心屋仁之助氏“公開カウンセリング”の異常性――「死んじゃえ!」「借金イエーイ!」と叫んで終了?

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2019年08月22日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

心屋仁之助【公開カウンセリング】『家計が火の車で、好きなことをしても収入があがらない』より

 誰にでも、心が弱ってしまう時はあります。救いを求める先が、信頼できる家族や友人ではないこともあるでしょう。「こうすれば幸せになる」と語りかける心理カウンセラー、スピリチュアリスト、霊能力者。彼らを見ていると、「私を救ってくれそう」「この人たちのようになれるかも」と、次第にそんな気持ちが膨らみ……ちょっと待って! それ、本当に信じて大丈夫? スピリチュアルウォッチャー・黒猫ドラネコが、無責任なことばかり言っている“教祖様”を、鋭い爪でひっかきます。

 芸能人や著名人御用達「Amebaブログ」の読者フォロー数20万人以上、プロフェッショナル部門ランキングで“常時1位”の人物をご存じですか? 子宮委員長はる、スピリチュアリストhappy、自称・卑弥呼の生まれ変わり天宮玲桜といった、怪しいスピリチュアル界隈ともつながりがある、心屋仁之助氏です。おなじみの“信者ビジネス”にハマる人は、高確率で「心屋カウンセリング」に心酔します。私が同氏を知ったのも、子宮委員長はるにハマった身内が、熱心に著書を読んでいたことからでした。それだけ、心屋氏の教えが怪しいスピリチュアル業界に浸透しているということです。

 小林麻耶さん、漫画家の浜田ブリトニーさんといった著名人のファンも多数いる心屋氏。そんな人が、虐待の連鎖に悩む相談者に「キミの娘さん 叩かれるために生まれてきたのよ」と自身のブログにつづった衝撃は忘れません。「流産は前世で自分が望んだ」とネットラジオで発信したのを知った時、私は自分のTwitterやブログで「こんなカウンセラーを信じていいのか」と、疑問を呈しました。その後、私と同じ疑問を持った人も声を上げ、炎上状態となったのですが、心屋氏はおそらく、それらの意見に対して「(自分を叩く人を)蹴散らして、ぶち殺してやる」と、ブログに絵文字付きで投稿。これにはさすがに恐怖を覚えました。

深刻な悩みを“イジって笑う”心屋仁之助氏

 そんな心屋氏について、このコラムの読者さんからご連絡をいただきました。「会員制カウンセリングの様子が怖い」という報告とともに、東京と京都で毎月行われている公開カウンセリング「Beトレ」の様子を収めたYouTubeのURLが貼られていました。調べたところ、心屋氏のホームページでは「心のおけいこの場。心理学の勉強会です」などと説明されており、いろいろなコースが設けられている様子。ちなみに、どれも年会費4〜6万円の費用がかかるようです。

 3つ貼られていたURLのうち、1つ目は「子どもを死なせてしまった」という、50代女性による相談に、心屋氏が答える動画でした。長男が2歳の頃、生後2カ月の次男を亡くし、「そのことを引きずってあまり長男に愛情を注げなかったから、成人しても問題を起こすのだと考えてしまう」といった、かなり切実な内容です。これに対する心屋氏の結論は、「全部関係ない。次男が亡くなったことと(長男を)つなげるのはやめて」といったものでした。

 私がこの動画を見てまず気になったのは、会場の雰囲気。心屋氏はどこかのホールのステージ上を歩き回り、観客席から涙声で話す相談者に、「すべてはキミが悪いんだ」などと厳しい言葉をぶつけます。ホワイトボードに字を書きながら、相談者のネガティブ思考を笑い、「会場ザワザワしてるよ?」などとイジり、参加者たちを盛り上げているのです。相談者の深刻な悩みに対し、会場の雰囲気があまりにも陽気。そのギャップに強い違和感を覚えました。

 2つ目は、どこかの会議室に会場を移し、「お金にルーズな40代の弟が嫌。10年ほど同居しているが、そろそろ見捨てるべきか」といった悩みを持つ女性からの相談が取り上げられていました。心屋氏は、『解決!ナイナイアンサー』(日本テレビ系)に出演していた際も行っていた、お得意の“言わせるカウンセリング”で徐々にヒートアップ。心屋氏が先導する形で、「あんな奴、死んじゃえばいいのに!」「あのゴミのせいで!」「消えてしまえ!」と相談者に暴言を叫ばせ、「いい姉をやめたらいい。ストレートに嫌だと伝えて」と結論付けました。

 椅子に深く座って目を閉じ、相談者に暴言を反復させる心屋氏。満足げな表情に見えるのは、私だけではないはず。「あのゴミ」「消えてしまえ!」といった暴言は、本当に相談者本人の言葉なのか。「彼女はこう思っているはず」と、心屋氏が勝手に考えたセリフではないのか。ためらいながら号泣する相談者を見ると、そんな疑問が湧いてきます。

 最後の動画は、正直まったく意味不明。相談者は「どんどん遊んで」という心屋氏の教えに従い散財。その結果、「借金返済が苦しい」と訴えます。これに対する心屋氏の結論は、「どうもせんでいい」「悪いことだと思っているから、助けてもらえない」。そして、「借金イエーイ! 踏み倒すぞイエーイ!」と明るい調子で言わせて終了です(どういうことなの……?)。

 この無責任さ、「深く考えずやりたいことをどんどんやろう」といった奔放さが、子宮系女子やスピ稼業を目論む人たちにウケる理由かもしれませんが、私の目にはどれも“異常”に映りました。しかも、これらの動画に出てくる相談者は、「『Beトレ』に通ってるのに問題が解決しない」などと話し出すのです。心屋氏は一体、「Beトレ」で何を“おけいこ”しているのか、不思議でなりません。

 「Beトレ」の宣伝ページには、これらの無料動画が多数あり、いずれも観客からの悩み相談をもとに、心屋氏の考え方をオープンな場所で伝えるといった内容でした。時にはギターをかき鳴らしてオリジナルソングを披露し、“伝道者”のごとく立ち振る舞う心屋氏。こうしたカウンセリング方法は、心理学の分野において一般的に用いられるものなのでしょうか。「心理オフィスK」の代表であり、臨床心理士の北川清一郎先生にご協力いただき、「Beトレ」の動画について見解を伺いました。

――心屋氏が行っているような、不特定多数の人の前でカウンセリングを行う手法は一般的なのでしょうか。

北川清一郎氏(以下、北川氏) カウンセリングは基本的に、相談者のプライバシーや秘密が守られた状態で行われます。なぜならば、相談者が“本当のこと”を言えないからです。「秘密が守られる」という確約があるからこそ、本心を話すことができるのではないでしょうか。家族相談やグループ療法など、少人数で行う場合もありますが、それも参加者全員が秘密を守ることが絶対条件。よって、不特定多数の人がいる中でカウンセリングを行うことは、通常あり得ません。ましてや動画の公開なんて、もってのほかです。

 また、臨床心理士や公認心理師には、倫理と法律による“守秘義務”があります。これを守らないと、相談者が著しく傷つけられることになります。人に知られたくないことを知られることは、非常に苦痛を伴いますし、時には訴訟の対象となることも。人によっては「家族にも秘密にしたい」という場合もありますから、情報の開示には慎重になります。

――心屋氏や参加者が、相談者の悩みを笑っているような場面もありました。

北川氏 相談者と心屋氏・参加者の関係性の質にもよりますが、カウンセリング中に雰囲気を和ませるため、視点の切り替えを提示するために、“ジョーク”を用いることはあります。しかし、多用はしません。多くの場合、相談者は真剣な悩み事をお話しになりますから、こちらも真剣に聞くのは当然です。

 また、相談者の悩みを軽く扱うことによって、本人にとっては真剣な内容にもかかわらず、「大事にされていない」「バカにされている」といった感情を抱く可能性があります。そうした感情を持つと、悩みを話すことを躊躇し、問題解決に至らないリスクが伴います。

――正直なところ、この動画を見て「変だな」と思う人が大半だと思うのですが、心屋氏を頼る人が絶えないのは、なぜだとお考えになりますか。

北川氏 動画を見る限り、相談者は心屋さんが何を言っても鵜呑みにし、彼と話をしただけで救われたような気持ちになっているのかもしれません。広い意味では「催眠」と言っていいかと思います。一般的には、バラエティ番組で睡眠術をかけられた人が操り人形のようになる姿を想像するでしょうが、催眠はもっと広い概念で、専門的には「変性意識状態」と言い、意識の在り方が通常から外れてしまうことを言います。

 これは日常的に起こることで、例えば好きなことに熱中していると、多かれ少なかれ周りが見えなくなったり、付き合いたての時に恋人のすべてが好ましいものに見えてしまったりするのも、「変性意識状態」と言えます。要するに、視野が狭くなっている状態。こうしたことが、参加者の中で起こっているのでしょう。

 初期段階や軽い状態ならば、状況を変え、第三者と会話することで冷静になることはできるでしょう。しかし、長期間にわたって影響を受け続け、いわゆる「マインドコントロール」や「洗脳」に近い状態になると、容易に抜け出すことはできません。ここまで行くと、物理的に対象と接触することを禁止し、回復を目指した積極的な心理療法やカウンセリングなどを行う必要が出てくるかもしれませんね。

――「心理カウンセラー」を名乗る心屋氏は、多くの“認定講師”を抱え、さらに多数の支持者がいます。臨床心理士として、この状況をどう思われますか。

北川氏 通常のカウンセリングでは、相談者の“自立”を目標とし、カウンセラーなしで生きていけることを目指します。カウンセラーが相談者をずっと手元に置くことはありませんし、“認定講師”といった形で弟子をつくることもしません。学校と同じように、カウンセラーからの卒業を目指すものなのです。心屋さんに依存しないと生きていけないというのは、非常に危険な状態のように思います。

 「心理カウンセラー」は“職業名”なので、名乗ろうと思えば誰でも名乗ることができます。極端に言えば、まったく心理学やカウンセリングを学んでいない人でも、「心理カウンセラー」を標榜することができてしまうのです。一方で、「臨床心理士」や「公認心理師」は“資格名”であり、さまざまな訓練を経て、一定の資格試験をパスした人だけが名乗れます。つまり、能力が担保されているということです。「心理カウンセラー」を名乗る人は多いですが、実際にどういった資格を持ち、どういった訓練を受けてきたのか、きちんと判断する必要があると思います。

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 このように、心屋氏の言動は専門家も疑問視しています。明るい雰囲気を作って“問題が解決したような気分”になる「カウンセリング・ショー」をご自分の人生に取り入れるべきかどうかは、慎重に考えた方が良いでしょう。

■北川清一郎(きたがわ・せいいちろう)
「心理オフィスK」代表。関西大学、関西大学大学院で臨床心理学やカウンセリングを専攻。大学院を修了後、精神病院、心療内科クリニック、小中学校スクールカウンセラー、教育センター、児童相談所、企業内保健センター、開業カウンセリング機関、就労支援施設などを中心に、フリーランスで臨床活動やカウンセリングを行う。
「心理オフィスK」公式サイト

■黒猫ドラネコ
 1983年5月生まれ。性別、職業は非公表。大分県出身、学生時代から大阪で過ごし結婚を機に上京。穏やかで細かい性格。自分勝手な人が嫌い。趣味はスポーツ観戦、カフェ巡り、漫画・アニメ鑑賞など。甘党でお酒よりジュースを好む。ショートスリーパーにつき夜行性。
Twitter/ブログ「黒猫ドラネコのブログ(仮)

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  • コイツがこんな記事にさらされるのも「君がわるいんだよ」が当てはまるな…。N国党みたい。
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