『ライオン・キング』フル3DCGの世界を拡張する4DXの技術 「命の輪」を体感できる演出に

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2019年08月15日 10:01  リアルサウンド

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『ライオン・キング』(c)2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 8月9日公開初日に映画『ライオン・キング』を4DXで鑑賞してきた。


 本作は単なるCGではなく、動物や草木の実写を基に作り上げられたという“超実写”作品。その4DX上映を先月池袋にオープンしたばかりのグランドシネマサンシャインにて堪能するという贅沢な体験だったが、予想のはるか先をいく仕掛けの数々にすっかり虜になってしまった。感想を一言で表すなら「映画を楽しみながらもアトラクションを体験した気分」。


■「命の輪」を五感で感じる


 まず、目の前に緑豊かなジャングルが見渡す限り広がる冒頭シーンからその映像美に惹き込まれる。草原の引きでのカメラワークは圧巻だ。また躍動感あふれる野生の動物の動きがリアルに再現されていて、毛並みだけでなく骨や筋肉の動き、質感までもが映像を超えてありありと伝わってくる。動物が群れをなして草原を駆け巡るシーンなどでは、動物の足音がそれぞれのテンポで振動となってシート越しに背中で感じられて、「生命力」そのものに間近に触れることができ、そこに“CGっぽさ”は皆無である。


 そして動物や虫の視線通りにシートが動くため、動物と同じ視界、目線の高さでジャングルを見渡すことができ、そこで起こっていることや彼らが遭遇したことを“同時に追体験”できる面白みがある。前後左右、上下と自然に動くモーションシートの成せる業だ(ちなみにグランドシネマサンシャインでは最新型のモーションシートが導入されているらしい)。


 さらに生命力を宿しているのが動物だけでなく、彼らと共存しているジャングル、草原においても同じである点が本作の秀逸なところ。映像とリンクして森林の香りが立ち込めるなど「におい」のギミックも取り入れられていて、手つかずの自然や本作の一つのテーマでもある「食物連鎖」に思いを馳せる効果がある。上映中に放たれるこの香りにはしっかりリラクゼーション効果もあるらしい。


 一方の終盤の敵対するスカーとシンバのバトルシーンは、終始振動が伝わってきて、音だけでは伝わらない動物たちの強弱やダメージが肌感でわかり、息を飲むシーンとなっていた。


 こんな仕掛けが至るところに散りばめられているため、瞬く間にして観客もジャングルの傍観者というより、この作品内の一員、一要素として取り込まれてしまう。


 ジャングルの王で主人公シンバの父ムファサが言う「命の輪」。その肉食動物、草食動物、そして広大な自然の営みを五感で感じることができるのだ。


 「すべての生き物は釣り合って生きてる」という「命の輪」の話に続いての、ムファサの「自然は誰のものでもない。手に入れることばかり考えるな。真の王は与えることを考える」という言葉には、上映中ずっと野生の世界を覗かせてもらっていた人間への何か強いメッセージにも感じられた。


■音楽の世界観もそのまま体感


 ディズニー映画と言えばやはり音楽も見どころの一つだが、ポップで名曲目白押しのディズニー音楽と、楽曲にあわせた繊細な揺れが表現できる4DXの相性は言うまでもなく抜群に良い。同じく4DXでも公開されたディズニー映画の『アラジン』は日本での最高興行成績を樹立するなど大ヒットを記録したが、ここ最近、音楽・ミュージカル映画の側面が強まったディズニー実写の公開が続いていることにも納得できる。


 4DXで特筆すべきは、激しい動きではなくあくまで音楽に合わせたゆるやかな動きが仕掛けられている点だ。本作で、『アラジン』の「ホール・ニュー・ワールド」に匹敵するのが、主人公シンバとナラが再会するシーンで歌う「愛を感じて」。映像美も相まってとても美しく抒情的に描かれている。


 打って変わってプンバァとティモンによる「ハクナ・マタタ」は、軽快に森の中を飛び跳ねて駆けながら歌う様子がシートの下からも伝わってくるかのようで、会場の一体感もより増していた気がする。子どもの頃のシンバが仲間と転がりながら歌う「王様になるのが待ちきれない」ではバブル(シャボン玉)効果も待ち受けていて、音楽の世界観をそのまま体感できるのも4DXの醍醐味の一つだろう。


 初めての4DX体験だったが、煙や風、水しぶき(少量なのでご安心を)など他にも様々な趣向が凝らされており、作品を「鑑賞」するだけでなく加えて「体感」できる没入空間が非常に新鮮で、新たな映画の楽しみをまた一つ知ってしまった気分だ。


 なお、今回訪れたグランドシネマサンシャインには、日本初上陸の「4DX with ScreenX」が導入されている。4DX with ScreenXとは、4DXだけでなく、正面スクリーンに加えて左右含め270度の壁面に映画シーンが映し出される世界初のマルチプロジェクション映像システム「ScreenX」を組み合わせた体感型シアターだ。4DXのみ、ScreenXのみ、4DX with ScreenXすべてに対応しており、作品によって異なるため事前にチェックが必須。この異次元体験をぜひ自分のものにしてみてほしい。(文=楳田 佳香)


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