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新海誠「『天気の子』は前作よりも批判される映画にしたかった」

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2019年08月25日 11:30  AERA dot.

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写真新海誠(しんかい・まこと)/1973年、長野県生まれ。2016年、映画「君の名は。」が大ヒットを記録。映画「天気の子」が全国東宝系で公開中(撮影/写真部・片山菜緒子)
新海誠(しんかい・まこと)/1973年、長野県生まれ。2016年、映画「君の名は。」が大ヒットを記録。映画「天気の子」が全国東宝系で公開中(撮影/写真部・片山菜緒子)
 前作「君の名は。」で一部から批判も浴びた新海誠監督。それでも自分を貫きながら、時代や空気を敏感に拾い、新たな作品「天気の子」を生み出した。注目の集まる新海監督が、自身の心境の変化や作品への想いを語った。

【写真】2千人超から選ばれた!「天気の子」ヒロイン役、森七菜さん

*  *  *
「君の名は。」の次の作品だからといって、プレッシャーは特にありませんでした。今回も楽しんでもらえる作品ができたと思います。

 ただ正直、不安もあります。というのは「君の名は。」では批判もたくさんいただいたんですが、「災害をなかったことにする映画だ」という意見もありました。僕はそんなつもりはなく、ただ「彼女を死なせたくない」という願いや祈りの結晶のような映画を作りたかった。でもそのことで傷つく人もいるのか、と気づかされました。

 そうした反応は怖くもありますが、実は一番聞きたかった声かもしれないとも思うんです。誰かを怒らせてしまうということは、そこになにか人の心を動かすものがあったということ。僕に作家性みたいなものがあるとしたら、そこなのかなと思うんです。だから「次は批判されない映画を」ではなく「もっと批判される映画にしたい」と思って作りましたし、それが創作の原動力になってもいます。

「君の名は。」以前といまとで、世の中の成り立ちがまったく違ってしまったと感じています。やはりSNSが大きいですよね。社会の透明度が異常に高くなり、炎上や批判で常に誰かが犠牲になって消費される。こんなに息苦しい世界でいまの若者は暮らしているのか、と思います。そんな窮屈さを一足飛びに越えてしまうような、少年少女を描きたかったんです。

 うちの娘はまだ小学生なのでSNSにそれほど関わっていないのですが、思春期になったらわかりませんよね。あ、娘はいまはYouTubeで米津玄師ばっかり観ています(笑)。

 僕自身が年齢を重ねたことでの変化もありました。アニメーションを作り始めた20代後半から30代のころは、自分に近い人たちに向けて作品を作っていました。でも、それが変わってきた。より真剣にエンターテインメントを必要としている人たち、若い世代に届けたいという思いが強くなったんです。

 10代のころは感情の一つ一つが鮮やかに尖っていて、喜びも激しく、悲しみも血が流れるくらいにしんどいですよね。僕自身、そういうときにエンターテインメントに救われたことが何度もありました。宮崎駿さんの作品や「新世紀エヴァンゲリオン」といった作品が好きでした。

「誰も自分を好きになってくれない」「自分は誰にも必要とされていないんじゃないか」と感じたとき、村上春樹さんの小説から「自分だけが孤独なわけじゃない」と教えてもらった気がします。僕の作品も観客にとって、そんな役割を担えればうれしいとは思います。

 結末には賛否両論あるかもしれません。王道のエンターテインメントとは少し違う着地をしていますから。特に終盤で帆高が陽菜に向かって叫ぶ「あの言葉」は政治家には絶対に言えないし、社会的に正しくないかもしれない。でもエンターテインメントの世界ならそれを叫ばせることができる。それがやりたかったんです。

 この映画への反応を見ることで僕自身、「いま自分のいる社会がどういう形をしているのか」が見えてくる気がします。「自分がこの先なにを作るべきか」も、もしかしたら見えてくるかもしれない、と思うんです。

※AERA 2019年8月26日号

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  • 小説版のあとがき「映画は学校の教科書ではない」に集約される。老若男女が足を運べる品行方正な楽しい夏休み映画をを排除し、忖度抜きで書いたという。
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