モーリー・ロバートソン、『ブラインドスポッティング』を絶賛 「ものすごい勢いのある映画」

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2019年08月31日 11:41  リアルサウンド

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『ブラインドスポッティング』(c)2018 OAKLAND MOVING PICTURES LLC ALL RIGHTS RESERVED

 映画『ブラインドスポッティング』の公開初日トークショーが8月30日に新宿武蔵野館で行われ、公タレント・ミュージシャン・国際ジャーナリストとして幅広く活躍するモーリー・ロバートソンが登壇した。


参考:テーマは重いが、後味は爽快 『ブラインドスポッティング』の新しさ


 本作は、ヒスパニック系白人のスポークン・ワード・アーティスト、教育者、舞台脚本家であるラファエル・カザルと、ブロードウェイミュージカル『ハミルトン』で脚光を浴びトニー賞を受賞した黒人ラッパー兼俳優ダヴィード・ディグスが脚本・主演を務めた社会派ドラマ。オークランドを舞台に、人種の違う者や貧富の差がある者同士が混在することによって起こる問題を描く。


 ロバートソンは、本作について「素晴らしい映画でした。試写で観させていただいてから今もずっと余韻が続いています。ものすごい勢いのある映画なので、みなさんも字幕が出たら急いで読むようにしてくださいね! アフリカ系アメリカ人のスラングがたくさん使われているのですが、私の耳でも字幕なしじゃ何を言っているのかわからない! 一生懸命日本語字幕を追いかけながら観ていました。まるでロシア映画を観ているような気分になりました」と率直な感想を語る。


 映画の舞台となっているオークランドについては、「映画の中でオークランドについてのヒントが視覚情報としてたくさん散りばめられているので、自然と町の姿が見えてきます。あえて文化・歴史的な背景を全て知る必要はないですが、オークランドの中にある“格差”については意識して見てもらいたいですね。カリフォルニアの豊かで白人がたくさんいるような文化圏から、バスでちょっと走るとオークランドに入るのですが、一気に空気感が変わります。バスに乗ってくる人の雰囲気も全く違う。観光客がオークランドに行くとまず『やばい!』と一瞬で思うような物々しさのある場所です。また麻薬犯罪やギャングが蔓延してしまった暗い歴史のある町でもあります」と解説。また、今のオークランドには「憧れてしまう部分がたくさんあった」と言い、「この映画の登場人物だけでなく実際オークランドに住んでいるような人たちにも、ルールや法律の外で生きている姿には活き活きとした生命力を感じます。生まれ変わったらヒップホップになりたい!と思っちゃいました。外から見ると彼らの生活のスタイルがカッコよく見えてしまうんですよね。本人たちは貧しさへの怒りをラップにしているのに!」と述べた。


 小学校5年生の時に「完全に広島っ子になったと認識し、日本語や漢字を使えるようになりたい」という理由から、外国人のための学校を辞めて広島の公立小学校に転校したロバートソン。「学校では『青い目の生徒』と呼ばれいていましたね。広島という場所柄もあり、差別されることもありましたが、それと同時に当時は“アメリカ文化への憧れ”みたいなものも強く存在していて、差別と憧れが混ざり合ったカオスな環境でした。僕も学校では差別される一方で人気者でもあって、生徒会長にもなったんですよ! 自分としては日本人になりきった白人として過ごしていました」と自身のバックグラウンドについても語った。


 映画のタイトルである<ブラインドスポッティング=“盲点”>というテーマについて問われると、ロバートソンは「全く同じことでも見る人の立場によって違うものになる。例えば、いま日韓問題が大変なことになっていますよね。でも新宿には観光に来ている韓国人がたくさんいる。タピオカジュースを飲んでいる女子高生グループの中にも激しい貧富の差があるかもしれない。いろいろな人たちがせめぎあって“盲点”が生まれてしまうというのはどの国・場所でも変わらないことだなと思います。東京でも地域によっては外国からの移民だらけのエリアがどんどん生まれてきているので、オークランドは未来の東京の姿なのかもしれません」と現在の世界情勢にも言及。


 そんな本作は音楽映画としても楽しめる作品。「ただの音楽が良い映画というわけではなく、映画全体のフロウ=流れが素晴らしい作品です。セリフの流れ、物語の流れ、音楽の流れ、様々な要素がいいフロウを作っています。そこがヒップホップという音楽にマッチしている。僕は80年代にパンクロックが大好きで、パンクの世界にのめり込んでいた裏側でヒップホップが生まれていたんですよね。どうしてあの時聞いていなかったのか! この映画を観て改めて悔しくなりました! パンクに夢中でヒップホップをずっと無視してしまっていたので。同じ時期にすぐにヒップホップに目をつけていたビースティ・ボーイズが成功している姿を見て『やられたー!』と思いましたよ!」と自身の過去のエピソードも披露した。(リアルサウンド編集部)


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