『これは経費で落ちません!』森若さんの“数字”から物語を紡ぐ才能 太陽とのお似合いカップル姿も

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2019年09月07日 06:11  リアルサウンド

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『これは経費で落ちません!』写真提供=NHK

 多部未華子が主演を務めるオフィスドラマ『これは経費で落ちません!』(NHK総合/毎週金曜22時)。青木祐子氏の同名小説シリーズが原作で、領収書や請求書を通じて見えてくる思わぬ人間模様がコミカルに描かれている。


 第7話は「石けんの秘密とキスの巻」。会社の功労者を表彰するマイスター授賞式。20年連続受賞者にして毎年表彰式参加を辞退し続けていた石けん作りのレジェンド・仙台工場の留田(でんでん)が、今年は珍しく表彰式に参加するらしいと本社でも話題になっていた。釜炊き製法の石けん作りは、温度や湿度の微妙な違いに左右される職人技が光る特殊製法であり、誰にも真似できないらしい。


 留田は藤見アイ(森田望智)というアルバイトから正社員になりたての若い女性を伴って経理部に参上。高額な領収書を差し出し、2人で食べに行ったパンケーキ屋での食事代だと言う。


 そんな折、留田が責任者として作っている新発売の石けんについて、質が落ちているという口コミが立て続けに入るようになる。


 気になった麻吹美華(江口のりこ)が調べ始めると、藤見アイがアルバイトとしてやってきた半年前から品質が落ちた石けんが作られ出し、留田の半日休暇や休暇が増えたという。そして彼女が正社員になった3カ月前から急に商品の廃棄量が増えていることもわかる。


 工場長は藤見アイのせいで留田は仕事に身が入らなくなったと考え、藤見を別の工場に異動させようとする。


 今回、森若さん(多部未華子)が汲み取った“うさぎ”の事情は切なさと希望が共存するものだった。真実はこうだ。老化のため石けん作りにおける微調整ができなくなってしまった留田さん。絶望の淵に立たされていた彼の前に一筋の希望が差し込む。それがバイトとしてやってきた藤見アイの抜群の嗅覚。彼が自分の後継者を見つけた瞬間であった。


 表彰式での留田のスピーチには、本当の意味での「プライド」が滲む素晴らしい内容だった。「怖かったのは石けんが作れなくなったことじゃない。石けんが作れなくなったと周りに気づかれ、不要な人間だと思われることだった。それが自分のプライドだと思っていた」とした上で、「ただ本当のプライドはそんなことじゃなくて、これからも石けんの品質が守られていくことだ」と語る彼の顔は晴れやかだった。


 森若さんは経理部らしく数字をきっちり合わせるのはもちろんのことだが、彼女の魅力はそんな風には割り切れないものの存在をしっかりとわかっていることだ。その上で、職務上の責任を果たしながら、割り切れないものとの向き合い方もきっちり数字(経費処理)に還元する。還元してくれた先に相手は全面的な肯定感を得られ、安心する。また人を励ます時に森若さんが持ち出す数字の使い方も秀逸である。これまでの売上や販売個数を「あなたが届けた安心の数」だと言い、会食に集まった取引先の人数を「あなたに寄せられた信頼の数」だと言い換える。森若さんは数字を基に物語を紡げる人でもある。


 そして、山田太陽(重岡大毅)と森若さんの心温まるエピソードが随所に散りばめられていた放送回でもあった。


 勇さん(平山浩行)と広報部の皆瀬さん(片瀬那奈)のキス現場を目撃してしまい動揺のあまりその場から立ち去ってしまう森若さん。「すごい人のそうじゃないところを見た時にどうする?」という森若さんの問いかけに対する太陽の回答があまりに眩しかった。


「嬉しいかな。すごいってことは尊敬したってことでしょ。そう思った気持ちは何があっても消えないじゃないですか」


 このお似合いカップルの前に突如現れた、筧美和子扮する太陽の大学時代の後輩・樹菜。太陽と彼女が抱き合っているところを目撃してしまう森若さん、この後の展開が気になるところだ。また次回予告編で登場した超合理主義者の専務。これはまた大波乱の予感しかない。(楳田 佳香)


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