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FA取得のバレンティン、重視するのは「勝つことが一番。金の問題じゃない」【燕軍戦記】

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2019年09月11日 16:00  AERA dot.

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写真ヤクルト・バレンティン(C)朝日新聞社
ヤクルト・バレンティン(C)朝日新聞社
 ポッキリと折れて三塁方向に飛んでいくバットのことなどお構いなしに、バックスクリーンに吸い込まれる打球を目で追いながら、8年前の光景を思い出していた。

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 2011年5月13日の横浜(現DeNA)戦。当時、来日1年目の26歳だったウラディミール・バレンティンは、須田幸太(現JFE東日本)のスライダーにバットを折られながらも、打球を横浜スタジアムのレフトスタンドに運んだ。根元から折れたバットがガシャンという大きな音を立てながら目の前のバックネットにぶつかる間に、高々と舞い上がった打球が大歓声に沸くスタンドに消えていったのを、今でもハッキリと覚えている。

 あれから8年。7月で35歳になったバレンティンは、9月6日の巨人戦(神宮)で今度はバットを折りながらセンターに今季30号を叩き込み「(バットを折って)バックスクリーンは初めてだよ」と笑った。

 これで外国人選手としては史上最多の8度目のシーズン30本塁打以上となり、同時に日米通算300号に到達。「毎年30本打つというのが自分の目標でもあったので、とても嬉しい。(日米通算300号は)自分自身を誇りに思うし、達成感でいっぱいだけど、残り試合でもっと打てるように頑張る」と話した。

 バレンティンにとって、今年はいろんな意味で節目のシーズンになっている。6月には自宅のある米国で待望の長男が誕生し、一時チームを離れてこれに立ち会った。8月24日の阪神戦(神宮)では、ヤクルトの外国人選手では初めて通算1000試合出場を記録。8月28日のDeNA戦(横浜)で来日以来の通算本塁打を284本として、歴代の外国人ではタフィー・ローズ(通算464本、元近鉄ほか)、アレックス・ラミレス(通算380本、元ヤクルトほか、現DeNA監督)、アレックス・カブレラ(通算357本、元西武ほか)に次いで単独4位に浮上した。

 そのバレンティンがしんみりとした口調で語り出したのは、小川淳司監督の今季限りでの退任が報じられた9月8日のこと。小川監督との思い出を聞くと、返ってきたのは少し意外な答えだった。

「やっぱり2011年かな……。調子が悪くて、打てない時も使ってくれたからね。打てなくても二軍に落としたりせずに、一軍で試合に出し続けてくれたんだ。2013年の(日本新記録の)60本塁打ももちろん良い思い出だけど、オガワさんとの一番の思い出はあの年かな」

 来日1年目の2011年、バレンティンはオープン戦ではボール球に強引に手を出しては空振りや凡打を繰り返していたものの、シーズン開幕後は見事にこれを修正。5月には月間MVPを獲得するなど、順調な滑り出しを見せた。夏場には打撃不振に陥り、打順を7番に下げられることもあったが、それでも小川監督はバレンティンをほぼスタメンで起用し続けた。

 結局、140試合の出場で打率はリーグワーストの2割2分8厘ながら、31本のアーチを架けて本塁打王のタイトルを獲得。そこから3年連続でホームラン王になったのも小川監督のおかげだと、バレンティンは言う。

「オガワさんが監督で良かったと思っているし、感謝しているよ。素晴らしい監督だし、人としても素晴らしい。自分自身も、選手と監督として良い関係を築けていたと思っている。(辞任は)残念だけど、監督が決めたことだからね……」

 そういって小川監督の退任を惜しむバレンティンだが、このオフは自身も大きな岐路に立つ。来日9年目にして出場選手登録日数が8シーズン(145日を1シーズンとして換算)に達し、国内フリーエージェント(FA)権の取得要件を満たしたのだ。当然、FA移籍も視野に入ってくる。

 来シーズンを見据える上で、最も重視することは──。ストレートにぶつけてみると、バレンティンはそれまでかけていたサングラスを外し、真っすぐにこちらを見つめてキッパリと言い切った。

「WINNING(勝利だ)」

 いつものように冗談めかすわけでもなく、穏かではあるがどこか気圧されるようなトーンで、さらにたたみかける。

「とにかく勝つことが一番。金の問題じゃない。日本で9年やって、まだ優勝したことがないんだ。チームは2015年に優勝しているけど、オレはほとんど試合に出ていないから(出場15試合)あれはカウントできない。もう35歳だし、このまま一度も優勝できずに引退なんてご免だよ。だから大事なのは年俸や環境よりも、優勝できるかどうかなんだ」

 ヤクルトはシーズン96敗を喫した2017年から、昨年はセ・リーグ2位に躍進したが、今年はここまで借金23を抱えて最下位に逆戻り。来シーズン、新監督を迎えていきなり頂点まで駆け上がるというのは、簡単なことではない。そう考えると、9年間当たり前のように見てきたヤクルトのユニフォーム姿のバレンティンも、今年で見納めになってしまうかもしれない。

「スワローズに愛着はあるし、もちろん話は聞くつもりだけど、あらゆるオファーを検討したい。今はまだ何とも言えないよ。何が自分にとって、家族にとって一番いいのか、時間をかけてじっくり考えるつもりだ」とバレンティンは言う。

 一方、ヤクルトの伊東昭光編成部長はバレンティンとの契約について「シーズンが終わってからですね。年俸(今季推定4億4000万円)もあるし、年齢のこともある。いろいろと考えてオファーしたい」と慎重な姿勢を示している。

 2011年の来日以来、その類まれなパワーと茶目っ気たっぷりの性格で多くの燕党に愛されてきたバレンティン。「来年もヤクルトに残ることを期待しているよ」と言うと、ニヤリと笑って「オレもそう思ってる」と返してきたのはファンにとって救いかもしれないが、実際に来年もヤクルトでプレーするかどうかは現時点では不透明。個人的には残り12試合、その姿を目に焼き付けておきたいと思っている。(文・菊田康彦)

(文中敬称略)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004〜08年『スカパーMLBライブ』、16〜17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。

このニュースに関するつぶやき

  • 巨人に来い!
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  • この人は指名打者の方が生きると思うな。パ・リーグ向きでしょ。しかしながら本人がセ・リーグが良いって言ってるなら巨人かな?
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