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キャンペーンは「とことんやる」、手数料は「悪いようにはしない」 PayPay馬場副社長に聞く決済戦略

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2019年09月10日 06:12  ITmedia Mobile

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写真「『こいつらアホやな』と思われるかもしれませんが、とことんやります」とPayPayの馬場一氏は言う
「『こいつらアホやな』と思われるかもしれませんが、とことんやります」とPayPayの馬場一氏は言う

 8月1〜2日の2日間、筆者は和歌山市から白浜町までの和歌山県西側エリアを取材でまわっていた。同日にスタートした「JPQR」こと統一QRコード決済のスタート状況を調べるためだ。他媒体で恐縮だが、現地の状況は「話題の統一QR「JPQR」の実際をローンチ初日の和歌山で見てきた」という記事で詳しく述べているので、興味ある方は参照してほしい。



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 JPQRがメインではあるものの、取材内容そのものは「キャッシュレス対応で遅れているといわれる和歌山県の地方都市の決済事情を調べる」を主眼としている。そこで見えてきたのは、想像以上にPayPayが広がりを見せているということだ。キャッシュレス対応の店舗でPayPayが使えない場所の方が少ないくらいで、地方都市での加盟店開拓にいかに同社の営業が力を入れているかを垣間見ることができた。



 スマートフォンのアプリ上でQRコードやバーコードを使って決済を行う「コード決済」のサービスの競争が激化して1年近くがたつが、主要プレイヤーがほぼ出そろいつつあることで、その流れも終盤戦に差し掛かりつつある。この中でも圧倒的な資金量と営業力で、後発ながら存在感を見せつけるのがPayPayだ。同社で加盟店開拓を主に担当する、取締役副社長執行役員COO兼営業統括本部長の馬場一氏に、現状の手応えや今後の目標をうかがった。



●全国370万の小売店全てでPayPayを使えるように



―― 7月の「SoftBank World 2019」で、馬場氏はPayPayの登録ユーザーが900万人に到達し、加盟店数も70万店超を報告しているが、今後の展開をどう考えているのか?(※その後、8月7日にユーザー数が1000万、加盟店は100万に到達)



馬場氏 「まだまだ攻める先は山ほどありますし、追撃の手も緩めません。加盟店開拓は積極的にやっていきます。なんかね、全国に370万店舗あるというんです。例えばTポイントに話を聞くと、昔同社が加盟店開拓をするときにベースになったのが370万店舗だといいます。あと、いろいろな小売のデータを見ていると350万店舗から370万店舗というのが、物を売ったりサービスを売ったりしている会社の数で、そこを全部PayPayで取っていくのが僕たちの仕事です。



 それが終わるまで……とはいっても、途中で閉店するところもありますし、また新しく出てくるところもあるわけです。全部が全部取り切れないなか、どこに行ってもPayPayが使えるようにするのが自分の使命だと思っています。そうでないと、現金を持って歩かないといけなくこともあるわけじゃないですか。最終的に1つでも現金の店があると困るのです。だから全てPayPayが使えるようにしないといけません」



―― 70万店舗の基準は? 例えば競合他社は「100万カ所」のように宣伝しつつ、実際には1店舗で決済端末を複数カウントしていたりと、基準が明確ではなかったりするが、PayPayではどうなのか?



馬場氏 「去年(2018年)の6月に加盟店開拓を始めて、ちょうど1年で70万店舗。最初の半年間、12月の100億円キャンペーンまではスローなスタートでした。基準の話ということで、そのあたりを僕たちはきちんとやっていこうかと思っています。現在の70万という数字は申し込み加盟店数ですが、実際には審査中だったり、あるいはシールをきちんと掲示していないケースもあったりで、どこを公式の数字にすべきか検討していました。



 申し込み数というのは使うお客さんにとっては関係なさそうな数字なので、利用可能な場所の数をきちんと発表していく形にしていきたいと思います。つまり今の70万という数字はあくまで最大値なのですが、まず審査が通らないケースが数としては多く、次に解約、そして僕らが知らないうちに閉店していた場合など、整理をかけている段階です。次に数字を出すときは実際に利用可能な場所の数を出したいと思います」



―― 申し込みから実際にキットが届く(あるいは利用が承認される)までに時間がかかる「待ち」の状態があるという話を聞いているが、実際にどうなのか?



馬場氏 「去年の11月や12月は申し込みが多くてキットが届けられないというのがあり、実際に1週間では届かない状況が発生していました。今は全くないと思います。最短では審査がちゃんと入ると3日で発送が行われるのですが、営業では余裕をみて「1週間くらいで」と伝えるようにしています。



 リクルートのAirペイなど、外部経由でやってくる分はどうしても遅くなる傾向がありますが、僕らが営業しているQRコードを貼るタイプは停滞はないと考えています。またAirペイについては、申し込むときにきちんとお客さんの意思でオプトインして『使いたい』という意思を示してもらう必要があります」



―― 今後、10月1日の消費税増税施行に伴いキャッシュレス決済のポイント還元事業者になるための登録で、PayPayにも駆け込み申請が殺到する可能性があるが、どう考えているか?



馬場氏 「(申請から発送までの)滞留が発生する可能性がありますが、ざっくりいうと今の2倍の申請がきても大丈夫な体制を敷くよう準備しています。これから契約する人に対しては、『早ければ早いほどいい』ということでお伝えします。僕たちの審査もあるし、経済産業省側のチェックもある。それらを全てやると2〜3週間かかる可能性があるわけです。そのため、営業からはあらかじめ『こういう種類の書類をそろえておいてくださいね』と伝えるようにしています。例えば古物商の証明書など、たいていは店頭にあるものなのですが、事前に準備しておくとスムーズにいきます」



●ワクワクペイペイの狙いと次



 PayPayが衝撃的だったのは、いろいろな騒動も含めて話題を日本全国に振りまいた最初の「100億円あげちゃうキャンペーン」と、第2弾にあたる100億円キャンペーンで、テレビCMでの宣伝を含めて「割と派手にぶちあげている」という印象の強いプロモーションの数々だ。後に競合他社が還元キャンペーンを追随する形で展開せざるを得ず、「誰が先に倒れるのか」という状況を生み出した原因にもなっている。



 ただ、PayPayも当初の派手な還元額を掲示したプロモーションよりも、実際に「特定業界での日常使い」をどのように喚起していくのかという方向にシフトしつつあり、それが顕在化したのが「ワクワクペイペイ」だ。例えば、8月いっぱいまでは「対象店舗でランチタイムの12〜14時に買い物をすると必ず10%還元」という形で、ランチタイムにコンビニやスーパー、レストランに顧客を誘導することを狙いとした施策が進められている。



 ワクワクペイペイの詳細については石野純也氏のSoftBank Worldのレポートが詳しいが、毎月業態や還元対象となるタイミングを変えることでプロモーション効果がどの程度あるかを証明するバロメーターにもなっている。その数字を元に「今回のキャンペーンではランチタイムだけ決済回数が大幅に上昇する効果が認められ、初めての客の来店誘導効果も大きく期待できたので、次はこれこれこういうキャンペーンをやりますから、ぜひPayPayを導入して一緒に盛り上げませんか?」という営業を仕掛けるわけだ。



 実際、9月にスーパーマーケットでのワクワクペイペイ実施の告知をして以降、「ライフ」「西友」「サニー」「とりせん」「イトーヨーカドー/ヨークマート」「ゆめタウン」「ベイシア」「サミット」といったスーパーがワクワクペイペイ参加とPayPay導入を表明するなど、狙い通りの効果が得られていると考えていいだろう。



 では、今後ワクワクペイペイを使って、どのような業態で加盟店開拓を進めていくつもりなのだろうか。馬場氏は「決済回数がいっぱい稼げる業種を攻めたい」という。



馬場氏 「コンビニを攻めて、ドラッグストアを攻めました。『競合他社に遅れないようにPayPay導入してください』ということで、めちゃくちゃ効果がありました。現在、全国の薬局の6割以上でPayPayが使えます。広域の全国チェーンではほぼ100%です。ドラッグストアでキャンペーンを展開したときは、今までコンビニで買っていたビールをドラッグストアで買うようになるなど、行動の変化が起きました。



 また、ランチタイムをキャンペーンの対象としたときは、単純に決済回数のカーブが夕方から昼にシフトするだけだと考えていたものが、夕方に入っても落ちず、ちょうどキャンペーンの分だけ上乗せされる効果が確認できました。そうしたデータを元に営業をかけるわけです」



馬場氏 「9月のキャンペーンは食品スーパーが対象になりますが、こうしたスーパーは全国に500社あるといわれています。イオンやイトーヨーカドー、鉄道系のスーパーに加え、ローカルのスーパーなどがあります。スーパーの加盟店開拓はこうしたローカルなチェーンを開拓する必要があり、PayPayでは全国20カ所の営業拠点を使ってアプローチしています。



 もともと粗利の低い商売で(クレジットカードのような手数料を取られる仕組みを導入するのに抵抗があり)、当初は知名度の問題もあり、なかなか大変でした。加盟店営業に行っても出てくる担当者は経理や総務の人で、本来共同キャンペーンを行いたい販促やマーケティング担当の方に接触できないこともあるのですが、ワクワクペイペイを通じてこうした人々とうまくやっていければと思っています」



●キャンペーンは「競争が続く限りやる」



 では、こうしたキャンペーンはいつまで続くのだろうか。100億円のような派手な数字こそ出さないものの、PayPayユーザーや参加加盟店が増え、決済回数が増えてくると、それだけ金額もかさむようになる。ワクワクペイペイ自体いつまで続き、どのような形で展開していくのだろうか。



馬場氏 「(ワクワクペイペイは)とことんやります(笑)。次についてはいろいろ意見が出ていますが、カフェだけにするとか、ファストフードでやるとか。Yahoo!のオンライン決済が始まったので、Yahoo!以外のオンライン決済もやっていかないといけないとも考えています。例えば『今月はオンラインだけ10%値引きします』とか。オンラインもいろいろあって、地方のお土産屋やオンラインショップ、定番のオンライン通販もあります。デジタルコンテンツはオンラインが多いですから、こういうものを混ぜて日常使いを増やしていくのです」



 ワクワクペイペイというと日常使いのイメージがあるが、オンラインは(筆者の視点でいえば)どちらかといえばたまにしか使わない仕組みだ。こうしたものとワクワクペイペイを組み合わせるメリットがあるのかと聞くと、馬場氏は「複数のカテゴリーがある方が効果がある」と述べる。



馬場氏 「コンビニ1つをとっても毎日使うわけではなく、たまにスーパーやドラッグストアに入るなど、複数カテゴリーをカバーしている方が決済回数が増える傾向があります。これはリアル店舗とオンラインも同様で、両者があった方が継続的に使ってくれるようになります。オンラインについてはまだ営業を始めたばかりで、これからなのですが」



 では実際、ワクワクペイペイでどれだけ予算を投入しているのかという質問について、馬場氏は「決算報告を見てください」とだけコメントする。



馬場氏 「『こいつらアホやな』と思われるかもしれませんが、今後もキャンペーンをとことんまで続けていきます。いつまでかという点は『(終わるのが)早い方がええんやけど』ですが、競争が続く限りやっていきたいと思います。ただ、実際には2〜3社程度には収束するんじゃないかと考えています。



 実際、これだけやってもまだまだ使わない人がいるわけじゃないですか。20%というだけではダメで、普通の価格なんだけど、複数回違う場所で使ってくれると何か特典があるような仕掛けを用意するとか、いろいろ毛色を変える必要があると思っています。今のままだと10%還元とかを狙う人しかやってこない。ですので、今回はスーパーと提携してみたいと考えていたんです。例えば、プライベートブランドの牛乳を週2回買うともう1本もらえるとか、こうしたキャンペーンを折半で行えば、スーパーにとって来店誘導効果があるし、僕らも決済回数が増えて得になると」



●キャペーン後の決済手数料はどうなる?



 今後、PayPayで恐らく問題となるのが「決済手数料」だ。同社は2021年9月末までの期間限定で「決済手数料無料」をうたって加盟店開拓を行っている。これが結果として他社も追随せざるを得ないチキンレース状況を生み出し、コード決済は体力勝負の世界へと突入している。



 メルペイのように「今後も長い付き合いになることを前提に」ということで当初から1.5%の決済手数料を規定してチキンレースには乗らない事業者もあるが、PayPayの決済手数料無料は加盟店開拓の武器になっている。例えば前述の和歌山での取材の際、いち早くPayPayを導入して紀伊田辺周辺の知り合いの店舗に「手数料は無料だし、気に入らなかったらいつでもすぐに辞めればいい」という言葉で説得して同サービスを広めていた米屋「たがみ」のケースもある。



 この他、東京でもある地域のインド料理や中華料理店舗で急にPayPay導入が進んだケースがあり、その理由を聞いてみると「決済手数料無料と初期手数料無料でデメリットがないから」とオーナーは述べている。つまり、決済手数料を上げた瞬間に加盟店のPayPay離れを起こす危険性も包含している施策だといえる。これについて馬場氏に尋ねると、次のようなコメントが返ってきた。



馬場氏 「『悪いようにはしません』というのが回答です。常に競争していますし、三方(加盟店、ユーザー、PayPay)がよくなる方向を考えています。実際のところ、決済手数料でこの事業を成り立たせることは難しいと考えていますし、それ以外の方法でのマネタイズを考えています。



 今だとチャージしてから支払ったり、あるいはカードから直接支払ったりしています。支払いなどさまざまな要素をスコア化する方法もありますし、あえてチャージしないで支払いを許可して、月に1回だけ支払ってもらえればいいという仕組みも考えられます。リボ払いの一種ですが、こうした金利をビジネスにすることもできます」



馬場氏 「もう1つはデジタルツールの世界です。例えばラーメン屋は個人経営のアナログな世界で、プロモーションを打ち出そうにも紙のチラシやクーポンを配るしかないわけです。車メーカーや消費財メーカーのような大きなメーカーにはできることが、普通のラーメン屋さんでは難しいのです。



 チラシを作っても来店してもらうまで配れなかったり、ポストに投函(とうかん)してもらうのもコストがかかったりします。何より自分で個人情報を持つのが大変で、紙の印刷だけでもコストです。それがPayPayを通じてYahoo!広告を出したり、『今日は天気が悪い』となったら、販促のためにタマゴ1つをオマケでつけるサービスを常連にプッシュ配信で伝えたりすることもデジタルで可能になります。



 その場合、売り上げの1%を販促費用としてもらう、といったことができます。特定のお客さんが見える形でアプローチしたり、新規のお客さんを獲得するために全員にプロモーションしたりと、やり方はいろいろあります」



 なお、いろいろアイデアはあるものの、顧客獲得ツールやCRMのような仕組みを店舗用のPayPay for Businessのアプリケーションに取り込んでいくのはまだ少し時間がかかるとみられる。前述の石野氏の記事でも触れられているが、秋以降順次展開予定で、その最初の1つとなるスタンプカード導入も「秋までに導入できればいいと思っている」(馬場氏)という。



●PayPayがJPQR(MPM)に参加しない理由



 冒頭にあった和歌山取材のメイントピックはJPQR取材だったのだが、実際に8月初旬段階ではまだ立ち上がった直後であり、実際に利用可能店舗は1カ所しか取材できなかった。しかもその店舗でも、同日利用可能だったのは「Origami Pay」「J-Coin Pay」「メルペイ」のうち、Origami Payだけであり、なかなかに厳しい状況だ。



 JPQR最大のメリットとして、店舗に統一QRコードを掲示するMPM(Merchant Presented Mode)方式により、店舗のカウンタースペースを複数のQRコードで占有される自体を防げ、顧客にとっても支払いたい決済手段のアプリを起動してQRコードを読み込むだけで済むので手軽という点だ。また、JPQRの申込時に複数の事業者に同時に書類提出が行われ、手間がある程度省けるという加盟店側のメリットもある。ゆえに「多少でも申請が楽になるなら……」ということで導入したという店舗が複数あることを確認している。



 ところが、PayPayはMPM方式のJPQRには参加しておらず、この点が逆にJPQRにとってのデメリットになっている。和歌山の事例のみならず、今後全国的に多くの加盟店を獲得するとみられるPayPayが対応しないのは、プロモーション上にもマイナスだし、JPQR本来のメリットを生かせない。なぜPayPayはJPQRに参加しないのか。馬場氏の回答は明確だ。



馬場氏 「MPMで1つのQRコードを共同でみんなで使おうと言い出すと、営業して加盟店を獲得してきた事業者と、実際にユーザーが使ったアプリの事業者とで何らかの取り合いをしないといけないですよね。何を案分するのかと。僕たちは自ら営業に行って加盟店手数料を無料にしているので、ここでの取り分がないんです。だから案分するものがないというわけです」



 互いに乗り合えず、メリットもない。ここが解決しない限り、JPQR参加はないかと質問すると、馬場氏は「ない」と断言する。実際、相互開放した場合の取り分について、先方からあまりいい話が聞こえてこなかったという。前述のメルペイが好例だが、最初から1.5%を前提に加盟店開拓している事業者と、無料を前提に開拓している事業者とでは手数料の考え方が異なり、ルール上の決めるべき問題があるということなのだろう。



 一方で、AirペイにPayPayが載ったように、相互乗り入れではなく、ゲートウェイ経由で複数の決済手段のアクワイアリングを行う事業者の場合、PayPayは提携もやぶさかではないという。馬場氏は「ぐるなびPay」の事例も挙げるが、最初から手数料を取る場所については「幾分か」の収益がある形だ。



馬場氏 「加盟店のニーズというのは、手数料無料、初期費用無料、そして早く入金するというものもあるし、全部のQRコードや決済手段を1つの機械でやりたいというものもあります。前者なら僕らのサービスを使えば無料でできますし、後者のAirペイのような仕組みを3%の手数料に納得して選択されるお客さまであれば、そちらを選ぶのもいいと思います。手数料的にうれしいのは後者の方ですが、『僕らの方を選べば全部無料で済みますよ』となります。



●本来の意味での「送金」サービスが利用可能に



 PayPayの特徴の1つに、他のコード決済アプリが採用している「残高を使ったリアルカード決済」や「iDやQUICPay、Suicaなどの非接触通信を使った決済サービス」に対応しない点が挙げられる。これについても馬場氏は方針を述べている。



馬場氏 「確かにQRコードを出してやるよりは楽ですけど、われわれ営業にしてみると、あまり役に立たないのが実情です。PASMOやSuicaが入っているようなところは問題ないですが、われわれの多くは地方で商売している人たちを相手に営業しているので、そうした非接触決済に対応するために『では○万円で機材を導入しましょう』ってやっても、成約の雰囲気が流れてしまうだけです。



 それよりは、スマホをポケットに入れたまま顔認証で決済できますよとか、せっかくお互いがスマホを持っているのだから、スマホで何かいろいろやって決済できた方が絶対にいいと思うんです。PayPay for Businessのアプリケーションの中にそういう機能を入れられたらいいかなと。同じNFC同士でシュッ!って決済してもいいですし」



 最後のトピックは送金の話だ。これまで、PayPayはいわゆる「資金決済法」における「前払式支払手段」の事業者であり、PayPay残高の扱いはあくまで「ポイント」であって「現金」ではなかった。前払式支払手段の場合、利用者の本人確認が簡易で済み、相手への“ポイント”付与などが容易な代わりに、「出金できない」というデメリットがあった。



 PayPayではここを改善する。9月末以降に導入される「PayPayマネー」を通じて「資金移動業」免許でのサービスが開始され、ようやく本来の意味での「送金」サービスが利用可能になった。これはLINE Payなどと同様、ほぼ現金と等価に扱える残高であり、好きなタイミングで現金化できる。この新サービスを通じてPayPayはどのような提案を行うつもりなのだろうか。



馬場氏 「私は送金などのマーケティングの担当ではないのですが、PayPayとして考えてみると、チャージする方法に多様性があった方がいいのは確かです。銀行やカードだったり、先日のセブン銀行ATMでの提携だったり、ヤフオクの売上金だったりするわけですが、送金もその手段の1つです。



 例えば子どもたちが夏休みに入って、お昼を食べさせるために親が今まで現金を渡していたものが、PayPay送金になって、これでコンビニで買い物をするわけです。お正月のお年玉も、遠く離れたおじちゃんに『お年玉ちょうだい』ということもできるわけです」



●PayPayで給料を支払う時代が来る?



 先日、pringというほぼ送金専用のサービスを提供する事業者を取材して、「送金」にまつわる可能性の一端を理解できた。他媒体の記事だが、銀行を介さない新興デジタル送金サービスのメリットの1つに「手数料がかからない」というものがある。



 今までは銀行振込で数百円単位の手数料を取られていたため、少額の振り込みは行えず「一定額を超えたタイミングで」となったり、給料払いや経費精算も月1回払いのようになっていたものが、それこそ1円単位の送金も可能で、さらに各種振り込みも週単位や日払いでもコスト上のデメリットはない。もし手に入れた金額を現金化したい、あるいは銀行口座に入れたいと思ったときのみ手数料が取られる仕組みだ。これについて馬場氏に尋ねたところ、興味深い回答があった。



馬場氏 「当然考えられますよ。実際、PayPay社員の給料はPayPayで払うぞって言っていますし。もちろん、給料払いをPayPayにするかは法律が改正されてからの話ですが、銀行より安い手数料でPayPayが請け負うという話になれば、いろいろできるんじゃないですかね。例えば、月末に給料が払われることを前提に、会社の代わりにPayPayが先払いで給料を払うんです。1万円先払いしてほしいということだったら、9990円を振り込んでおくとか。つまり金利手数料先払いの給料前借りです。



 今、ソフトバンクでAndroidスマホを買ったらPayPayボーナスがもらえるというのをやっていますけど、前は極端な話、VisaのギフトカードやTポイントを出していたわけです。もちろんPayPayの方がコストは安い。個別の話でいえば、量販店でのキャッシュバックにPayPayを使うというアイデアもあります。商品を卸しているメーカーが販促をやりたいとき、単純に値引きすると量販店がもうかるだけです。そこで個別の購入者に還元するためのキャッシュバックというわけですが、これがAmazonギフトみたいなものだと角が立ったりするわけです。いろいろ可能性はあると思います」



 非常に興味深い話があった馬場氏のインタビューだが、普及優先の派手なキャンペーンが目立つ一方で、一度広く普及させることでいろいろ可能性が生まれるという側面も垣間見ることができた。既に10月1日を前にコード決済の覇権争いはほぼ終盤に差し掛かっていると筆者は考えているが、それを越えた2〜3年先の未来を見据えてみると面白いかもしれない。


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