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約20年変わらない日本の「断熱基準」。義務化延期で、熱中症を招く新築住宅はなくならない!?

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2019年08月20日 08:40  HARBOR BUSINESS Online

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Contents1 6日間で都内の熱中症死者39人、うち住宅内が37人2 日本人は、暑さ・寒さを「ガマンして」生活している3 省エネ基準の度重なる改定も、断熱基準は約20年変わらず4 「2020年までに断熱性能の義務化」は事実上の白紙化5 断熱効果が低くても最高級等級を取得できる!?

◆6日間で都内の熱中症死者39人、うち住宅内が37人

 うだるような暑さが続いている。東京都監察医務院によると、8月1〜6日の6日間に都内で熱中症により死亡した人は39人に上り、そのうち37人が住宅内で死亡したという。

 日本で住宅を建てる場合、気候風土について考慮に入れなければ、住む人の健康を害することになる。年間を通して気温が激しく上下し、沖縄や九州から北海道まで冷暖房が必要のない地域はなく、程度の差はあるが何らかの対策が必要だ。気温が高いうえに湿気も高いので、非常に厳しい環境での生活を余儀なくされる。 

 世界保健機関(WHO)は「健康を決定する要因」として、1番目の「平和」に次いで、2番目に「住居」、3番目に「教育」を定義している(ジャカルタ宣言、1997年)。健康な一生を送るための要素として、住宅は非常に大きなウェートを占めているのだ。

◆日本人は、暑さ・寒さを「ガマンして」生活している

 ところが日本では、住まいと健康が密接にかかわっていることへの理解が十分に達していない。『たしかな家づくり』(若葉文庫)を上梓した日本建築検査研究所の岩山健一氏は「日本の住宅の最大の問題は断熱にあります」と断言する。

「高齢化社会の進展によって、住宅のバリアフリー化が叫ばれていますが、大きなバリアになっているのが、部屋と部屋との間の温度差です。家の中で温度差をつくらないようにすれば、快適で健康な生活を手に入れることができるはずです。夏場でも断熱性能が十分な空間であれば、天井や床付近、あるいは家の中のどこの温度を測ってもほとんど差がありません」(岩山氏)

 前回の記事のなかで「大手ハウスメーカーによる軽量鉄骨住宅が、断熱性能を満たしていない」という点についてレポートしたように、大手ハウスメーカーの住宅を中心として住宅のエコ化が進んでいるとは言えない状況となっている。

 国土交通省の資料によると、日本の冷暖房用のエネルギー消費は、先進国と比較すると「約4分の1」と少ない。これは必ずしも日本の家庭が省エネに熱心だからでなく、冷暖房の使用自体が「局所的」かつ「間欠的」であるために、エネルギー消費が極端に少ないということだ。

 日本の多くの家庭は、いまだに暑い時や寒い時にその場所だけを冷房したり暖房したりするのが主流だ。日本だけエネルギー消費が少ないのは、暑さ・寒さをガマンして生活しているということにほかならな い。

◆省エネ基準の度重なる改定も、断熱基準は約20年変わらず

 前回の記事を読んだ方から「なぜ断熱性能が低い住宅が、省エネルギー基準で最高級の評価を得られているのか」という問い合わせがあった。その疑問にお答えしたい。

 それは、日本の断熱に対する法整備が遅れていることが大きな要因となっている。岩山氏は「構造や防火については法律で規定されていましたが、『断熱』については長らく放っておかれていました」と話す。

 日本の住宅において、省エネ基準が最初に設けられたのは1980年のことだ(旧省エネ基準)。その後1992年の「新省エネ基準」、1999年の「次世代省エネ基準」と2度にわたって改訂が行われ、以前の住宅に比べると暖房費を半減することが可能な断熱水準になった。だが、断熱に関しては1999年の改定から約20年が経過しても大きく変わっていない。

 1980年、1991年、1999年の断熱レベルは、それぞれ「断熱等級2」「断熱等級3」「断熱等級4」と変化してきた。だが、欧米のほとんどは断熱対策が強制事項となっているのに対し、日本では義務化されていないため、新築住宅でも適合率が3割程度にすぎない。「守りたい人は守ってください」という任意の「推奨」にすぎず、これでは基準を満たした最低限の住宅が普及するはずがない。

◆「2020年までに断熱性能の義務化」は事実上の白紙化

 2012年の国土交通省のデータによると、1999年に制定された次世代省エネルギー基準を満たしている住宅はわずか5%程度。2013年に改訂された基準も、断熱については実質変わらない。多くの住宅が、断熱が十分ではない状態にあるのだ。

 このような状況を受けて、2015年に「改正次世代省エネルギー基準」が施行され、「新築住宅は2020年までに、段階的に省エネルギー基準への適合を義務化する」ことが明記された。最低限度の省エネ基準以上の断熱性能を有していない住宅は、新築をすることができなくなるというものだ。

 だが、昨年12月3日に開催された国土交通省の社会資本整備審議会では、「断熱性能の義務化」を事実上白紙化する案が提示され、審議会で了承された。2020年の義務化は、ほぼ延期されたと言っていい。

◆断熱効果が低くても最高級等級を取得できる!?

 気になるのは、仮に新たな断熱基準が義務化されたとして、快適な生活を送ることができるのだろうか? ということだ。

「断熱というものは、性能基準を満たした断熱材を入れておけばいいわけではありません。断熱効果を確実に発揮し、隙間風の侵入や暖気・寒気の流出を防ぐには、気密性が重要になります。しかし、次世代省エネ基準には気密性の規定がすっぽり抜け落ちています」(岩山氏)

 仮に2020年に断熱性能の義務化が施行されたとすると、すべての新築住宅で「断熱等級4」を実現しなければならなくなる。だが、それは先に述べたように最低限度をクリアしたに過ぎず、その住宅が快適を保証されたわけでないことを理解しておきたい。

「ハウスメーカーのカタログを見ると『次世代省エネ基準を満たした住宅』であるとアピールしています。しかし断熱材が連続していない気密性の低い住宅でも、所定の厚みが入っていれば最高級の『断熱等級4』を取得できます。断熱効果がないにもかかわらず、ハウスメーカーによって『新基準を満たしたエコ住宅』という免罪符に使われる恐れがあるのではないか」と、岩山氏は危惧している。

【岩山健一(いわやま・けんいち)】

一級建築士。1956年8月27日生まれ。1999年に日本建築検査研究所を創業。これまでに3000を超える建築検査にかかわり、欠陥住宅裁判の鑑定人としても活躍している。ニュース番組や新聞、週刊誌など、メディアに多数出演。近著に『たしかな家づくり——マイホーム建築の基礎知識』(若葉文庫)

<文/藤池周正(ライター)>

このニュースに関するつぶやき

  • 未だにアルミサッシばかりの時点で、断熱なんて考えていないことが明らかでしょ。梱包材を貼るだけで月に数千円の光熱費が浮くんだよ(笑)。
    • イイネ!2
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