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ヒット商品の舞台裏 リコー「GRIII」の生産工場に潜入!

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2019年08月18日 17:00  AERA dot.

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写真ベトナム・ハノイにあるGRIIIの生産工場(撮影/柴田 誠)
ベトナム・ハノイにあるGRIIIの生産工場(撮影/柴田 誠)
 小型・軽量と高機能を両立させ、根強い人気を持つコンパクトカメラのリコーGRシリーズ。最新モデルのGRIIIは、「カメラグランプリ2019カメラ記者クラブ賞」を受賞、中国をはじめ世界的に売れ行きも好調とのこと。いったいどんなところで生産されているのか、ハノイの工場をリポートする。

【写真】鏡筒ユニットの取り付け作業

*  *  *
 リコーGRIIIを生産しているのは、リコーイメージングの子会社であるリコーイメージングプロダクツ(RICOH IMAGING PRODUCTS(Vietnam)Co.,LTD.)だ。ベトナムの首都ハノイ郊外ロンビエン区にある工業団地サイドンBの工場で、もともとペンタックスブランドのレンズの主要工場だったところだ。

 ベトナムは、中国から東南アジアへと工業製品の生産拠点が移っていく中で注目されている国の一つ。勤勉な国民性と細かな作業を丁寧にこなすことなどを理由に、日本から進出している企業も少なくない。日本に対する憧れもあり日本語教育も盛んで、技能実習生として来日しているベトナム人が多いのもそうした理由からだ。

 南北に長いベトナムには、各所に工業団地が点在しているが、北部にあるハノイ近郊では主に工業製品が生産されていることが多い。一方、南部のホーチミンでは部品関連の工場が多い傾向にある。

 リコーイメージングプロダクツのハノイ工場は、1995年からレンズの加工や組み立てをスタートしている。のちにペンタプリズムの加工や試作レンズの加工なども行うようになる。2015年からは一部のデジタル一眼レフカメラのボディーの組み立てを開始。工場は徐々に拡大していき、現在の敷地面積は3万5千平方メートルだ。

 ただしライセンス(ベトナムとの間で交わした工場を造るにあたっての契約)の関係で、この工場で生産した製品は全て輸出用となっている。

■女性が活躍するリコーの工場

 女性のほうがよく働くと言われているベトナムだが、この工場でも働き手の多くは女性。現在、工場では千人ほどの従業員が働いているが、約75%が女性で、30代の女性の構成比率が高い。ベトナムの平均年齢が31歳だから、まさに働き盛りが集まっている職場で、活気がある。

 日本からの駐在員は井原雄一社長を含めて6人。特徴的なのは、現地の管理職のうち女性が50%を超えていること。もともと女性の多い職場だが、彼女たちに責任ある仕事を任せている企業はそう多くはない。

 工場では、おなかの大きい妊婦を見かけることも珍しくない。実際、出産の前日まで働く人も多く、出産後もすぐに職場復帰するのだそうだ。

 GRIIIの生産は、2棟ある工場の一角で行われている。GRIIIの製造エリアはクリーンルームの中。取材するには、専用の作業着に着替え、マスクをして入る必要がある。クリーンルームなので、女性であっても化粧や香水はもちろん、アクセサリーをつけての作業はできない環境になっている。ちなみに、工場内の表記はベトナム語と日本語の併記になっている。

 エアシャワーを浴びてクリーンルームに入ると、いよいよGRIIIの製造現場だ。頭まですっぽりと覆った作業着とマスクをしているので、性別の判別は難しいが、女性が多そうだというのはわかった。

■組み立てては繰り返される検査

 GRIIIの製造は、大まかにいうと鏡筒ユニット(レンズ部)と、防振ユニット(センサー部)をそれぞれ組み立て、本体に組み込んでいくという流れだ。どこかがボトルネックとなって作業が停滞することのないように、必要になる場所のすぐ脇で必要な部品を組み立てる体制を取っている。
 組み立て工場というと、一本の長いベルトコンベヤーの両側にズラリと並んで作業しているところをイメージしがちだが、GRIIIの場合は複数のユニット工程と本体ラインが合成された構造のラインになっているのが大きな特徴で、こぢんまりした印象を受けた。

 ベルトコンベヤーを使わないため、ユニットを専用のボックスに入れて、主に隣の机で作業される次の工程に送るシステムが取られている。確実に手渡しするようなものだ。

 この工場は、前述したようにレンズ加工工場であり、645シリーズやKシリーズの一眼レフ用、さらには360度カメラのシータや双眼鏡用といったものまで、サイズや種類の違うさまざまなレンズの加工を扱っている。

 特にペンタックスブランドの交換レンズは多品種少ロット生産が求められることから、生産ラインは流動的である必要がある。そのため個々の設備をのせた作業台にはタイヤが付いていて、必要な位置に必要な台数を設置できるようになっている。別の場所で必要な器具や装置を作業台にセットしておき、必要に応じて入れ替えたり、増減させたりしているそうだ。
 実際の組み立てでは、工程の随所に検査・点検の項目が設けられている。ある段階ごとに検査・点検が行われ、そこをパスしないと次の工程に送られない仕組みになっている。単に不良の部品をはじくという目的だけでなく、調整して部品同士のマッチングを図ることもできるといったメリットもある。

 レンズ組み立て(アセンブリー)は、レンズの前群と後群のパーツのペア検査からスタートする。ここは画質にも影響する重要な部材。ペア検査で調芯(芯出し、中心を見極めること)をして、最適になるもの同士で組み合わせるのだ。現在、調整作業は自動化されており、新人の作業者でもできるそうだが、手元を見ていると、流れるようにスムーズな動きで無駄がない。

 防振ユニットは、センサーを組み込むカメラの要となる部分。IRカットフィルターの内部にゴミやほこりが入らないよう、クリーンルームの中にさらにクリーン度の高い(ゴミが少ない)部屋が設けられている。ここはクラス1000のクリーン度を基準にしているそうだが、実際はそれ以上100以下のクリーン度だそうだ。

 センサーにゴミが付着していないか、顕微鏡を使って目視で確認し、IRカットフィルターを接着してユニットに組み込んでいく。組み上がった防振ユニットは、個体ごとに感度を調整するほか、動作音、画質、ピントなどが次々とチェックされていく。
 そしていよいよ、カメラボディーへの組み立て工程。協力会社で作られたマグネシウム合金の外装に、鏡筒ユニットと防振ユニットが組み込まれ、ダイヤル・ボタン類を取り付けて外装ラバーが貼られると、やっと見慣れたGRIIIらしくなる。もちろんここでも外装に傷がないか、画質や動作、無線LAN機能などがチェックされる。また、この段階でファームウェアも最新のものにアップデートされ、最新の状態として出荷できるGRIIIが完成する。

■梱包時も細かくチェック 化粧箱にはビニールを

 さまざまな検査項目をクリアして、クリーンルームから送り出されたGRIIIは、やっと箱詰めされて出荷となる。しかし、ここでも多くの検査や点検をパスしなくてはならない。
 GRIIIは外箱にも気を使われており、傷がつかないように畳まれた段ボールが一箱ずつビニール入りで納品されている。通常、外箱は輸送用のためのものなので、些少の傷を気にしないのが一般的だが、そこはGRユーザーへの心配り。箱を開けるときのワクワク感を大事にしたいという思いが込められている。

 カメラ本体のほかに、説明書やケーブル、バッテリーといった各種内容物が箱詰めされ、バーコードが貼られると終わりかと思うとそうではない。入れ忘れたものがないか、最終的に箱の重さを量って確認する。そこで問題がなければ、いよいよ出荷となる。

 ここまで徹底した点検をしていれば、不良品や不足品はまずない。小さなボディーに込められたさまざまな思いがあって、それがGRIIIになっている。それが伝わってくる工場取材だった。

写真と文=柴田 誠

※アサヒカメラ2019年8月号より抜粋

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