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ブームの“粉骨” 値段は? やり方は? 海洋散骨は漁師の副業にも

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2019年08月19日 07:00  AERA dot.

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写真花は必ず茎をとって、最低限の花びらだけを撒く (撮影/田茂井治)
花は必ず茎をとって、最低限の花びらだけを撒く (撮影/田茂井治)
 遺骨を“粉骨”する人が増えている。粉骨して海洋散骨や樹木葬というかたちで自然に返すためだ。背景には、少子高齢化で墓守が少なくなっているという現実がある。粉骨や海洋散骨の現場はどうなっているのか。ジャーナリストの田茂井治氏が潜入取材した。

【写真】粉骨の作業の様子。乳鉢でひたすら骨をすりつぶしていく

*  *  *
「“私の”はそのうち娘が持ってくるからよろしくね」

 梅雨明け前の東京都江東区。住宅地の一角で、高齢女性はそう言って路地に消えていった。小さな木箱を抱えたその女性の背中が小さくなるまで見送っていたのは甲斐浩司氏(52)。「琉宮海葬」というサービス名で、遺骨の粉骨処理と海洋散骨などを手掛ける「パイル21」の代表だ。

 高齢の女性は数年前に亡くなった旦那さんのそばにいたいという思いで、田舎のお墓から遺骨を引き揚げ、甲斐氏に粉骨を依頼。5分の1程度になった旦那さんを引き取りに来たのだ。後日、自宅に近い納骨堂に大半を納め、一部を自宅の仏壇に分骨するという。

 近年、このように骨をパウダー状にする「粉骨」の希望者が増えている。宗教学者の島田裕巳氏が言う。

「少子高齢化で墓守がいなくなり、墓を維持できない、墓をつくってもしょうがないと考える人が増えた。その結果、粉骨して海に撒いたり、樹木葬というかたちで自然に返す方法を選択する人が増えています」

 現代ならではの理由で粉骨を希望する家族も多い。前出の甲斐氏が話す。

「死んでまで面倒をみたくないと『粉骨してそちらが知っている納骨堂に送っておいて』と遺骨をゆうパックで送って、その後、連絡が取れなくなる人もいます」

 実際に粉骨する現場を見せてもらった。閑静な住宅街にある“粉骨場”にはゆうパックで届いた遺骨が山積みになっていた。

「多い日には20柱の遺骨が届く。ピークの10〜11月は月に700柱の粉骨をお願いされる」という。

 届いた遺骨の保存状態はさまざまだ。火葬した遺骨を骨壺から出して墓下に納めていた場合は、周囲の土ごとゆうパックで送られてくることも。土と骨を振り分け、“洗骨”する必要がある。一方で、骨壺ごと墓下に長く安置されていた遺骨も大半は洗骨する。

「一見すると密閉された骨壺ですが、内部に結露が生じて水浸しになっている遺骨も多い。昔の骨壺は“建て付け”が悪いのか、隙間からイモリが入って、中に卵を産みつけていることも」

 そう話しながら、遺骨を洗う甲斐氏。その合間に、試薬を取り出し、骨が浸かった水につけた。

「アスベストと同程度の高い毒性を持つ六価クロムの含有量を検査します。火葬場の耐熱ステンレスと耐火煉瓦から放出されて遺骨に吸着するんです」(甲斐氏)

 濁った水につけた試薬は赤く変色。環境基準を上回る六価クロムが含まれていることを意味する。

「粉骨して土に撒くのであれば、有機質の土壌だと六価クロムは無害な三価クロムへと自然と変わります。しかし、海はアルカリ性で中和できない。だから、海洋散骨する場合は、無害化する必要がある。回りまわって、発がん性物質を含んだ状態の遺骨を海に撒くのは好ましいことではない」(同)

 乾燥機にかけたら、いよいよ粉骨だ。磁石を片手に、遺骨から異物を取り除く。棺桶に使用された釘などを取り除くためだ。そのほかにも指輪や金歯、インプラントに使用された金属などが混ざっていることも。

 異物を取り除いた後、遺骨を乳鉢に移したら、ひたすら手作業で骨をすりつぶしていく。料金はサイズによるが、最高で3万5千円。機械で粉骨する場合は洗骨込みで3万2千円からだ。

 こうした粉骨業者は需要の増加とともに、近年急増している。手作業で行うなら、ヤフオクで2万円も出せば、乳鉢などをそろえることができるという。そのため、マンションの一室で粉骨を副業のように行っている業者も。おのずと、六価クロムの無害化をせず、ただ粉骨するだけの業者もいるという。無害化は自主ルールにすぎないのだ。

 海に散骨する業者も乱立し始めている。甲斐氏から依頼を受けて時折、船を出している「ビッグタックマリンサービス」の船長が話す。

「需要が増えたことで、船を持っている葬儀屋が散骨を始めたり、遊漁船と契約して散骨に乗り出したりする業者も増えている。普段、船を泊めている港でも、プレジャーボートや、釣り具を持たない客を乗せた釣り船が沖合に向かう様子を頻繁に目にします」

 その多くは、“違法操業”だ。商売で客を乗せて沖合で散骨する場合は、不定期航路事業の許可・登録が必要だ。釣り人を乗せて漁場へ行く遊漁船では旅客を伴う散骨はできない。船長は「白タク業者のようなもの」と言う。

 ただし、抜け穴もある。「委託散骨」というかたちで、家族から遺骨を預かり、船舶業者が沖合で散骨する分には、不定期航路事業の許可・登録が不要。これらを取り締まる法律はない。そもそも海洋散骨を取り締まる法律はない。

「1987年に石原裕次郎さんが亡くなったとき、兄の慎太郎さんが『海を愛した弟の骨を海に撒きたい』と散骨を希望しましたが、当時は墓地埋葬法があるため、ダメだと考えられていました。91年に法務省が『葬送のための祭祀で節度を持って行われる限り違法ではない』という解釈を示して以降、散骨は自由にできるようになったんです」(島田氏)

 もちろん、節度は求められる。近海には漁業権が設定されているため、静岡県熱海市では10キロ以上離れた海域で行うよう、ガイドラインを定めている。

「漁獲量の減少や後継者不足を受けて、漁協をあげて散骨事業を始めるところもある」(船長)

 本誌は甲斐氏が行う海洋散骨の現場にも同行させてもらった。船長の船で30分ほどかけて茅ケ崎港から沖合10キロの地点へ。甲斐氏は一礼した後、水溶性の紙袋に包まれた遺骨を撒き、花びらと小瓶の日本酒を海に注いでいった。

 わずかな船のエンジン音と波音に紛れて遺骨が散り散りになっていくさまは、少々はかない。だが、家族を連れ立って散骨する場合は、趣が一変するという。

「40代の息子さんを亡くした家族は、妹さんが『兄はゲームが好きだったから』とスーパーマリオのテーマソングをCDに入れて持参されました。静かな洋上でマリオの曲を大音量で流しながら、みんなでお兄さんの遺骨を撒いたんです。そのほかにも、『母が好きだったので』と家族みんなでドリカムの『決戦は金曜日』を合唱される家族もいました」(甲斐氏)

 粉骨・散骨の需要は今後も増え続けると予想される。お墓を必要としない家族が増え続けているためだ。

「東京都の小平霊園では2012年度から共同で遺骨を埋葬する樹林墓地、14年度から個別に遺骨を埋葬する樹木墓地の募集を開始しましたが、その倍率は10倍を超えている」(島田氏)

 だが、散骨は後になって大半の家族が後悔しがちな点は留意したい。

「散骨した家族の6割が後悔する。『少しでも遺骨を手元に残しておけばよかった』と。散骨してしまうと、故人と語らう場所を失ってしまうんです」(同)

 まだまだ課題は多い。

※週刊朝日  2019年8月16日‐23日合併号

このニュースに関するつぶやき

  • ワシは宇宙葬が良いな���å��å����å��å����å��å�
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  • たくさんの遺骨を扱うなら人違いしないのかしら。散骨したあとやはり後悔する遺族がいるのならダメだわ。
    • イイネ!12
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