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夏休みの教員研修で見えた、プログラミング教育推進の意外な壁とは?

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2019年09月11日 16:00  AERA dot.

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写真福田晴一(ふくだ・はるかず)/昭和31(1956)年、東京都生まれ。みんなのコード学校教育支援部主任講師、元杉並区立天沼小学校校長。約40年の教員生活を経て、2018年4月NPO法人「みんなのコード」に入社。61歳で新入社員となる。2020年度からの小学校におけるプログラミング教育必修化に向け、指導教員を養成すべく、全国を東奔西走中
福田晴一(ふくだ・はるかず)/昭和31(1956)年、東京都生まれ。みんなのコード学校教育支援部主任講師、元杉並区立天沼小学校校長。約40年の教員生活を経て、2018年4月NPO法人「みんなのコード」に入社。61歳で新入社員となる。2020年度からの小学校におけるプログラミング教育必修化に向け、指導教員を養成すべく、全国を東奔西走中
 61歳で公立小学校の校長を定年退職した福田晴一さんが「新入社員」として入社したのはIT業界だった! 転職のキーワードは「プログラミング教育」。全国を教員研修で回っているうちに63歳となった。小学校プログラミング教育必修化まで半年と迫ったこの夏休み、普段よりさらに忙しく全国を飛び回った。

【研修会では、どの先生も真剣そのもの…】

*  *  *
 夏休みが終わった。実は先生方は夏休みといってもなかなか休める日がないのが現状である。夏休みは授業がない「休業日」であるが、夏休みも出勤を求められる「勤務日」と扱われているので当然出勤しなければならない。

 昨今の働き方改革の動きもあり、お盆の期間は「学校閉庁」と称し、警備員の方以外、誰もいない日が設定されているが、時間に余裕がある夏休みは多くの研修が組まれることが多い。プログラミング教育必修化を半年後に控えたこの夏休みは、プログラミングに関する研修会は各地で真っ盛りであった。

 というわけで、私も大忙しの夏であった。12の自治体で研修会を開催し、のべ約500名の先生方とお会いした。

 弊法人であるNPO法人「みんなのコード」には、私と同様の教員研修会の指導講師が3人いるが、皆全国を飛びまわっていて3人が揃ったのはお盆期間中の数えるほどであった。

 3人のこの夏の研修先を見ると、南は沖縄県石垣市、北は北海道の釧路市、もちろん九州・四国にも訪問している。

 私1人でも、夏休みの移動距離が15000キロに及び、深夜バスを利用して研修当日の早朝到着、ということもあった(到着後の24時間スパは快感であったが、正直病みつきにはなりたくない……)。

 教員の研修会は、大きく「悉皆(しっかい)研修」と「選択研修」の二つがある。「悉皆研修」は聞き慣れない言葉だろうが、「悉皆」とは残らずという意味があり、換言すれば、必ず参加しなくてはならない研修である。一方「選択研修」は、先生自身の希望により申し込む研修である。このように参加背景に大きな違いがあり、悉皆研修の場合は不本意ながら参加しているため前向きでない先生もいる。対して選択研修は自身の力量形成も考えた参加なので、比較的、受講姿勢に積極性がある。

 今夏の研修は、自治体規模の違いもあるが悉皆研修と選択研修は半々であった。でも例年との明らかな違いは、悉皆研修に参加している先生も、皆、積極的であったことである。やはり、半年後の導入をひかえ、先生たちも真剣そのものだ。

 さて、研修会の楽しみに懇親会がある。毎回ではないが、地方などにいくと懇親会と称する「研修会後の呑み会」を開催していただくことが多い。

 私のイメージでは、先生という職種は「聖職」と呼ばれる(呼ばれていた)ように、ロールモデル的な言動でなくてはならない感があるだけに、それを維持するためのストレスも大きいと思う。その反動・はけ口が「懇親会」となる時が多々ある。呑みながら、意見交換をする、愚痴を言う、アドバイスするなど、他の職種でも見られる光景だろう。

 特に、先生という職種の懇親会は酒豪揃い……と思いきや、最近は飲まない先生が増えていることに驚いた。時代の流れか。もちろん、地方だと車で帰宅しなくてはならない場合もあろうが、それ以外の先生でもソフトドリングで終始、和やかに、といった方が多い。

 そんな先生方との懇親会でのやり取りは、やはりプログラミング教育に関係しての話題となる。自分たちは研修を受けて積極的に取り組みたいけれど、壁となるものは何だろう……と、話題が進む。

 第一にあがるのが管理職。

 いくら、自分たちが推進しようとしても、モノを購入する決済は管理職にある。管理職が首を縦に振り、書類に押印しない限りモノは手に入らない。酒が進むと「うちの学校は、近隣の学校が取り組んでいるのを見てからのGOサインだな」と嘆く先生。それでは、周回遅れの学校となる。

 次に上がるのが、同学年のキーパーソンとなる先輩教諭、という声も多い。モノを購入しなくともプログラミング教育は、アンプラグドでもコンピュータでも無償のものは多くある。それにもかかわらず「あなたのクラスだけ取り組むの?」「学年全体の歩調があるのだから……」と、正論ぶって意欲ある先生の取り組みを阻む言動が聞かれる。

 よくよく聞くと、本人が取り組みたくないだけで、新しいものから逃げているとしか言いようがない。

 なるほど……。プログラミング教育推進の壁は身近なところにも存在するようだ。

 では、保護者の方たちが、「うちのが学校は遅れている?」と思ったらどうしたらいいのだろうか?

 直接先生に状況を伺ってみたり、PTA経由で「プログラミング教育を充実させてほしい」などの意見や要望を言ってみるなどが大切だと思う。すぐに変化は出ないかもしれないが、やはり保護者ひとりひとりが声をあげ、その声が大きくなっていくことによって、学校や教育委員会を動かすことにつながるし、積極的に取り組もうとしている先生を応援することにもなる。

 夏休みに研修を受けた先生方の多くが、二学期に授業実践をされる。該当のクラスや学年に留まらず、近隣の学校にも影響してもらいたいと願う。日本には、約1800の自治体があり、約2万の小学校、約40万人の小学校の先生がいる。この夏の私の研修会は、到底その規模に及ぶものではないが、草の根運動的に現場から少しずつ、プログラミング教育の価値と具体的な取り組みが浸透していくことを切に願っている。

 ぜひ保護者のみなさんも、来年度から必修化となる「小学校プログラミング教育」を仲間内で話題にしていただきたいと思う。正直、地域格差、学校格差の大きいプログラミング教育である。保護者の方の声がムーブメントとなり、格差是正の一助になるはずだ。

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