真夏の「ストーブ」を考える

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2019年09月02日 19:10  ベースボールキング

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ベースボールキング

ネクストバッターズサークルで打席に備える阪神・鳥谷=甲子園
◆ 白球つれづれ2019〜第35回・スター選手の去就

 人事は秘中の秘が世の常。安倍政権の内閣改造だって、一般の会社の人事異動だって、事前に漏れればご破算になる確率は高い。中途半端な情報漏えいは、混乱の元となるだけだからだ。

 ところが、野球界に「真夏のストーブリーグ」が巻き起こっている。阪神の鳥谷敬と中日の松坂大輔の来季去就に関して、一部スポーツ紙は一面で大々的に報道。共に立派な足跡を残す大選手に違いないが、両リーグともにペナントレースが佳境を迎えている中での騒動には、首を傾げざるを得ない。

 先月31日に今季限りの退団を明らかにしたのは鳥谷だ。その2日前に球団社長の揚塩健治、同副社長兼球団本部長の谷本修らと会談。席上で来季の戦力構想外を伝えられると同時に、「現役引退か?」「他球団でのプレーか?」の二者択一の方向が決まったようだ。


◆ 先行する人事の話題

 松坂が球団代表の加藤宏幸と話し合いの場を持ったのは今月1日のこと。球団側が松坂の現役続行の希望を確認したとのことだが、来季契約については白紙だという。

 共に釈然としないのは、なぜこの時期に人事の話題が先行してしまうのか? という疑問である。球界はペナントレースの裏側で来季に向けた準備に突入するのは理解している。秋に向けてドラフト戦略もある。秋季キャンプのメンバー選考もある。鳥谷や松坂のような大物からファーム暮らしの長い選手までそろそろ首筋に寒さを感じるのもこの時期だ。

 しかし、だからと言ってナーバスな問題がすべて明るみに出てしまえば、本人はもとよりチームにも大きな動揺は広がりかねない。スター選手の去就はなおさらだ。

 「球団の方から何も出てなければ(去就について)自分も言おうとは思わなかったけど、球団の方からいろいろ話が出ているみたいなので」。これが31日に報道陣の前で去就に触れた鳥谷の言葉である。一方の当事者である谷本球団本部長は、会談が明らかになった時点では「今の段階で私の方からしゃべるべきではない」と語っている。この認識の違いはどこから来たのか?


◆ コミュニケーション不足!?

 ここからは推測になるが、阪神一色の関西スポーツマスコミの熱量は半端じゃない。鳥谷クラスの選手の去就になると、抜いた、抜かれた、の取材合戦が過熱する。その中で鳥谷側と球団側に取材したものを双方にぶつけると、「相手がそこまでしゃべっているなら」となる。本来なら極秘で進めるべき事案が公になると歯止めがかからなくなり、今回のような大騒動と発展していったのではないだろうか。

 松坂の問題でも現役続行の意思確認なら、もっとスマートなやり方もある。代表が来季以降の契約について「白紙」を強調するあたりは、戦力外通告への布石か世間の反応を見るアドバルーンのような気がしてならない。いずれにしても、この時期のこうしたやり方に疑問を呈する関係者は多い。

 「巨人で言うなら阿部慎之助に今、引退勧告しているようなもの。鳥谷クラスの功労者にはもう少し球団も配慮が欲しい。他の選手だって戦っている最中に失礼でしょう」と野球評論家の中畑清はテレビ東京系のスポーツ番組で語っている。

 阪神、中日共にBクラスに沈んでいるものの、まだクライマックスシリーズ進出の夢が潰えたわけではない。まずはグラウンドファーストだ。

 今回の騒ぎを見て、思わず故星野仙一を思い出した。中日、阪神で監督を務め、楽天では監督と球団副社長を歴任した男は、強面の反面、面倒見のいい親分として知られた。彼なら鳥谷と球団の話し合いを極秘に進め、外部に情報を漏らさなかっただろう。松坂との意思確認など話し合いの場など設けなくてもとっくに済ませていたはずだ。

 各チームとも残り試合はあとわずか。熱戦に水を差す騒ぎは、これ以上許されない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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