知っている洗練された女性の役。都会の女性としてなつを圧倒するオーラを出さなければいけない」と語っているように、当時のモダンでエキゾチックなオーラを眩しいくらいに放っている。


 そして面白いのが、仕事一筋で生きている人物なので、恋愛に対しては少し未熟なキャラだということ。一見自立しているように見えて、恋愛の話になると弱みを見せる時の可愛らしさも魅力の一つだ。これまでも、なつの兄である咲太郎(岡田将生)に対し、複雑な感情を抱くシーンがあったが、実は咲太郎を一途に待っている純情な役柄。今まで自立した女性を多く演じてきた比嘉の良さを出しつつ、コミカルな新しい魅力も見どころだ。今週は、咲太郎がマダムに結婚を申し込む計画を企て、マダムも咲太郎との結婚を考えていることがわかる急展開を迎えているが、いったいどうなるのか。


 また、『TWO WEEKS』では、初の母親役を演じている。最初は白血病に侵された娘を助けなければいけないと強張った顔が多かったが、回を重ねるごとに娘を思うやさしい顔を見せるようになった。これから母親役が増えていくだろうと実感させる演技が、実に板についている。


 デビューの頃から変わらぬイメージのまま年齢を重ね、様々な背景を持つキャラクターを巧みに演じる比嘉。女性としての凛々しさだけではなく、その裏に見え隠れする寂しさを醸し出すことができるのが、比嘉の魅力ではないかと思ったりもする。正統派だけどミステリアス。今回のマダム役や母親役が当たり役となったことで、30代の女優として演技の幅を広げ、現代の大物女優の1人になりそうな予感をさせる。  (文=本手)


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