上野樹里と時任三郎、互いを思い見せなかった涙 『監察医 朝顔』が描く震災後を生きるということ

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2019年08月27日 06:21  リアルサウンド

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(c)フジテレビ

 上野樹里が主演を務める月9ドラマ『監察医 朝顔』(フジテレビ系)が、8月26日の放送で第7話を迎えた。


参考:Snow Man 渡辺翔太、『監察医 朝顔』第8話出演へ 「いつもと違う僕が見られると思います」


 第7話を観終えて感じたのは、2つの物語が対極に描かれていること。ひとつは、朝顔(上野樹里)が鑑定証人として出廷する、ある事件の控訴審。そしてもうひとつは東北で被災した妻・里子(石田ひかり)かもしれない一筋の手がかりを元に、生きた証を探し続ける平(時任三郎)の姿だ。


 法医ドラマにおける出廷シーンは“法医ドラマあるある”ではあるが、『朝顔』では今回が初。裁判の被告人・白川亜里沙(有森也実)は、マスコミが注目する「10億の美魔女」と呼ばれる人物だ。これは“弁護士ドラマあるある”になるが、裁判シーンでは難解な言葉が多くなり、話の流れも一気に早くなる。相手弁護士からの圧力、白川の仮病による悪あがきも加わり、朝顔はマスコミからの餌食に。それでも、朝顔は冷静に、いつもと変わらぬペースで淡々と証言をしていく。


 裁判の決め手となったのは、丸屋(杉本哲太)がドタンバのタイミングで法廷に持ってきた薬物検査の証拠。事前に丸屋は朝顔に「今回の裁判は警察の威信がかかっているから必ず有罪にしてほしい」「石田検事(山本未來)の顔に泥を塗るようなことだけはするな」と懇願していたのだ。丸屋の行動が判決の大きな決め手となったのは、確かではあるが、裁判終了後の丸屋の態度を見ていると、石田検事に気があるのは明らか。第6話にて初登場した頑固な丸屋の、意外なキャラが露呈し始めている。


 裁判と並行して描かれていくのが、一路東北へと向かった平の動向。長台詞の連続となる法廷シーンに対して、東北でのシーンは言葉の数が極めて少ない。「2年B組万木朝顔」と書かれた手袋とその中に入っていた白い骨。県警からの鑑定結果を待つ間、平は手袋が見つかった場所「内川橋」に向かい、生きた証を探し始める。そこにやって来るのが、里子の父・浩之(柄本明)。なにも言わず、草刈機のエンジンをかけ、彼もまた娘の生きた証を探し始めるのだ。


 平に告げられた鑑定結果は「親子関係否定」。つまり、骨は里子のものではなかったのだ。印象的なのは、平が浩之に結果を伝える場面。内川橋にいる浩之のもとに着く平。そこに会話はなく、平の表情で浩之はその結果を汲み取る。川の対岸は、復興の工事が着々と進んでいた。いずれ、ここにも工事の時は訪れる。浩之の口から溢れた言葉は、「諦めてた。とっくの昔に。でもやっぱり会いたい。里子に」というもの。「いいかげん受け入れろ」と平を諭していた浩之の心の底にも、平と同じようにいまだ諦められない思いが消えずに残っていたのだ。


 何度行き来したか分からない東京までの帰路で、平は堪えきれずに一人すすり泣く。母の手袋を手にし、朝顔は母が最後まで人に寄り添える優しい人だったことを知る。布団に入り、桑原(風間俊介)は朝顔に「よく我慢したね。お父さんの前だったからでしょ。今はもう我慢しなくていいから」と声をかけ、朝顔は大粒の涙を流す。朝顔と平、それぞれが互いを思って見せなかった涙。第7話は、2つの物語、朝顔と平を対照的に描くことでそれぞれの心情が見えてくる回であった。(渡辺彰浩)


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