Instagramのカメラエフェクトが誰でも作成・公開可能に モバイルAR市場を活性化させるか?

0

2019年08月15日 07:11  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

写真

 画像共有アプリで絶対的地位を確立しているInstagramが、新機能を発表した。この新機能は、AppleやGoogleがしのぎを削っているあの市場に小さくないインパクトを与えそうだ。


(参考:Instagramで「いいね!」数と動画再生回数が非表示に!? 日本でもテスト実施を発表


・ついにパブリックベータに
 Instagramの親会社であるFacebookは13日、公式技術ブログ記事でカメラエフェクト開発プラットフォーム「Spark AR Studio」をパブリックベータに移行したことを発表した。同プラットフォームは、今年5月に開催された同社の開発者会議「F8」において初めて披露され、登録した開発者だけが利用できるクローズドベータとして運用が始まった。そして、満を持して万人に開放するに至ったのだ。


 同プラットフォームを使って作成できるものは、Instagramで利用できるカメラエフェクトである。カメラエフェクト自体はSnapchatやSNOWなどにも実装されており、現在では「当たり前」の機能と言える。しかし、こうしたカメラエフェクトをユーザ自身が自作できる手段を提供することによって、Instagramは差別化を図る。


 自作されたカメラエフェクトは、従来通りに写真を撮影すると画面下部右側に表示されるカメラエフェクトボタンから選択することができる。また、各ユーザのプロフィール画面に表示されるカメラエフェクトボタンをタップすると、ユーザが公開しているカメラエフェクトを閲覧することができる。そして、閲覧したカメラエフェクトから気に入ったものを選ぶと、写真投稿時に使えるようになる。こうした機能の追加により、好みのカメラエフェクトを多数公開しているユーザをフォローする、というようなユーザ間の新たなつながりが形成されることが期待されている。


・プログラミングの知識は不要
 Spark AR Studioに対しては誰でも使えるようなツールなのか、という疑問が生じるだろう。この疑問に対してはプログラミングの知識は必要とされていない、と答えることができる。特定のプログラミング言語を記述する代わりに「パッチ」と呼ばれる部品をつなぎ合わせるエディター「Patch Editor」を活用する。このエディターを使えば、例えば「口が開くのを検出したらハートを表示する」といったカメラエフェクトの挙動を視覚的に設計することができるのだ。


 パッチを使ってカメラエフェクトの挙動を設計できても、表示するオブジェクトを作成できないというユーザが少なくないだろう。そうしたユーザに対しては、Spark AR StudioとSketchfabとの連携機能が提供されている。Sketchfabとは3Dオブジェクトを売買できるプラットフォームだ。3Dオブジェクトを自作できないユーザはSketchfabから必要なものを入手した後にSpark AR Studioに読み込めば解決する、というわけである。


 また、自作したカメラエフェクトを管理する機能としては、「Spark AR Hub」が提供されている。この機能を使ってカメラエフェクトを公開することができ、公開したもののアクセス数も確認することができる。


 以上のような機能から構成されているSpark AR Studioを使いこなすにはある程度の努力は求められるが、スマホアプリを基礎知識なしから開発するよりは簡単に自作できるだろう。


・成長前夜のAR市場
 ところで、Spark AR StudioがパブリックベータとなったことはAR市場にどのような影響を与えるのであろうか。この問いかけに答えるには、調査会社Digi-Capitalが今年1月に公開したブログ記事が参考になる。このブログ記事は、AR/VR市場の現状と今後の動向を報告している。


 同記事によれば、スマホARアプリが形成するモバイルAR市場をけん引する企業は、ARプラットフォーム「ARKit」を提供するApple、「ARCore」を運営するGoogle、そして前述のSpark AR Studio擁するFacebookである。Spark AR Studioが一般ユーザに開放されたことは、同プラットフォームがARKitおよびARCoreと対等な市場的地位を獲得したことを意味する。というのも、ARコンテンツ開発者は開発手段としてSpark AR Studioを正式に選べるようになったからである。


 ちなみに、考察する観点をAR/VR市場全体に拡大すると、2023年にはAR市場がVR市場より大きくなり、さらにはスマートグラス市場がもっとも大きなシェアを獲得することが予想されている。スマートグラス市場の成長をけん引すると見られているのが、Appleが開発中のiPhone接続型ARメガネだ。この製品に関してはApple製品専門ニュースメディア『Cult of Mac』が先月31日、一時は開発チームが解散したという噂が流れたものも、新しい開発リーダーとしてKim Vorrath氏が着任したことを伝えている。同氏はAppleのOS開発を15年に渡り支えてきた実力者にして功労者である。


 画像共有アプリにおいてカメラエフェクトが「当たり前」の機能になったことから分かるように、ARテクノロジーは着実に世界に浸透している。Spark AR Studioに対しては、ARテクノロジーにさらなる多様性をもたらすことが期待できるだろう。


(吉本幸記)


    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定