Snap、最新メガネ型カメラ「Spectacles 3」を発表 ポストスマホ時代を「予習」か?

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2019年08月16日 07:01  リアルサウンド

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 人気画像共有アプリ「Snapchat」を開発するSnapが、以前から手がけている製品シリーズの新モデルを発表した。アプリ開発会社がハードウェア製品も継続的に開発するというやや珍しい事態の背景には、同社の未来を見すえた戦略がうかがえる。


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・2台のHDカメラで立体感を表現
 Snapは13日、公式サイトに掲載されたニュース記事において「Spectacles 3」を発表した。同社が以前より開発しているSpectaclesシリーズとは、カメラが搭載されたサングラスである。搭載されたカメラで撮影された画像または動画は、ユーザが持っているスマホにインストールされているSnapchatアプリに転送され、加工あるいは共有できるようになっている。こうしたSpectaclesシリーズの製品コンセプトとは、ユーザの「見たままを記録する」である。サングラスにカメラが付いていれば、スマホを取り出す手間をかけることなく記録したい瞬間を撮影できるというわけなのだ。


 「Spectacle 3」最大の特徴は、メガネの左右に1基ずつ計2基のHDカメラを搭載したことにある。この特徴により画像および動画の奥行を表現することができるようになった。奥行が加味された画像/動画については、同メガネの公式動画を見ると一目瞭然である。この動画を見ると、画像/動画を加工した時の様子もわかる。同メガネを購入するとモバイル向けのVRヘッドセットのような3Dビューワも付属しており、このビューワを使って撮影した画像/動画を見るとVRコンテンツから得られるような没入感も味わえる。


 「Spectacles 3」はすでに公式サイトから予約が可能であり、価格は380ドル(約40,000円)である。デザインは黒色が基調の「Carbon」と銀色がかった「Mineral」の2種類が用意されている。出荷は今年秋ごろであるが、現時点では出荷先に日本の住所は指定できないようだ。


・Spectaclesシリーズの歩み
 「Spectacles 3」について報じた経済情報メディア『Market Realist』の14日付の記事では、Spectaclesシリーズの歩みについてまとめている。同シリーズの初代モデル「Spectacles」は、2016年に130ドル(約14,000円)でリリースされた。Snap社はこの製品を大々的に宣伝したものの、22万本しか売れず、結果的に4,000万ドル(約42億円)の赤字を計上した。


 2018年には第2世代モデル「Spectacles 2」を150ドル(約16,000円)でリリース。同モデルは耐水性を備え、ファッション性も初代モデルに比べて大きく改善された。「Spectacles 2」で撮影された動画は初代モデルに比べて40%増加したと言われているが、このモデルも商業的に大きく成功したとは言い難い。ちなみに、2018年内には、デザイン性をさらに追及したマイナーチェンジモデル「Nico」と「Veronica」もリリースされた。


 「Spectacles 2」の不振と軌を一にするようにして、昨年のSnap社の株価は低迷していた。しかし、2019年になってからは同社の株価は上昇傾向にあり、8月13日時点の株価は年初の2倍以上となっている。こうした好調な株価を背景にして、同社は先週「ARとその他の分野への投資」を名目として11億ドル(約1,200億円)の資金を調達したことを明らかにした。


・スマートグラス・エコシステム時代の「予習」?
 前述したように、商業的に成功しているとは言い難いSpectaclesシリーズの開発に、なぜSnap社は固執するのだろうか、という疑問は当然沸くだろう。ビジネスメディア『Fast Company』は14日、こうした疑問に回答するような内容の考察記事を公開した。


 同記事によると、Snap社がSpectaclesシリーズを継続的に開発する真の目的は、約10年以内に到来するであろうスマートグラス・エコシステムを見すえているからなのだ。スマートグラスに関してはAppleとGoogleがそれぞれの水面下で開発を進めていると見られており、ポストスマホ時代の覇権を握るための重要製品と考えられている。それゆえ、Spectaclesシリーズは短期的な利益を上げることを目的に開発されているわけではない。スマホアプリとメガネ型カメラが連携する同シリーズの開発を通して、来るべきスマートグラス・エコシステムに適応するためのノウハウを蓄積しているというわけなのだ。


 テック系メディアUS版『WIRED』が13日に公開した記事においても、Fast companyと同様の見解が示されている。この記事では、そもそもSnaps社は製造した「Spectacles 3」の全部を売り切ろうとも思っていない、という同社のスポークスパーソンの発言が引用されている。そして、そんな同メガネの存在意義とは売るためのものではなく未来について「学習」するためのものである、と語る。なお、この文脈における「未来」とはスマートグラスを中心としたエコシステムが構築されたポストスマホ時代を意味している。


 「Spectacles 3」は、現時点では奇をてらったカメラに過ぎないと言われても仕方のないところがある。しかし、もしスマートグラス・エコシステムが実現した未来から振り返ってみたら、恐ろしく先見の明に富んだ製品と評価されるかも知れない。


(吉本幸記)


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