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許永中から司馬遼太郎、山根明も魅了された? 「殺しの柳川」から見る日韓の歪み

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2019年08月20日 16:22  日刊SPA!

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写真柳川組初代組長、柳川次郎(写真の一番左)
柳川組初代組長、柳川次郎(写真の一番左)
 反日運動が盛り上がる一方で、韓国パッシングを決め込む日本。今や日韓関係は修復不可能と思えるほどこじれている。きっかけは徴用工訴訟問題を巡って、韓国の裁判所が日本企業の資産差し押さえに動いたこと。その対抗措置として、日本政府が7月に韓国に対する輸出管理を強化したことで反日感情が高まった格好だ。

 そんな最中に、日韓関係を“裏テーマ”にした異書が発刊された。『殺しの柳川〜日韓戦後秘史〜』(小学館)。大阪の在日社会で身を立て、山口組きっての武闘派としてその名を轟かせた柳川組初代組長、柳川次郎の半生を追った一冊だ。

 「殺しの」という、あまりにも物騒な通り名が知れ渡ったきっかけは、1958年2月に起きた大阪・鬼頭組との西成抗争だった。

〈西成を縄張りとし、飛田新地での管理売春をシノギとする鬼頭組といえば、当時は100人を超える組員を抱える大組織である。「泣く子も黙る鬼頭組」と恐れられた。その鬼頭組の縄張りに手を突っ込んだところ、かえって、仲間のひとりを拉致されてしまう。
 それでもひるむことなく、柳川はわずか八人で日本刀を手に鬼頭組の事務所に殴り込みをかけた。〉(本書より)

 このとき柳川が仲間にかけた「どうせ失うのは命だけ。みんなで一緒に死のうや」は、ノンフィクション作家の山平茂樹氏の著書や柳川をモデルにした映画でも使われたあまりにも有名なセリフだ。

 死闘を制した後の同年11月に、柳川は大阪・キタに柳川組と柳川興業の二枚の看板を掲げて柳川組を正式に立ち上げ。任侠映画ならば、その後、柳川が暴力にものを言わせて成り上がっていくさまが描かれるところだろうが、本書では紙幅を割いていない。そこに、日韓関係を裏テーマにした本書の真骨頂がある。

 元『週刊文春』記者で本書の著者である竹中明洋氏が話す。

「週刊誌記者時代に某政治家の贈収賄ネタを摑んで、一時期、集中的に関西で取材をしていたときに仲良くなったのが在日の人たちでした。以来、関西出張のたびに飲むようになると、みんな面白い昔話をしてくれる。そして、しまいには『わしらのこと本にしてや』と。それから在日の歴史について書きたいなと思い始めたときに、大阪の親しい警察官から柳川次郎が韓国の情報機関のエージェントのような役回りを果たしていたという話を聞いて、柳川次郎を中心に日韓関係や在日社会について書こうと考えたんです」

 実際、本書では柳川組解散後にフォーカス。柳川が韓国のエージェントとして暗躍した場面が詳述されている。

 きっかけを与えたのは、1979年に暗殺された朴正煕大統領の側近ナンバー1だった朴鍾圭大統領警護室長。この朴はすぐに拳銃を抜く気性の粗さから「ピストル朴」の異名をとったが、朴正煕大統領に可愛がられ、対日工作の事実上の司令塔に。さらにその後の全斗煥政権時代には韓国オリンピック委員会の委員長に就任して、ソウル五輪の招致を成功に導いた人物でもある。この朴を通じて柳川は韓国中枢に食い込んでいったという。

 無類のプロレス好きとして知られる朴正煕大統領から請われて、柳川が韓国でのプロレス興行を実現させた描写も。柳川は同じ朝鮮半島出身で親しかった力道山率いる日本プロレスの興行を柳川組傘下の柳川芸能社でたびたび行っていた。力道山が不慮の死を遂げた後には、その弟子にあたるアントニオ猪木や大木金太郎こと金一らの面倒を見ていたのだ。

 このように柳川を中心に幾人ものカタギの著名人との人間模様も描かれている。作家の司馬遼太郎とは、済州島のビザ取得に際して柳川が奔走。ここでは割愛するが、司馬、柳川ともに短気からくる邂逅時のエピソードは興味深い。

 近年の有名人では日本ボクシング連盟前会長の山根明も登場する。山根は柳川を「先代」と呼んで慕っていた。

〈「先代と初めて会ったのは、わしが二〇歳の頃です。鶴橋の駅に近い小橋の公園で二人組にからまれて喧嘩になったところに先代が通りがかり、『こらー、ニ対一は卑怯やろが』と声をかけてくれたんですわ(中略)」柳川は山根がボクシングをしていることを聞き、「ボクシングに専念せえよ」「なんか困ったことがあったらいつでも言うてこい。でもヤクザにはなるなよ」と声をかけたという〉(本書より)

 本来ならヤクザとの付き合いは伏せたがるものだが、山根は竹中氏の取材依頼に快く答えたという。

〈「先代とつきあいがあったなんていう話を表に出すと、反社だなんだという人がおるかも知らんけど、あれだけの恩を受けた人のことを知らんふりするのは、男。山根にはできません」
喫茶店中に響き渡る大きな声で山根節は続くのだった。〉(同)

 ただし、最も興味深いのは戦後最大のフィクサーと呼ばれ、イトマン事件で暗躍した怪人・許永中との交友だろう。柳川について、許永中はこう評していたという。

〈「あの人はね、私ら大阪の在日にとって天皇みたいなもんやったんです。エースいうんかな。一緒に北新地で飲んでるいうだけで、えらい誇りに思ったもんですわ」〉(同)

◆在日が抱える葛藤

 そこには、在日が抱える葛藤も垣間見える。

〈「私ら在日は日本において差別されただけでなく、本国からも見捨てられ、挙句の果てに利用された苦難の歴史を歩んできたんです。泥田を這うような暮らしをしていた私らを守護神のように守ってくれたのが、柳川さんが持つ暴力でした。あの時代を乗り切るには柳川さんの暴力が必要だったんです。在日の知識人のペンの力だけではどうにも弱かった」
 民団(在日本大韓民国民団)大阪の幹部にもなった柳川の元側近の李明昌(仮名)はそう語る。〉

 実は、「在日の天皇」と評される一方で、柳川は在日社会から疎まれる存在でもあった。山口組傘下にあった柳川組は1960年の明友会事件で、尖兵として在日の愚連隊組織であった明友会を襲撃。同胞同志の殺し合いを制したことで、「男を下げた」のだ。その後、破竹の勢いで柳川組の名を全国に知らしめたことで、「在日=暴力」のイメージを植え付けた存在として、柳川を疎む声もあがった。

「今でもそう。多くの在日の方たちが経済的にそれなりの地位を築いているので、昔を知る二世ほど柳川次郎に対して否定的。若い三世、四世になると、『生きていくためにヤクザをせざるをえなかった』なんて時代は完全に過去の話ですから、日本における在日差別に抗ったと聞かされたところで、柳川次郎を受け入れられない」(竹中氏)

 同書にはヤクザとして生きざるをえなかった一方で、同胞からも疎まれた柳川の葛藤が描かれている。組を解散した後、柳川が「ヒョンニム=兄貴」と慕った韓国の老学者の話は印象的だ。

〈「非常に謙虚で人間的魅力があり、もし韓国で育っていれば、ひとかどの人物になったはずだ。自分の意見を押し付けるようなことは決してせず、意見が分かれると、『ヒョンニムのいう通りでしょ』というので、『いや、そうとも限らない』と言い返すと、『私は人を殺したような人間ですよ。あなたが正しいに違いない』と言ったりする。ヤクザだったことへの悔悟の念は強かったのだろう」〉

 著者の竹中氏も次のように話す。

「取材で出会った柳川組の元組員に言われました。『竹中さん、俺の命令で人を殺してこいって言ったら殺しに行くヤツがいるんだよ。これはものすごい力なんだ』って。柳川次郎は最盛期には千何百人っていう構成員を抱えて、もの凄い力をもっていたんです。それを捨ててカタギになって日韓のために奔走してみたものの、結局まわりは『元ヤクザ』という色眼鏡で見て、まともに取り合ってくれない。そんな柳川の心情を、ヤクザ引退後の柳川の側近だった青垣(仮名)は『ある種の虚無感を抱えていた』と表現していました。だから、柳川は組の再興を本気で考えていた時期もあったんです。柳川を知る大半の人は『再興なんて考えたはずがない』と否定するんですけど、青垣が柳川から託されたもの凄いダイヤの指輪の裏側に、その思いがはっきりと刻印されていました。何が書いてあったかは、絶対に言えませんが……」

 そのうえで、竹中氏は「今、柳川次郎がいたら」と想像する。

「日韓関係がこじれて、一番苦しんでいるのは在日の人たちです。特に苦しんでいるのは民団。民団中央(東京)の呉公太前団長は、慰安婦問題で日韓関係が悪化した際に、『日本側の事情もくみ取ってくれ。じゃないと我々在日がつらい思いをするんだ』と伝えて、しばらく韓国側から叩かれまくったんです。日韓関係がこじれると、在日の人たちは日本では『韓国の肩を持つのか』と叩かれ、韓国からは『日本の肩を持つのか』と叩かれる。許永中も『大阪は在日の首都。そこに住む同胞たちが今最も苦しい思いをしている』と話していました。もしも、今、柳川次郎が生きていたら日韓関係の修復を願って奔走しただろうと考えざるをえません」

 日韓の繋がりの深さを知るのに同書はうってつけの一冊かもしれない。

取材・文/日刊SPA! 写真/著者提供

このニュースに関するつぶやき

  • “独立国大阪”、“大阪民国�ڹ�”とさんざん言われる我が大阪です�㤭��。それでも言います。“根なし草と叩かれる人々”への悪意を、もう増やさないでください�फ�á��ܤ������á��ܤä������फ�á��ܤ���exclamation ��2
    • イイネ!5
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  • 在日でも日本の歴史文化を尊重してくれて左翼的な思想を出さないのならいいんですよ!日本に溶け込み暮らしているなら。
    • イイネ!18
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