『テラスハウス』東京編:第9〜12話ーーメンター的役割の香織とずっとチルってるケニーの対称性

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2019年08月20日 11:01  リアルサウンド

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『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』(c)フジテレビ/イースト・エンタテインメント

 同一メンバーでの生活が12週続き、住民たちのいろんな顔が映り出してきている『テラスハウス』東京編。身の毛もよだつガールズファイトや、流佳の未熟さを指摘する姿勢など、主に女性陣による他の住人へのアプローチはとてもアグレッシブだ。しかしそのようにして意見をぶつけ合い、逃げずにお互いを高めようとするからこそ、今までのシーズン以上にひとつの共同体としての成熟度は高まってきているようにも思う。一方で、最初のスピード感からするとやや落ち着いてきた印象だ。第9〜12話は、衝突とチルアウト(落ち着き)という二極化が垣間見えた4週だったのではないだろうか。


(関連:『テラスハウス』東京編:第5〜8話にみる、春花と莉咲子の“バチバチな関係性”


■メンター的役割を担う香織
 繰り返しになるが、メンバーが固定されたまま次で13週目を迎えるというのは、今までにはおそらくなかった長さ。家を出て行く理由というのは様々ではあるものの、たった12週だと思える期間すらもメンバーが固定されないのがテラスハウス生活の難しさなのだろう。しかし長く続いているだけに、メンバー同士の意見がぶつかる瞬間というのも当然出てき始める。


 “テラハ史上一番怖いケンカ”が勃発したのは第9話、冒頭でのできごとだ。春花と莉咲子によるケニーをめぐる争いが、いつしか相手の性格を非難しだす口論に発展し、歯止めが効かなくなってしまうまでの長く苦しいケンカ。あまりにもリズムよく言葉の殴り合いが繰り広げられるものだから、思わず興奮して見入ってしまった人も多かったのではないだろうか。そのひとりである筆者は、「これはもう修復しようがないところまでいってしまったのではないか」と覚悟したものだ。


 ところがどっこい、彼女たちは次の日か2日後くらいに見事和解をしてみせる。「すぐ仲直りってなるのはちょっと気持ち悪くなっちゃう」と春花は正直に言うけれど、それに対して 「今日からまた春花ちゃんを知っていける時間をつくれたらうれしい」「考え方が一緒な部分を見つけていきたい」と莉咲子が歩み寄ったのは、たとえ表向きの発言であっても中々理想的な関係修復に見えた。のちのインスタ騒動のようにまだ完全に火は消えていないようだが、(性格の悪い見方をすると……)気の合わないもの同士が共同生活を続ける様子を見られるのも、『テラハ』の醍醐味のひとつに違いない。


 思うことがあれば遠慮せずに言うという“オープンさ”は、本シーズンの特徴なのかもしれない。流佳による香織への想いにしても、弟的な存在にしか見えないと言ってしまうだけで終わることもありえるが、そこから香織も含めてみんなで流佳を成長させようとする動きを見せるのが東京編の特異な点だ。“絵具”探しからの卵かけごはんという微笑ましいデートの最後、付いてきてもらったお礼と言いつつも会計を払われてしまう流佳。香織は後日、その理由について「流佳の思う“かっこいい”が、“よく見せること”に終始してる気がして……」と答えていたのはとても印象的だった。「なぜダメなのか」をちゃんと考えて、しかも相手を潰さないように優しく伝えることができる、年長者らしいこの香織の存在が間違いなくキーになっている。


■一方で、オープンには見えないケニー
「まじめな話を全部チルに持っていかれる」


 あまり男性陣と話すことがない春花に、せっかくこの家に住んでるんだからみんなと話したほうがいいんじゃない? とアドバイスをするのもテラハのメンターである香織のナイス配慮。そこで春花が翔平以外の男性陣について言及したのがこの言葉だ。とりわけ、深く考えずに「なんとかなるでしょ!」と言うケニーは、正反対の香織の存在もあってやや悪目立ちするようになってきている。


 莉咲子からの再三のアプローチを受けても「そうだね〜」しか返すことができず、仕事で行き詰まる香織や流佳には「大丈夫だよ!」と根拠のない励ましを送る。春花と喧嘩した莉咲子が夜遅くに家を出ていっても、特段興味はなさそうで……。能天気な性格が悪いわけではないし、みんながギチギチに考え込んでいるのもそれはそれでしんどいだろう。けれど、最年長のポジションにいて、それなりにみんなを引っ張る姿勢を見せながらも、実は何も考えていないというところに、どうしても疑問符を浮かべてしまう。スタジオメンバーからは“プロモーション疑惑”も指摘されているが、真相はいかに……。


 ケニーの未熟さがあらわになるからこそ、流佳の成長がよりいっそう際立ってきている。最初の“ブロッコリーパスタ”こそ衝撃的なものだったが、とりあえず挑戦して、失敗から学ぶということを急速に実践しはじめているのだ。そうして成長していながらも、流佳から今度は飲みに行こうと誘われ、約束している香織は「何を話したらいいかわからない」と困惑気味。一方で翔平にはたくさん話したいことがあって、憧れの存在であるということを吐露していた。


 流佳や香織の想いは育まれながらも、一方通行の一途をたどっている。そんななか、第12話ではついにケニーが莉咲子に「好き」であると告げ、その答えは次話に持ち越された。これまでずっと受け身だったケニーが、最後も莉咲子に言葉を引き出されるようにして告白へと踏み切ったように見えなくもないなか、彼女たちの関係はどのような結末を見せるのだろうか。


 最後に、この4週でいちばん心を掴まれたシーンをあげて記事を締めたい。第11話の最終パート、「何したいかまだ見つかってない?」と春花が尋ねると、流佳は“ブロッコリーパスタ”をフォークで掬いながら情けなさそうに首を縦に振る。そのあとの「それでいいと思う」、この春花の返答がまるで青春群像ドラマのようだった。(文=原航平)


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