K-POPとバンドが入り組んだチャートに テミンソロ、アユニ・D=PEDROの新作を分析

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2019年09月07日 13:51  リアルサウンド

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PEDRO『THUMB SUCKER』(通常盤)

参考:2019年9月9日付週間シングルランキング(2019年8月26日〜9月1日/https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2019-09-09/)


(関連:テミン(SHINee)の歌声そのものが踊っているーー『FAMOUS』に感じた進化と底知れぬ魅力


 先週、アルバムチャートにちょっとした激震が走りました。嵐の『5×20 All the BEST!! 1999-2019』が再び1位に返り咲いたのですが、その数字がなんと32.7万枚! 初週で130万枚突破も衝撃的でしたが、発売から数カ月経ち、今また30万枚超えってこのご時世に驚くべき記録です。余裕のダブルミリオン突破した本作は今週もまだまだ売れ続けています。


 さて、今週の首位は5.0万枚のセールスを記録したテミンの『FAMOUS』。SHINeeのメンバーによるソロ3作目で、1位は本人にとっても初の記録です。もともとの彼はおっとりした愛されキャラのようですが、リード曲「Famous」はとんでもない低音のうねりから始まるダンスチューンで、ぐっとセクシーな大人の表情を見せてくれます。EDM/R&Bを基調としたサウンドは当然シンセがメインで、2曲目のソウルバラード「Slave」に軽くレイドバックしたエレキギターが入っている程度。ぐいぐい迫る低音とパキッと際立ったリズム、そして全体の音数が抑えられているところは、まさに世界のトレンドに即したもの。ちなみにテミンはSHINeeだけでなく、男性7人組グループ・Super Mのメンバーとして来月には全米デビューすることが決まっています。


 このあとに続くのが3位のヨルシカ、5位のTHE ORAL CIGARETTES、9位のPEDRO、10位のcoldrainなど。ここから浮かび上がってくるのが、日本のリスナーはバンドサウンドが大好き、という事実です。どれも楽曲の中心にはドンとエレキギターがある。これはK-POPやアメリカのチャートでは今ほとんど聴こえてこない音ですね。


 PCで組み立てるEDM系サウンドに対して、ドラムス/ベース/ギターが集まるバンド編成は、時間がかる、息を合わせる必要があるなど面倒なぶん、“誰かと何かを作り上げている”というポジティブな実感が得られやすい。音楽の質とは関係ないところで、密なコミュニケーションの物語が生まれやすいのです。それを体現しているのが今週9位のPEDRO。BiSHのアユニ・Dがベースボーカルを務めるバンドプロジェクトです。


 このPEDROは、最初は無茶振りで始まったプロジェクトでしたが、ライブメンバーに抜擢された田渕ひさ子(ナンバーガール/toddle)が流れを変えました。それまで音楽にあまり興味がなかったというアユニ・Dは、ナンバーガールの音に衝撃を受け、オルタナ系ロックを聴き漁り、本気でベースを練習する日々を送ってきたのだとか。


 初のフルアルバム『THUMB SUCKER』では、エッジの利いたエレキギターがうなりをあげ、疾走するドラムが鳴り響き、“爆音の中で叫ぶって楽しい!”と目を輝かせているようなアユニ・Dの歌唱が聴こえてきます。ものすごく健全で風通しのいいスリーピースの姿を見ていると、やっぱり私も思ってしまいます。バンドサウンドが好きだなぁ、と。(石井恵梨子)


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