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“日本が誇る長寿アニメ”を描き続けることの魅力と難しさ「ちびまる子ちゃん」高木淳監督【インタビュー】

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2019年09月10日 13:02  アニメ!アニメ!

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アニメ!アニメ!

写真日本アニメーション 高木淳氏 インタビュー
日本アニメーション 高木淳氏 インタビュー
アニメサイト連合企画
「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」
Vol.18 日本アニメーション Part1


世界からの注目が今まで以上に高まっている日本アニメ。実際に制作しているアニメスタジオに、制作へ懸ける思いやアニメ制作の裏話を含めたインタビューを敢行しました。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」、Facebook2,000万人登録「Tokyo Otaku Mode」、中国語圏大手の「Bahamut」など、世界中のアニメニュースサイトが連携した大型企画になります。


日本アニメーション代表作:『ちびまる子ちゃん』『フランダースの犬』『母をたずねて三千里』『あらいぐまラスカル』『トム・ソーヤーの冒険』『うっかりペネロペ』『愛と勇気のピッグガール とんでぶ〜りん』『レ・ミゼラブル 少女コゼット』『劇場版 はいからさんが通る』

『フランダースの犬』から始まる『世界名作劇場』シリーズをはじめとして、多くの人の心に残る作品を送り出してきた日本アニメーション。日本だけでなくアジアなどでも人気の『ちびまる子ちゃん』も同社の制作である。2007年以来、同作の監督として腕を振るう高木淳氏に、『まる子』の魅力と難しさ、そして日本アニメーションについて話を聞いた。
[取材・構成=藤津亮太]

『ちびまる子ちゃん』は今年30周年
(C)さくらプロダクション/日本アニメーション

今回のインタビューでお邪魔した日本アニメーションの本社スタジオ

本社スタジオ全体

エントランスではちびまる子ちゃんたちがお出迎え

室内の壁面には代表作のヴィジュアルが飾られている

90年代のフィルムとセル画

1枚ずつ台紙付きで保管箱に収納されている

社内にはいたるところにちびまる子ちゃんが

3の4クラスメイト早見表

日本アニメーション 監督 高木淳氏よりインタビューに応じていただいた

――高木監督は2007年から『ちびまる子ちゃん』の監督を務めています。どういう経緯で監督になったのでしょうか。

高木:『ちびまる子ちゃん』の第1期(1990〜1992)は、演出助手で参加して、そこで演出になりました。
第2期(1995〜)は合間に『さくらももこ劇場 コジコジ』や『ペネロペ』の監督で抜けたこともあったんですが、演出で参加していまして、そうしているうちに第600話前後で須田裕美子監督が辞める、という話が出て、その後を引き継ぐことになりました。

その少し前に、担当のプロデューサーに「高木さん、もし須田監督が辞めるって言われたら、監督をやれますか?」って聞かれたことがあったんですよ。
冗談半分みたいな調子で聞かれたので、その時は須田監督が辞めるなんて知らなかったから、「なにを言っているんだろう」と思って聞いていたのですが(苦笑)。

正面玄関に飾られているちびまる子ちゃん30周年の記念ボード

――須田監督からは何か引き継ぎはあったんでしょうか?

高木:いえ。須田監督からは「もう淳ちゃんが監督なんだから、好きなようにやればいいんだ」と言われただけでした。
脚本打ち合わせも1〜2本は引き継ぎを兼ねて一緒にやるのかなと思ったのですが、須田監督は自分担当の最後の話数が終わると、さっさと引き揚げていかれて(笑)。

だから僕も自分流にやらせてもらったんですが、脚本家さんたちは突然やり方が変わるわけですから戸惑われたと思います。



――須田監督としては、各話演出としてかなりの話数を担当しているから、作品世界は十分理解しているだろう、ということだったのでしょうかね。各話演出時代に印象的だったエピソードはありますか?

高木:さくら(ももこ)先生のオリジナルの脚本で、お父さんのヒロシが8ミリカメラを借りてくる回がありました(第95話「お父さん8ミリカメラを借りてくる」の巻)。
普段は登場しない特別な小道具として8ミリカメラが登場して、それでお話が展開していくのが印象的で、結構楽しくやらせていただきました。

あと「うれしいお中元」の巻(第129話)も印象に残っています。これも先生のオリジナル脚本で、マンガ原作がないものを、アニメとして絵に起こした時に、いかにおもしろくしていくのか、そこにやりがいがあった記憶があります。

かつての台本もそのまま保管されている

――高木監督は『ちびまる子ちゃん』を監督する上で、どこを大切に考えていますか?

高木:『まる子』が始まってもう30年近くになるわけですが、それぐらい続いていると、もう彼女たちはあの世界の中で生きているんですよね。
だから、そういう部分をないがしろにしないでお話を作りたいと考えています。

要するに、面白くなるからといって、こっちの都合でまる子たちを動かすことは、やめようと。
もしお話をそこにもっていきたいなら、面倒くさいけれどちゃんと段取りを考えて、そこにもっていくことは意識しています。苦労することは多いですが。



――具体的にどんな苦労が多いのでしょうか?

高木:『まる子』の世界は原則、1974年から75年にかけての1年間を描いているんです。
しかも季節ネタなんかは、原則として一回あったことは話にはしないようにしているんですよ。

例えば、クリスマスであれば、まる子が夜、家でクリスマスパーティーをやっているエピソードが既にあるんです。だから夜、ほかのお家に行ってパーティーをすることはできないんです。
1年365日しかなくて、しかも基本の舞台は家と学校の往復。その中でもう1200話以上作っているので、そこはなかなか難しいところがあります。

何年か前に、駅弁が出てくるエピソードがあったんですけれど、そこに有名な陶器のお釜に入った釜飯弁当が出てきたんですよ。
それを作りながら「この釜飯弁当、前に出てきてなかったっけ?」と思って、調べ直したらやっぱり自分が各話演出で担当した回に出ていたんですよ。

これ、気づかずに、初めて見るようなリアクションをさせてしまっていたら、前のまる子はなんだったんだってことになってしまいますからね。
……まあ、とはいっても完全にこういうことをなくすのも難しくて、実際には微妙に以前とズレて、パラレルワールドっぽくなってしまっている部分もないわけではないのですが。



――まる子という主人公は動かしやすいですか?

高木:難しい主人公ですね。まる子はご存知の通り面倒くさがり屋なので、自分からお話を引っ張ってくれる主人公じゃないんですよ(笑)。
だから「おいちょっと、まる子、なんかしてよ」って言っても、面白いことをやってくれるわけじゃない。まる子は、ごく普通の小学校3年生ですからね。

それがおもしろくなったのは、やはり原作のさくら先生の視点だったり会話がズバ抜けておもしろかったからで。そこをなんとか原作のテイストに近づけようとするには、かなりの頑張りが必要なんです。



――2015年には23年ぶりに劇場版『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』も公開されました。

高木:映画の企画が始まった時点では、まだ内容も確定しておらず、脚本家に依頼をするのか、先生に相談するのかも決まっていませんでした。
そうしたら、先生がパッと書いてくださって、そこでもう映画の内容は決まったんです。

ただ初稿は、丸尾くんとかレギュラーキャラクターが何人か登場していなかったので、そこだけ修正をお願いして、それで絵コンテに入りました。
映画はイタリアから来たアンドレアという少年がメインのゲストキャラクターです。先生とも「まる子とアンドレアは友達。これは初恋のエピソードではない」とお互いに確認していたんですが、映画を作っていくうちにちょっとこちらの思い入れが深くなってしまって、初恋っぽくも見える感じになってしまいました。

スタッフにもアンドレア好きな人は多くて「映画が終わっちゃうと、アンドレアを描く機会はもうないんだよね」と寂しがる声は多かったです。
→次のページ:「人間を描く」という意味で役立った『世界名作劇場』の経験



――『ちびまる子ちゃん』は、海外だとアジアを中心に人気がありますが、人気を体感したことはありますか?

高木:以前、香港に行った時に実感しました。日本だと長く続いていることもあって『まる子』というのは定番という感じですが、向こうはまだ熱気がある感じでしたね。

ただ、アジアでも放送されてからは長くは経っているので、子供だけでなく30代ぐらいに見える大人のファンの方もいましたね。
『まる子』の世界は静岡県清水市――今は静岡市清水区ですが――とはなっていますが、基本的にはどこにでもあるような町並みですし、まる子というキャラクターも「自分がまる子だったら」とか「自分の近くにこういう子がいた」とか考えやすいキャラクターなんですよね。

そのあたりが国境を超えても人気を集めている理由かなと思います。黒髪ということもあってアジアンテイストですし。

――海外のファンの中には「日本のアニメをもっと応援したいのだけれど、スタッフの人にとってなにが一番うれしいんだろう」という疑問を持つ方もいるそうです。高木監督としては、こんなことをしてくれたらうれしい、ということはありますか?

高木:これは海外のファンに限らないのですが……。僕は、この仕事を30年以上やってますが、テレビアニメの現場でずっと育ってきました。
テレビって基本的に、一方通行なんです。僕らのところに視聴者から直接リアクションが来ることはほぼないんです。

例外的に、テレビ局の企画で感想のお手紙が募られたりした時に、「そっか、見てくれてる方たちは、そういうふうに思ってくれてるんだな」「こういうところが好きなんだな」っていうのを知る感じなんです。
僕はそれがもう当たり前になっているので、「SNSで投稿してなんか褒めたたえてくれ」とか、そういうことも別にないんですよ(笑)。
だから本当に「見てくれるだけでうれしいです」っていうだけで、そして、もしかしてこちらが込めた思いが伝わっていたりしたら「ありがたいな」と思うぐらいで。

なので海外のファンの方も、意識して作品を見てくださるだけで、僕は十分うれしいんです。



――「まる子は生きているんだ」というお話がありましたが「キャラクターを生きているものとして、その生活を追っていく」という考え方は日本アニメーションを代表する『世界名作劇場』シリーズにも通じる視点だと思いました。

高木:僕は入社してまず『世界名作劇場』の『愛の若草物語』に演出助手で入りましたし、『七つの海のティコ』では監督もやらせてもらいました。

だから、そこそこ『世界名作劇場』のことは知っているほうの人間だと思うのですが、「人間を描く」という意味では確かに『世界名作劇場』の経験は『ちびまる子ちゃん』にとても役に立っていると思います。


――高木監督は1987年に入社して以来、一貫して日本アニメーションで仕事をしてきました。どういう経緯で日本アニメーションを選んだのでしょうか。

高木:僕は日本大学芸術学部の映画学科なんですが、大学に求人が来ていたんです。
子供のころから『マジンガーZ』『天才バカボン』『宇宙戦艦ヤマト』といった作品が好きで、1980年前後のアニメブームのころから――一応子供向けではあるんですが――ドラマを大事にする作品に魅力を感じていました。

だから欧米の児童文学などを題材にした『世界名作劇場』で人間のドラマをマジメに細かく描いている日本アニメーションは、おもしろい会社なんじゃないかと思って応募することにしたんです。

あと、当時は生活感あるSF作品の『宇宙船サジタリウス』も放送中でしたし、少し前には宮崎駿監督の『未来少年コナン』も制作していて、いろいろな作品も作れそう、という感触もありました。

――当時の日本アニメーションはどんな雰囲気でしたか?

高木:当時は今の社屋になる前で、古い年季の入った社屋で2階建てでした。
昔のアニメーション会社はみんなそうでしたけれど、ほぼ不夜城で、夜中まで電気がこうこうとついてましたね。

僕は『世界名作劇場』の『愛の若草物語』に演出助手で入ったんですが、『ボスコアドベンチャー』が終わったばかりで、『宇宙船サジタリウス』はまだ制作中で、とにかくテレビシリーズをガンガン回しているという感じでした。

当時は、ほとんどが男性スタッフばかりで、女性は数人ぐらいでした。
今、スタジオ4°Cの社長になっている田中栄子さんはそんな女性スタッフのひとりで、ちょうど僕と入れ違いぐらいで、日本アニメーションを辞めて、スタジオジブリに移っていかれましたね。



――高木監督は『南国少年パプワくん』で監督デビューしますが、師匠と呼べるような方はいるのでしょうか?

高木:演出や監督にやり方について、別に手取り足取り教わったわけじゃないんです。
ただ、長く一緒に仕事をさせていただいたという意味でいうと、まず『世界名作劇場』で何作も監督をされていて、昨年亡くなられてしまった楠葉宏三監督。

それから『まる子』の第1期を須田裕美子監督と一緒に監督されていた芝山努監督。
お二人に「演出とは」とか「監督とは」といった形で何かを教わったわけではないんですが、実際の演出作業の中でリテイクを通じて指導を受けたりしたので、自分としてはこのお二人が師匠かなと思っています。

――高木監督は日本アニメーションという会社の強みはどんなところだと思いますか?

高木:強みというか……。以前、どこかのテレビ局のプロデューサーさんが「日本アニメーションさんはいろんな作品を作っても、良くも悪くも日本アニメーションの作品になるよね」っておっしゃっていたんですよ。それは頷ける部分はあります。

うちの作品は、そんなド派手なものはなくて、そのかわりに、優しくて、柔らかくて、ささやかで……ほのぼのとか心温まるっていうのは陳腐な言い方でイヤなんですが……そういう作品を作ってきた歴史は長いんです。そして、そういうものを作り上げる力は今もあると思います。



――高木監督としても、そういう大きな流れを汲んだ中に監督としている自覚があるわけですね。

高木:そうです。保守に凝り固まるということではなく、新しい作品を作る中にも、そういう個性は残していくべきなんじゃないかなということは思っています。

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  • ただ脚本で語尾に「〜ずら。」をつけていないので静岡らしさがまだまだ足りない…。作品としては面白いが。
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