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夏休み、憲法について考えてみよう 明良佐藤、辻田真佐憲が選ぶおすすめの3冊

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2019年08月17日 16:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです (Getty Images)
※写真はイメージです (Getty Images)
 参院選での与党勝利を受け、安倍晋三首相は改憲論議の進展に意欲を示し、野党は反発を強めています。「週刊図書館」の夏休み読書特集では、この機会に憲法について考えてみようと、絵本から専門書まで、様々な分野から、おすすめの3冊を選んでもらいました。

*  *  *
■明良佐藤(大工)
(1)『復刊 あたらしい憲法のはなし』童話屋編集部編 童話屋 286円
(2)『図説 日本国憲法の誕生』西 修 河出書房新社 1800円
(3)『大工の明良、憲法を読む』明良佐藤 現代書館 1600円

 安倍晋三首相が憲法を変えると言い出して、印象として憲法はいいのに、なんで変えるのだろう?と、70歳になって、初めて憲法の条文をじっくり学んでみたら、びっくりの連続だった。

 その中で、最大のびっくりは、72年間、憲法は小・中・高校で条文としてしっかりと教えられていなかったこと。国の骨格である憲法を、これから主権者として大人になる若者たちに、なぜ自民党の長期政権は教えることを拒んでいるのか?

 第1の推薦本は、唯一文部省が憲法を教えようとして作った中学校1年用の教科書『復刊 あたらしい憲法のはなし』。憲法全体が、さし絵とともに、短く、わかりやすく解説されている。ただし、国民は憲法を守ること、と立憲主義に反することが書かれているのは、いただけないが。

 私が住む、ここ栃木県茂木町にも配られたが、教えられることはなかった。GHQが去って自民党政権になって、この教科書は使われることはなかった。なぜなら、政権に就いた自民党は、党是に自主憲法制定をうたった。つまり自民党はいまの憲法を教える気がさらさらない政党だからだ。

 2冊目は『図説 日本国憲法の誕生』。著者は改憲派の学者だが、この本はコンパクトに憲法の成立の中身を、写真を多用し、ビジュアル的にまとめていて生活者、素人にもわかりやすい。しかも何事も隠さず、大事な事実を書いている。

 そこでびっくりしたのは、GHQ案の憲法条文の「主権」を、日本政府は「至高の総意」と訳し、意味をごまかそうとしていたことだ。現在「私たちは主権者」と国会前で当たり前のようにコールしているが、GHQのケーディス大佐は「至高の総意では主権の意味が通らない」とはねつけたということが書かれていた。拍手喝采である。こんな大事なことを日本政府はごまかす。その姿勢は今も変わらない。

 3冊目は、残念ながら私の『大工の明良、憲法を読む』。なぜ残念かというと、この本の出版以前も以後も、素人の生活者が読んでわかりやすい憲法条文解釈の逐条本が一冊も出ていないからだ。依然、憲法は専門家のお堅い話に終始していて、素人の生活者を遠ざけようとしている。

 もっとも憲法を必要としているのは、圧倒的多数の主権者である素人・生活者である。生活者が憲法を学び、目覚めれば日本が変わる。

 憲法は国民主権、民主主義、平和主義が大切という、専門家がつくった概念だけを習うのはダメ。すぐ忘れる。憲法条文そのものを自分ですなおに読んで、どう自分が受け取るか、理解するかから始めなければ、自分のものにならない。条文一条一条を自分の感性で理解してこそ、主権者としての自覚が身に着く。そのために最も近い本が、大工の明良が生活者感覚と思考で書いた本。これです。

あきよし・さとう=1943年、東京生まれ。町工場や図書館、養護施設で勤務したあと大工に。著書に『八月十五日のうた』『日本人の精神と西洋人の精神』など。

■辻田真佐憲(近現代史研究者)
(1)『日本人のための憲法原論』小室直樹 集英社インターナショナル 1800円
(2)「憲法2・0」ゲンロン憲法委員会 「日本2・0 思想地図β vol.3」収録、ゲンロン
(3)『踊りおどろか「憲法音頭」』和田登 本の泉社 1700円

 憲法は、圧政による悲劇を防ぐために、人類が試行錯誤のなかで生み出した英知のひとつである。条文だけでは抽象的で掴みどころがない印象を受けるかもしれないが、その誕生の歴史をたどるとグッと具体的でわかりやすくなる。

『日本人のための憲法原論』は、まさにそのような試みだ。著者の小室直樹は、憲法を生み出した欧米社会の歴史やその根本にあるキリスト教の考えを示しながら、憲法とは「国家権力すべてを縛るために書かれたもの」だと解説する。つまり憲法とは、暴走しがちな統治権力を制限するものなのであって、国民の権利を制限するものではない。だからこそ、大日本帝国憲法の起草に関わった伊藤博文も、憲法の精神として「君権の制限」と「臣民の権利保護」を掲げたのである。国民に義務を課すかのごとき、自民党の改憲草案が誤っているゆえんもこれをみれば明らかだろう。

 もとよりここで改憲自体を否定しているわけではない。小室は、憲法が廃止されなくても、その精神が無視されれば、憲法は有名無実になるとして、ヒトラー政権下のワイマール憲法をあげた。日本国憲法も、その精神を守るため、現実にあわせて改正したっていい。

 ゲンロン憲法委員会の「憲法2・0」は、その点で興味深い取り組みである。この草案は、「フローとしての日本」と「ストックとしての日本」の両立を基本理念としている。現憲法の制定時から世界情勢は大きく変わった。「国難だ。憲法云々といっている場合ではない」との叫びが聞こえてくる今日、グローバリズムとナショナリズムの両立に気を配りつつ、立憲主義も守ろうとする同草案はもっと参照されるべきだろう。

 いうまでもなく、特定の改憲案をそのまま受け入れよといっているのではない。重要なのは、ああでもない、こうでもないと、われわれが憲法について思考実験することだ。振り返れば、現憲法の起草と制定は、けっして国民的な議論にもとづくものではなかった。和田登の『踊りおどろか「憲法音頭」』は、そのことを間接的に示している。政府は新憲法を普及させるために、「憲法音頭」や「新いろはかるた」などをたくさん作った。だが、その手法は戦時中の軍歌や標語などと大差なかった。「上から」普及させるだけでは、憲法の精神は守られない。

 現憲法もやがて改正のときがくる。そのときまでに、われわれはどれくらい真剣に憲法について考えられるようになっているか。「護憲か改憲か」の単純な二項対立だけは、そろそろ卒業しなければならない。

つじた・まさのり=1984年、大阪府生まれ。慶応義塾大学文学部卒。著書に『たのしいプロパガンダ』『大本営発表』『空気の検閲』『天皇のお言葉』など。

※週刊朝日  2019年8月16-23日号

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このニュースに関するつぶやき

  • もう夏休み終わりやんw ああ、自分らの休みを優先させたから校了とか遅れたのねwww
    • イイネ!7
    • コメント 0件
  • 結局安倍政権の改憲に反対のようですね。
    • イイネ!21
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