ファーウェイ、独自OSで米中貿易戦争へ対抗 Androidよりも「安全・高速・柔軟」?

1

2019年08月14日 07:31  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

写真

 中国の大手通信機器メーカー・ファーウェイ(華為)は8月9日〜11日、広東省東莞市で、カンファレンス『Huawei Developer Conference 2019』を行ない、新しいOS(オペレーティング・システム)である「HarmonyOS」(鴻蒙OS)を発表した。


(参考:ファーウェイ、北朝鮮を秘密裏に支援していた疑惑が浮上 イランにも支援か?


 ファーウェイは現在、中国と米国の貿易戦争で制裁を科され、窮地に立たされている。今後、政情の悪化により、Googleが提供するモバイルOSシェア世界一であるAndroidの使用ができなくなった場合、HarmonyOSは救世主になりうるかもしれない。


・Androidよりも「安全・高速・柔軟」?
 まずはカンファレンスでの内容を振り返ると、HarmonyOSは競合プラットフォームよりも高速で、アプリの反応レイテンシー(遅延)が25.7%低減されるほか、マイクロカーネルにより、プロセス間通信(IPC)が他のシステムよりも5倍効率的になるという。


 また、​​スマートスピーカー、ウェアラブル、車載システムなどの複数のデバイスに柔軟に展開できるように設計されている。同OSは、2019年後半に、スマートスクリーン製品でローンチされ、その後3年間で他のデバイスに採用される予定だという。


 ファーウェイのコンシューマービジネスグループのCEOである余承東(リチャード・ユー)氏は、HarmonyOSは「Androidよりも安全で高速である」とし、そのうえで「ファーウェイがGoogleのAndroidエコシステムにアクセスできなくなれば、HarmonyOSをいつでも展開できる」と誇らしげだ。


 『Fast Company』は今回の動きについて「ファーウェイのHarmonyOSは、​Androidのライバルになることに主眼を置いているわけではない。むしろドナルド・トランプ(米国大統領)のライバルだ。米中貿易の緊張が収束せず、米国政府がファーウェイへのサービス提供を禁止し、Androidエコシステムから完全にロックアウトした場合、HarmonyOSは、​​Huaweiスマートフォン事業を維持する要になり、今後数年間で中国の支配的なモバイルOSになるのではないかと考えられる」と記している(参考:https://www.fastcompany.com/90388251/huawei-just-unveiled-harmonyos-its-answer-to-android-and-trump)。


・国際市場での成功は未知数も中国は別の話
 Googleも新たなOS「Fuchsia」を開発中だが、余承東氏によるとHarmonyOSは、2017年から開発が行なわれていたという。


 今回の発表に関しては、海外メディア各社も敏感に反応している。The Next Webは同OSについて「5月に米国米商務省が禁輸措置とするエンティティリストにファーウェイが含まれたことをうけ、GoogleはAndroidの提供を中止する可能性がある。それ以降、ファーウェイはこのOSをAndroidの代替とすべく、開発を加速させた」と伝えている(参考:https://thenextweb.com/plugged/2019/08/09/huawei-just-announced-harmony-os-its-answer-to-android/)


 BGR.comは「HarmonyOSは、​​GoogleのAndroidが中心の国際市場で成功する可能性はほとんどないが、中国では別の話だ。それがおそらく、HarmonyOSが世界の他の地域に拡大する前に、中国で展開される理由だ」と記している(参考:https://bgr.com/2019/08/09/huawei-harmonyos-vs-google-fuchsia-new-android-replacement-unveiled/)。


 またEngadget.comは「HarmonyOSはいつでも準備ができていると主張するが、その利点が開発者、ユーザー、特に米国ユーザーの心をとらえることができると判断するのは難しい。過去、SamsungはTizenを使用してAndroidを打ち負かそうと試みたが、現在はGalaxyウェアラブルのいちソフトウェアに過ぎないし、生産性とセキュリティに重点を置いているにもかかわらず猛威を振るわないWindows 10 Mobileは、もう一つの悪例だろう。ファーウェイは、以前に失敗したモバイルOSよりも厳しい課題に直面しており、独自のエコシステムを構築する以上のことをする必要があるかもしれない」と指摘している(参考:https://www.engadget.com/2019/08/09/huawei-harmony-os-hongmeng-android/)。


・「HarmonyOS」は「混沌」と「調和」のどちらを生み出すか
 中国共産党が支配する中国では、言論統制を行うために、民主主義陣営で開発されたインターネットサービスを半ば遮断した情報鎖国状態(グレート・ファイアウォール)を敷いた。結果的にそれは14億人に迫る国内市場だけでも十分に成り立つ経済圏のなかで中国独自のインターネット産業を生み、力を蓄えた中国のテクノロジー企業は、世界中で存在感を増しつつある。現在進行する米中の貿易戦争が収束しなければ、中国のテクノロジー業界はガラパゴス化が進み、この巨大市場への海外企業の参入障壁は、更に高いものになるだろう。


 「HarmonyOS」は、中国名の「鴻OS(Hóngméng)」の発音が複雑なため、音が似た英語の「Harmony」が使われたという。「鴻蒙」とは、古代中国の神話で、宇宙創成前の「混沌」とした時代のことだ。「混沌」と「ハーモニー」(調和)は、ファーウェイの置かれた現状と願いを如実に表す言葉ではないだろうか。


(Nagata Tombo)


このニュースに関するつぶやき

  • 独自OSとなると問題になるのはアプリだ。林檎は全世界で5億人もの社員を抱えることで膨大な数のiOSアプリを作っているが、遠道に同じ真似はできないだろう。
    • イイネ!1
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

ランキングIT・インターネット

アクセス数ランキング

一覧へ

前日のランキングへ

ニュース設定