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昭和の妖怪・口裂け女伝説は、なぜ瞬く間に日本で拡散したのか?【オカルト研究家・山口敏太郎】

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2019年08月20日 15:00  AERA dot.

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写真なぜ、口裂け女の噂はここまで広まったのだろうか(写真:gettyimages)
なぜ、口裂け女の噂はここまで広まったのだろうか(写真:gettyimages)
 夏といえば何を連想するだろうか。海?花火?お祭り?バーベキュー?音楽フェス? 考えるだけでワクワクする楽しい催しがたくさん思い浮かぶ。しかし、このうだるような暑さに最もぴったりなものといえば「怪談」ではないだろうか。AERA dot.では「真夏の都市伝説シリーズ」と題して、オカルト研究家の山口敏太郎氏に身の毛もよだつ怖い話を綴ってもらった。第一回目は、かつて社会現象を巻き起こした「口裂け女」だ。

【写真】社会現象を巻き起こした口裂け女の姿はこちら

*  *  *
 2019年7月20日、岐阜県柳ヶ瀬商店街において山口敏太郎プロデュースの「柳ヶ瀬お化け屋敷・恐怖の細道」が開幕した。今年で5回目となるこのお化け屋敷は、出てくる妖怪がすべて「口裂け女」であり、歩くコースは昭和の街並みを再現している。かつて中高年が子供の頃に経験した昭和の妖怪「口裂け女」の恐怖心を追体験できる仕組みとなっているのだ。 

 民俗学では、1978年岐阜県において「口裂け女」の噂は発生したと言われており、1979年、岐阜日日新聞により報道され県内で大きな問題となった。マスクをつけた女性が子供に向かって「あたし、きれい?」と問いかける。子供が怯えながら「きれいです」と答えると、マスクをとって耳元まで裂けた口を見せながら「これでも?」と叫びながら襲いかかると言われた。中には凶暴な「口裂け女」もおり、手に持ったハサミを使って子供の口を切り裂くとも噂された。 当時、子供であった筆者もこの妖怪談に戦慄を覚えた。

「口裂け女」は整形手術の失敗により生まれた妖怪だと言われ、それを気の毒に思った姉妹も自らの口を裂き「口裂け三姉妹」が生まれたとされている。「口裂け女」はロングヘアーの美女であり、スポーツカーを乗り回し、おしゃれなコートに身を包み、100メートルを3秒で走るとされたその身体能力も恐怖の要因だった。

 当然、「口裂け女」への対策案も伝播しており、「ポマードポマード」と唱えると「口裂け女」が悲鳴をあげて逃げ出し命が助かると言われた。なぜポマードという呪文が有効なのか。それは「口裂け女」が生まれる原因となった整形手術を執刀した医者がポマードをつけていたからだという。妖怪と言えどもトラウマ的な記憶には、精神的なダメージがあるのであろうか?

 この「口裂け女」の噂は、岐阜県から愛知県、京都府に伝わり、瞬く間に日本中に拡散した。情報伝達ルートは修学旅行で他校の生徒と接触することにより情報が共有されたり、盆や正月に祖父母宅で他県の従兄弟と接触することにより拡散した経路も指摘されている。

 インターネットを使って情報の裏をとっている現代とは違って、まだ日本人が情報に対してリテラシーがなかった時代のことゆえ、教師や両親など大人さえも信じてしまい噂はエスカレートしていった。妖怪の歴史を考えると、この「口裂け女」という存在は口伝えで伝播していく最後の伝承妖怪といっても差し支えがない。 

 しかし、同時にマスコミの影響も受けており、新聞や雑誌で報道されることで設定やキャラクターが強化されていった。当時全盛期であった深夜ラジオの投稿はがきでも「口裂け女」の話が盛んに語られ、そのファンタジックなキャラクターに深みを与えていった。もちろん、深夜ラジオで取り上げられたことが噂の拡散に拍車をかけたのは言うまでもない。

 さらに、マスコミによる名称の誤伝達も、愛媛県で発生している。地元新聞社が「口裂け女」を間違えて「口割れ女」と報道してしまったために、愛媛県では「口裂け女」のことを「口割れ女」と呼ぶ“方言”が生まれてしまった。方言と言えば、「口裂け女」の事を関西では「口裂き女」と発音する人が多い。しゃべり文化が盛んな関西で「くちさきおんな=口先女」と呼ばれた事はなかなか興味深い事例である。これも妖怪名称おける立派な関西弁である。

 その後、妖怪伝説はインターネットの普及により、掲示板やTwitter、Facebook、LINEなどで拡散される対象となってしまった。人々が口伝えで広げていく妖怪は「口裂け女」が最後になってしまったのだ。

 しかし、21世紀に入り妖怪をチープな存在にしてしまったインターネットのおかげで、妖怪「口裂け女」は復活し、国境を越えて海外に伝播した。なんと韓国で「口裂け女」は都市伝説として広がり始めたのだ。現地では「赤いマスク」と呼ばれ、韓国の子供たちを脅かし続けている。赤いマスクというモチーフが日本とは違うオリジナル設定だが、これは赤=共産国、つまり北朝鮮への潜在的な恐れが妖怪として描写されたのではないだろうか。

 妖怪は時代とともに進化していく。人類の歴史が続く限り、妖怪的存在は連綿として語り続けられるのであろう。

【著者プロフィール】
山口敏太郎/1966年徳島県生まれ。神奈川大学卒業、放送大学12で修士号を取得。1996年学研ムーミステリー大賞にて優秀作品賞受賞。著書に「人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた」「マンガ・アニメ都市伝説」「ミステリー・ボックス―コレが都市伝説の超決定版!」「都市伝説学者山口敏太郎」など。オカルト研究家としてテレビ、ラジオなどで活躍中

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