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『かりそめ天国』の「飯尾No.1 女性管理職編」に見る、気づかれにくい「セクハラの芽」

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2019年08月16日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

写真『マツコ&有吉のかりそめ天国』(テレビ朝日系)公式サイトより
『マツコ&有吉のかりそめ天国』(テレビ朝日系)公式サイトより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「あの方からもらいたかった」ずん・飯尾和樹
『マツコ&有吉のかりそめ天国』(8月7日、テレビ朝日系)

 「#Me Too運動」は、ハリウッドの有名プロデューサーの長年にわたるセクハラ行為を、女優が告発したことから始まった。職権を濫用し、女性たちが断れないのをわかっていながら、肉体関係を迫る。非常にわかりやすいセクハラだと言えるだろう。

 それでは、ミスコンはセクハラにあたるのか? 勉強のできる人が頭脳を生かした職業についたり、運動の得意な人が才能を伸ばしてオリンピックに行くのと同じように、美に恵まれた人が、美を必要とする職業につくのは、合理的な考え方だと私は思っている。なので、ミスコンもセクハラではないのではないか。ただし、全女性に強制参加というのであれば、ちょっと話は変わってくる。

 セクハラという言葉になじみはあっても、概念がいまいちはっきりしないという人が多いので、何がセクハラで、何がそうでないのかは、当分議論が続くと思われる。Aさんの感覚ではセクハラでも、Bさんにはそうではないと感じられるケースも多々あるだろう。

 セクハラと思う視聴者は少なかっただろうが、私が「感じが悪いなぁ」と思ったのが、8月7日放送の『マツコ&有吉のかりそめ天国』(テレビ朝日系)内の企画「飯尾No.1」である。同企画は、これまで全国各地のキャバクラをずん・飯尾和樹が回り、各店舗のNo.1キャバクラ嬢を競合させて、飯尾のNo.1を選んでいた。放送時間が午後11時台だったことからできた深夜向きの企画と言えるだろう。

 しかし、同番組は10月から金曜の午後8時放送に変わる。ファミリー層の見るゴールデンタイムで、キャバクラがまずいと思ったのか、「飯尾No.1 女性管理職編」に企画を変更することにしたようだ。

 同企画は、飯尾が会社訪問をし、女性上司に会い、部下に仕事ぶりを聞く。そして「誰の部下として働きたいか」を決めるというものだ。その会話の中で、性的な話をしたりすることはまるでない。にもかかわらず、私がこの企画をセクハラ的だなと思わずにいられなかったのは、会社員に“魅力”を問うのが、適当だと思えなかったからだ。

 キャバクラのお仕事は、女性の魅力で多くの男性を惹きつけて、指名を稼ぐことと言えるだろう。指名の数が給料に直結することを考えると、彼女たちの優しさや美しさは「仕事」であり、「有料のサービス」と言える。一方、男性から見れば、キャバクラは金を払って好きな女性を選んでいい場所である。そういう世界で生きるキャバ嬢にとって、「飯尾No.1 キャバ嬢編」は通常業務の延長だろう。テレビに出るだけで箔付けにつながるし、幸運にも飯尾No.1の座を得れば、指名も増えるだろうから、いい宣伝になると言える。

 しかし、会社員は違う。会社員は人気商売ではなく、事務職や営業職などのプロとして採用されている。女性管理職は「女性だから」管理職に登用されたわけではなく、仕事の能力が管理職にふさわしいと判断されて、昇進したはず。なので、「この女性上司の下で働きたい」というテーマそのものが、そもそもおかしいのではないだろうか。男性上司ではなく、女性上司をターゲットにしているのは、女性に「特別なもの」を求めていると私には感じられるのだ。

 会社員の女性に対する「特別なもの」を求める姿が、飯尾が某社を訪問した際の会話にも出ていた。広報の男性が、首からぶらさげるタイプの入館証を飯尾に手渡した。飯尾は「あの方(受付嬢)から受け取りたかった」といい、広報の男性は「すみません」と謝罪する。

 広報の男性が飯尾に来館証を渡したのは、それが広報の仕事だから。しかし、飯尾は「女性からもらいたい」という「サービス」を無料で要求しているのである。会社員は事務や営業などのエキスパートとして仕事をして、その対価として給料をもらっているわけだが、一部の男性は、仕事とは関係ない「サービス」を、無料で女性に要求したり、受け入れてもらえることを当然のことと信じてやまない。これがセクハラの芽であると言えるのではないだろうか。

 視聴者のクレームを恐れる昨今、テレビの制作側も、いろいろ配慮していると思う。No.1キャバクラ嬢より、No.1女性上司の方が、女性を「応援している」印象を与えるので、女性視聴者を怒らせない。企業側も、女性上司をテレビで紹介してもらえたら、自社の宣伝とイメージアップにつながる。飯尾も、お笑い芸人として、おちゃらけて見せたわけで、本気とは限らない。誰も悪意などないし、それぞれの仕事をしたまでだろう。

 しかし、悪気がないからこそ、一番タチが悪いと言えるのではないだろうか。女性は会社員としての仕事をおろそかにすることなく、本業におおよそ関係ないサービスを無料で要求されても、笑顔で受け入れてほしいという意図が見え隠れするからだ。

 「#Me Too運動」をきっかけに、セクハラがいけないという気運が高まったことは事実で、恐らく、女性のカラダを触ったりするような、あからさまなセクハラは減っていくだろう。しかし、こういう「女性に本分以外のことを要求してもいい」という甘えを信じる男性が一定数いることを考えると、セクハラの根絶には、かなりの時間がかかるのではないかと思わずにいられない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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  • 日本でのセクハラの定義は「その女性がセクハラだと思えばセクハラ」ですよね。1990年代にアメリカからセクハラ概念を導入したとき、フェミニスト女性はそう定義しました。だから混乱が起こるのです。
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