Apple TV+、11月に約10ドルでサービス開始? 初年度から制作費60億ドルを投入

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2019年08月22日 07:21  リアルサウンド

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 NetflixとAmazon が確固たる地位を築いている有料動画ストリーミングサービス市場に、ついにAppleが参入する。GAFAの一角を成す同社だけに、豊富力な資金を背景にして参入初年度から多額の費用を投じるようだ。


(参考:Appleの新サービスたちに勝算はあるのか? 競合多い『AppleTV+』などを改めて分析


・強気の価格設定
 『Bloomberg』は20日、Appleが11月には有料動画ストリーミングサービス「Apple TV+」を開始すると報じた。報道の情報源は「事情に詳しい関係者」なのであるが、月額料金は9.99ドル(約1,060円)となる。この価格はNetflixとAmazon プライム・ビデオの8.99ドル(約950円)、さらには11月から開始すると言われているDisneyの動画ストリーミングサービス「Disney +」の6.99ドル(約740円)より高い、強気の価格設定となっている。


 Apple TV+における主力コンテンツはオリジナル作品になると見られており、テレビドラマ『フレンズ』に出演して有名となったジェニファー・アニストンが主役を務める朝の情報番組を舞台とした『The Morning Show』、スピルバーグ監督が制作するオムニバス・ドラマ『Amazing Stories』、映画『アクアマン』で主演を務めたジェイソン・モモアが主役となるSFドラマ『See』等が制作中だ。すでに公式YouTubeチャンネルもあり、『The Morning Show』のトレーラー動画を視聴できる。


 サービス開始当初は以上のコンテンツを含む少数のラインナップとなるが、その後の数ヶ月間でコンテンツを充実させる計画のようだ。そして、2020年までに500億ドル(約5兆3,000億円)の売上を目指す。なお、アナリストたちは同サービスの加入者は10年以内に1億人を突破するだろうと見ている。


・1エピソードの制作費は『ゲーム・オブ・スローンズ『に匹敵
 テック系メディア『The Verge』は20日、Apple TV+の制作費にフォーカスした記事を公開した。その記事によると、Appleは同サービスの年間コンテンツ制作費として初年度から60億ドル(約6,300億円)を投じている。こうした制作費はNetflixが投じている150億ドル(約1兆6,000億円)と比べると少額のように見える。しかしながら、Netflixが同サービス初期の有名オリジナル作品『ハウス・オブ・カード 野望の階段』を配信した頃には年間制作費が23億ドルだったことと比較すると、Appleが同サービスに大きな期待を寄せていることがわかる。


 また、前述した『The Morning Show』や『See』の1エピソードを制作するのに1,500万ドル(約16億円)が費やされているとも報じられており、この制作費は近年世界的に大ヒットしたテレビドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の最終シーズン(シーズン8)に匹敵する。


 AppleがApple TV+開始初年度から多額の投資ができる背景には、同社が動画ストリーミングサービス専業企業ではなく、すでにiPhone販売をはじめとした既存業務から収益を得ていることが指摘できる。一説には、同社は2,106億ドル(約22兆4,000億円)の現金を保有しているとも言われている。とは言うものも、豊富な資本が動画ストリーミングサービスをめぐる覇権争いの勝利を約束してくれるわけではない。例えば、Appleと同様に巨大資本を抱えるGoogle傘下のYouTubeが展開する有料動画サービス「YouTube Premium」は大成功しているとは言い難い。NetflixやAmazonに勝利するには、やはり魅力的なオリジナル作品を配信することが不可欠であろう。


・増える動画視聴アプリの利用
 AppleとDisneyが参入してますます活況を呈する動画ストリーミングサービスは、一般消費者の生活にどのような影響を与えているのだろうか。ビジネスメディア『netimperative』が昨年12月に公開した記事を参照すると、こうした疑問に見通しを立てることができる。現在の一般消費者は、毎日7.5時間メディアの消費に時間を費やしている。近年のメディア消費行動の傾向として、動画視聴アプリの視聴時間が増えていることが指摘できる。その増加量は、2019年には2016年の110%増(つまり2倍強)となっている。メディア消費時間全体が大きく増えたわけではないので、動画視聴アプリがテレビやインターネットといったほかのメディアの消費時間を奪っている、と見ることができる。そして、こうした動画視聴アプリにはNetflixやAmazon プライム・ビデオといった動画ストリーミングアプリが含まれているのだ。


 ビジネスメディア『Venture Beat』が今年3月末に公開した記事では、2018年における消費時間にもとづいてランキングした動画視聴アプリのトップ5を主要国ごとにまとめている。中国を除くすべての国でもっとも視聴されているのは、やはりYouTubeだ。2位以下は各国で異なるものも、NetflixとAmazon プライム・ビデオの名前が目立つ。各国と比較すると、日本が特異なのがわかる。日本ではNetflixがトップ5に入らず、代わりに国産アプリであるniconicoとAbemaTVがランクインする。


 以上よりNetflix等を含む動画視聴アプリの利用時間は世界的に見て増加傾向にあるが、日本は独自の動画視聴文化を形成していると言える。それゆえiPhoneの普及率が高い日本であっても、グローバル展開されると思われるApple TV+が流行するかどうかは予断を許さないだろう。


(吉本幸記)


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