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リクナビ問題が大炎上した真相 “利用者不在”の人材ビジネスに潜む「構造的歪み」とは

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2019年08月14日 07:02  ITmedia ビジネスオンライン

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ITmedia ビジネスオンライン

写真【画像】リクナビの個人データ販売問題
【画像】リクナビの個人データ販売問題

 リクルートキャリア(東京・千代田)が、就活支援サイト「リクナビ」で得た大学生の個人情報を元に、個人の「内定辞退率」を予測して企業に販売していた問題が炎上している。



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 問題となったのは、同社が顧客企業にこの「辞退率」の予測データを提供していたサービス「リクナビDMPフォロー」だ。データを提供するに当たり、同社はプライバシーポリシーの不備で学生約8000人に同意が取れていなかったことが発覚したと発表。個人情報保護法に違反している恐れが強く、同社は5日、同サービスの廃止を表明した。個人情報保護委員会からも既に問題を指摘されている。



 SNSなどでは、内定辞退率という学生の就活に大きく関わるデータを、リクルートキャリアが企業に販売していた点に非難が集中している。同社側は「情報は合否の判定に活用しないと同意した企業にのみ提供してきた」と説明している。しかし、「学生は商売道具じゃない」「自分から戦争を起こして武器を売るようなやり方」など、Twitterを中心に反発は強まるばかり。本問題の焦点に迫った。



●ユーザーの学生に適切な情報を示せていたか



 別の新卒向けサービスを手掛ける企業の担当者は「(リクルートキャリアの)内定辞退率を予測するサービスは、確かに技術的には可能だと思うが、『そこまでやるのか』と驚いた」と打ち明ける。「シェア1位で膨大なデータを持つ企業だからこそできることだが、意外だった。人材業界への影響は小さくないだろう」とみる。



 専門家からも、リクルートキャリア側の不備を強く指摘する声が上がっている。内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室などを歴任して個人情報関係の法改正に携わった経験のある、三浦法律事務所の日置巴美弁護士は「学生に適切な情報を提供していなかった点が炎上につながった」とみる。



 日置弁護士によると、今回の問題は大きく2点ある。まず学生の個人情報を第三者(リクルートキャリアの顧客企業)に提供するに当たり、プライバシーポリシーの不備から約8000人分は明らかに学生側の同意を得られていなかったという点だ。同社のリリースによると、3月のポリシー変更時に表記漏れや、同意取得の流れでの不備が発生していたのが原因という。



 加えて今回の問題に世論の感情的な反発が高まった理由として日置弁護士が指摘するのは、上記の約8000人に限らず、そもそも「内定辞退率の予測データを企業に販売している」という点について、リクルートキャリアがユーザーの学生全体に適切な情報を事前に示せていたか、というポイントだ。



●個人情報提供の「同意」、どこまで必要?



 個人情報保護法では、同社のようにユーザーの個人情報を扱う企業が第三者に提供する場合、その利用目的を「できるだけ特定」してユーザーに提示するとともに、第三者提供について同意を得る義務があるとしている。日置弁護士は「(内定辞退率の予測データ提供の合意に関して)適切な説明を学生にしなかったことが炎上につながったのではないか。内定辞退は就活生の人生を左右する問題にもなりかねない情報で、センシティブだ。リクナビを利用しない新卒の就活は日本で現実的にあり得ないというのもあり、学生側がより嫌がっているのだろう」と分析する。



 ただ、法令や個人情報保護委員会のガイドラインでは、今回のようなサービスのプライバシーポリシーの中で、内定辞退率のような複雑なデータについて、どこまで個人情報の「利用目的」としてユーザーに示せばいいか、さらには同意・不同意を判断可能なだけの具体的な情報の提供とはどのようなものか、詳細に規定していない。日置弁護士は「技術革新が進みビジネスが複雑化する一方、同委員会のガイドラインの記述はプリミティブで、現在のビジネスにマッチしていない。事業者が(自分で)判断してリスクを負っているのが現状」と指摘する。



●「運営企業と学生側がルール作りを」



 法律上で手続きが適法かどうかといった問題にとどまらず、こうしたサイトのユーザーが、企業の個人情報利用に納得できるようにするにはどうすればいいか。日置弁護士は「個人情報保護委員会が『ホワイトペーパー(公的機関による報告書)』を出すというやり方もあるが、それだけではないと思う。例えば(人材系企業と)ステークホルダーである学生や大学側が話し合いをして、お互い同意を得られるようなルールを作ってはどうか。企業の個人情報利用に関する仕組みへの理解もユーザー側に浸透する」と提案する。



 同じ人材業界からは、「ユーザーと顧客企業、誰のためのサービスだったのか」と、企業側の取るべきスタンスを問う声も出ている。



●「誰を喜ばせたいサービスなのか?」



 SNSやWeb上に個人が発信した情報などを元に、転職潜在層の人材に、企業のポストを紹介するマッチングサービスを手掛けるLAPRAS(東京都渋谷区)の島田寛基CEOは「人材系の業界は結局、『BtoB』(消費者でなく企業から料金をもらうサービス)なので、顧客企業からの売り上げを最適化すると今回の問題のようになってしまう。『C』(消費者)の利益が守られにくい構造ではある」と打ち明ける。「(企業と消費者の)どちらのユーザーを喜ばせたいか、ポリシーを明確化しないとリクナビに限らず陥る問題だ」とみる。



 LAPRASは、まだ転職活動を始めていないエンジニアに、同社のサービスでその人の能力や経歴を知り評価した企業がスカウトのメールを送るといった、ユニークなマッチングを売りにしている。リクナビを始めとした一般的な会員制の就活サービスが採る、ユーザーに事前に個人情報提供などの規約に同意してもらう「オプトイン」という方式ではなく、事後に情報の利用を拒否するユーザーからの申し出を受け付ける「オプトアウト」を採っている。



 ただ同社によると、やはり個人情報を分析して扱っているという点から、サービス開始当初はSNSで小さな“炎上”を何度か経験した。「法律上は問題ないものの、『何でこんな変なメールを送ってくるんだ』などと、感情的な反発はあった」(島田CEO)。



●ユーザー側が「搾取」だと感じる理由



 ユーザー側に不信感を抱かせず、個人情報の活用を納得してもらうためにはどうすればいいか。島田CEOは「個人情報を提供しているユーザーに、(サービスのメリットを)『還元』できる仕組みでないと、彼らは搾取されていると感じるだろう」と指摘する。



 例えば、今回問題になった、リクルートキャリアが学生の内定辞退率の予測データを顧客に販売するサービスでは、学生側の得るメリットが見えにくく、逆に選考でバイアスがかかると思われた、とみる。



 「今回、リクナビ側が出していた情報では、学生の感じる納得度は薄かったのかもしれない。(サービス提供側が)情報収集することでユーザーにもどんなメリットがあるか、説明すべきだった。例えば私たちのサービスも今回のようなケースを想定して、『転職活動していなくても企業と出会える』などと、ユーザー側のメリットを説明してきた」(島田CEO)。



 就活支援サービスは、ほとんどの場合サービスのユーザー側は無料で、運営会社が顧客企業から料金をもらう仕組みを取っている。今回のリクナビの問題は、就活のサービスが「本当は誰のための物なのか」という問いを、人材業界に突き付けている。加えてユーザーにも、「自分の個人情報がどう分析され、使われているのか」に関心を持つ必要性を喚起しているとも言えそうだ。


このニュースに関するつぶやき

  • 一方的に採用側が得するサービスだから学生が怒ったに決まってるだろ。日本の企業の8割くらいのデータを揃え、学生ごとに採用されやすい企業を紹介する有料サービスも提供してれば騒ぎにならなかった。
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  • 法的にクリアしていても道義的にクリア出来なければ、結局は炎上によって社会的制裁を受ける。認識の甘さ故の失態だろう。
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