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なぜ“特別価格”で出せるのか 「テレビショッピング」のからくり

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2019年09月17日 11:30  AERA dot.

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写真(イラスト/藤井アキヒト)
(イラスト/藤井アキヒト)
 テレビショッピング市場は緩やかながらも、拡大傾向を続けているという。テレビショッピングは、商品の「お値打ち感」を打ち出しているのも特徴の一つ。「特別価格」にひかれて、思わず購入してしまった経験がある人も多いだろう。1日だけの特別値引き価格の商品では3億円、4億円も売れることがあるという。

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「お客さんの9割ぐらいが女性で、50代、60代の主婦が圧倒的に多い。商品の品質がいいのはわかっているので、値段がすべて。最初はデビュー価格というお買い得な値段を設定することが多くあります。リアルタイムで放送するほうがよく売れます」(テレビショッピングの番組の現場にたずさわってきたフリーアナウンサーの宮坂珠理さん)

 消費者として気になるのは、本当に質がよくて、値段も安い、お買い得な商品ばかりなのかだ。何かからくりがあるのか。

 売り手の企業努力の結果、消費者は本当にいい商品を手に入れられる場合もある。テレビショッピングの強みは、数がはけることだという。売る側もそれを前提にしているそうだ。

「化粧品は1時間で1200万円ぐらい売れないと番組が打ち切りになります」(同)

 大量に仕入れれば、その分価格を抑えることができる。さらに、テレビショッピングはそれを、長い期間かけて売るのではなく、多くの人に訴求できる放送という手段によって短期間で売るのが特徴。視聴者が一気に買う「BUYING POWER(バイイングパワー)」があるから、お値打ち価格を可能にしている側面があるのだ。

 例えば、米国でダイヤモンドの買い付け規模は、ティファニーが一番多く、それに次ぐのがテレビショッピング業界という。テレビショッピングはそれほど大きな存在感がある。

「テレビのバイイングパワーでたくさんの人が買うので一気にはけます。業者側は大量に仕入れてコストを抑えることができます。玉石混交ではありますが、消費者にはお得なケースもあります」(業界動向や消費者行動に詳しい通販評論家の村山らむねさん)

 また、購入の申し込みを受け付けるコールセンターは、自社で運営しているか、2〜3時間の外部委託で契約していることもあり、いずれの場合も短時間に大量の商品購入を受け付けられれば人手などのコスト面で効率的な運営ができる。

 こうしたテレビショッピングの商売では、時間当たりにいくら売り上げるかがポイントになると、村山さんは指摘する。するとメーカーが在庫処分したい商品ではなく、ヒットが見込めるいい商品が扱われやすくなるのだという。

「商品を売り切らないともうからないため、売り切る可能性のある商品しか番組では取り上げません。メーカー側も番組で取り上げてもらえるように、いい商品を提供してきます」(同)

 また、テレビショッピングでの特別値引き価格は商品のプロモーションとして取り上げてもらうためのものと割り切り、番組に提供した商品は収支がトントンのメーカーもあるという。番組を見逃した人は後で通常価格で購入することもあるため、そこでメーカーはもうけるようにしている。

 プロモーション効果は侮れず、テレビショッピングの世界でヒットすると、爆発的に売れることもある。例えば、かつてヒットした、「ビリーズブートキャンプ」という7日間の短期集中エクササイズのDVD商品がそれだ。映像には米国陸軍専属トレーナーだったビリー・ブランクス氏が登場し、キックボクシングのような動きのエクササイズが特徴だ。ビリー隊長が叱咤激励する掛け声の効果もあり、激しい運動ながら楽しくできると人気が出た。日本では、1万5千円ぐらいで販売され、07年5月だけで20万セット、30億円も売れたとされる。

 ちなみに、テレビショッピングで、大量にモノが動くのは、テレビという映像媒体ならではの仕組みも影響している。テレビショッピングが扱う商品には化粧品やアパレル、日用品、家電製品などのほかに宝飾品がある。米国のテレビショッピング業界でも宝飾品の扱いは多いという。村山さんは「通常なら小さな商品が画面では大きく拡大され、きれいに見えるのです」と明かす。

 テレビショッピングは消費者にとっては、いい商品を安く購入できていいことずくめのように思えるが、価格設定に「からくり」がある場合もあり、注意が必要だ。

 テレビショッピングの番組を見ていると、「今日だけの特別値引き価格」と視聴者を誘うことがある。しかし、翌日以降の通常価格に実態がなく、消費者庁の処分を受けた事例もある。消費者庁が今年3月に景品表示法に基づき課徴金納付命令を出したのは、業界大手のジュピターショップチャンネルが番組で「40型テレビ」と「ずわいがに」を販売したケース。

 40型テレビの販売では17年3月20日の放送日だけ51%オフの10万7900円とし、翌日以降は通常価格22万4640円に戻るとした。実際には通常価格の期間は3日間だけであり、他社の販売する同テレビは15万円を下回るものが複数存在し、同社の特別値引き価格を下回るものもあったという。

 ずわいがにの販売では16年12月13日の放送日だけ32%オフの9800円としたが、翌日以降の通常価格1万4580円での販売は2日間だけだった。消費者庁が課徴金を算定する際に基準とした商品の販売実績は、テレビが8800万円超、ずわいがにが4億2364万円超もあった。

 こうしたテレビショッピングでの「今だけ安い」といった販売手法については、前述した「プロモーションだから特別に安くしている」という消費者にメリットがあるようなケースだけでないという。村山さんは「売り手は、消費者に購買に向けて次の行動をさせないといけないのです。確実に商品の購買に結びつけるためには、急がせないといけないのです」と話す。

 例えば、いったんテレビから離れて買い物などに出かけてしまうと、番組を見ているときには「戻ってきてから申し込もう」と思っていても、帰ってきた時点で忘れていることや欲しい気持ちが薄れていることが多い。番組放送中やその直後に申し込まなかった場合、購買に結びつくケースはほとんどないと考えたほうがいいだろう。売る機会を逸しないために、「今だけ」とうたっているのだ。

 一方、テレビショッピングの愛好者自身も、だまされないように注意が必要かもしれない。テレビショッピングをあまり利用しない30代や40代の女性は仕事や子育てで忙しく、自由に使える時間が短いため、商品を購入する際は、インターネットの価格比較サイトを見て安いところで手早く買う。一方、テレビショッピングの番組で商品を購入するのは、ゆっくりと時間を過ごせる人。

「価格比較行動ということでいえば、最近はパソコンを開かず、情報に受動的になっている人が多くなりました。男性は価格の比較をすることが多いですが、テレビをよく見ているシニア層は、見ているものを買いやすい。テレビで言っているのだからと信じやすく、売り手側もメッセージを効果的に出しています」

 テレビショッピングの利用者は、価格の比較をしなくても放送された商品をそのまま買うのがハッピーな人たちと村山さんはみている。それだけお金に余裕があるともとれるが、村山さんは加齢とともに買い物をする際に商品情報を分析・判断する能力はどんどん衰えていくと指摘。さらに情報の分析・判断そのものが面倒になってくるものだ。

 そうしたなかで、テレビショッピングの番組で、商品は「残り少ないです」と言われると、本当は必要でなくても買ってしまうのだという。衝動買いに近い行動を取りがちだと認識しておいたほうがいいだろう。

 高齢化が急速に進む日本では、テレビショッピング市場の成長はまだまだ続きそうな気配。日本通信販売協会の全国通信販売利用実態調査(18年)によると、今後利用したい媒体としてテレビショッピングは男性の13.6%に対して女性のほうが20.8%と高い。年代別では、女性が50代以降に急に高くなっているほか、男性では70代以降の半数近くが利用したいという。

 エンターテインメントとして楽しみつつも、くれぐれも要らないモノまで買わないように気を付けたいものだ。(本誌・浅井秀樹)

※週刊朝日  2019年9月20日号より抜粋

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  • ウザい司会者とわざとらしいウザいサクラが通販番組の特徴で、あれが素晴らしく胡散臭い。 情弱おばさんには、あれが信頼感になる。
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  • 元々割高設定説
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