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『ザ・ノンフィクション』ひたすらに淡々と“薄情”、誰にもできない仕事「レンタルなんもしない人」

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2019年09月17日 22:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

写真『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

 NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。9月15日の放送は「なんもしないボクを貸し出します 〜『レンタルなんもしない人』の夏〜」。「何でもする」便利屋とは真逆の「何もしない」を仕事にしている「レンタルなんもしない人」。彼は何者で、また、彼に来る依頼とはどのようなものなのか。

あらすじ

 フォロワー約23万人の「レンタルなんもしない人」こと森本祥司、35歳(以下、レンタルさん)。彼のTwitterのプロフィールにはこうある。

「なんもしない人(ぼく)を貸し出します。国分寺駅からの交通費と飲食代等の諸経費だけ(かかれば)ご負担いただきます。飲み食いと、ごくかんたんなうけこたえ以外、なんもできかねます」

 レンタルさんには番組内だけでも、「掃除をついついさぼってしまうので、部屋の掃除をする間、家にいてほしい」「愛想笑いするクセを直したく真顔で話す練習台になってほしい」「最近うまくいっていない彼氏と会うとまた喧嘩しそうなので、今日は一緒に過ごしてほしい」「自分の見た夢の話を聞いてほしい」「自分から体臭がにおっていないか確認してほしい」などの依頼が寄せられる。

レンタルさんの収入を推測

 「レンタルなんもしない人」の事業は基本、交通費や飲食代など、実費のみの支払いになる。中には「おふせ」と書いた銀行封筒に2,000円を入れ、レンタルさんに渡していた人もいたが、皆がそうしてくれるとは限らないだろう。

 果たして、レンタルさんはどう金銭を得ているのか? 番組内では、貯金を切り崩しながら、イラストの仕事をしている妻の稼ぎで生活している、とナレーションで触れていた。一方でレンタルさんは本を出版しており、印税収入があることも紹介された。

 ここではいやらしくレンタルさんの印税額を推測してみたい。まず、「本を出せば儲かる」自体は大きな誤解だ。世の中の9割の本は初回の印刷部数もさばけず売れ残る。このような状況ではさっぱり儲からない。しかし、レンタルさんのTwitterを見ると、出版した3冊の本のうち1冊が発売3日で3刷(1回の印刷じゃ売れに売れて追い付かず、3回刷った)と紹介されていた。

 なお、印税率10%(※)の本体価格1,000円の本が1万冊売れたら、著者には1,000円×10%×10,000冊=100万円が入る。3日で3刷にもなった本なら1万冊は刷っているはずだ。これが10倍、10万冊売れれば印税も1000万円だ。ただし、「漫画以外の本が10万冊売れる」ことは激レアと言っていいだろう。

 印税が著者に入るのは出版社によって異なり、結構先になるケースもある。Amazonを見る限りレンタルさんの本はすべて今年の4月以降から出されているため、「貯金を切り崩しながら妻のイラストの仕事で食べている」も事実なのだろうが、印税が今まさに入ろうとしているのも事実だろう。

 こうして計算してみたのは「レンタルさん、ああ見えて稼いでやがるぜ」という揶揄の意味ではまったくない。直接の利用者から金を取らずしても稼げるのはすごいことだ。これが「レンタルさん」を認定資格制度にして、半年通う週1のスクールを開講し、月額制のオンラインサロンを開いて、ノウハウをnoteの有料記事で公開して……みたいなことにしたら、一気にフォロワーが離れてしまうだろう。そういう“生臭み”“いやらしさ”がないからウケているのだ。

 ※ちなみに印税率10%は「いい方」だが、フォロワー23万人というレンタルさんの宣伝力を見越し、10%で推測してみた。なお、印刷や流通のコストを抑えられる電子書籍の印税率はもっと高い。

 フォロワー23万人という、ネット界の有名人。やっていることはそこにいるだけであり、資格や経歴は不要――そんなレンタルさんを見て、「よし俺も」「私も」という2匹目以降のどじょうを狙う第2、第3のレンタルさんも今Twitter上に多数いると番組で紹介されていた。

番組内でレンタルさんをレンタルし、自分の夢日記をレンタルさんに読ませた26歳女性「よもぎ」も自身を「レンタル話を聞く人」として売り出し中だ。ただ、よもぎをレンタルした男性客は「頭にゴミがついてるよ」と、よもぎの髪に触れてみせた。あくまで私個人は、そこに男性客の「触れたい」という意図を感じてしまった。若い女性が男性相手に「レンタルさん」的仕事をすると、大なり小なりこの要素はつきまといそうだ。

 本家のレンタルさんは35歳の男性。中年太りと無縁の、すらっと細身で、清潔感のある青年だ。35という年齢もいい。25歳の男性なら、まだ自然に活力がほとばしるので「何もしない」仕事内容とマッチしないし、またこれがもっと年齢が上になると、容貌的にはどうしても衰えるだろうし、利用者側が気軽に呼べなかったり、気を使って楽しくなくなってしまうだろう。

 またレンタルさんの希少性は、とにかく“雰囲気”だ。男性がつい陥りがちな「俺は俺は」のアクや押しの強さはなく、一方、そうではない男性が抱く「どうせ俺なんて」といういじけた感じもない。レンタルさんはフラットなのだ。その平坦さと、なにもしないというサービスが合致しているように思う。

 しかし、番組が進むほどレンタルさんは意外と野心の人であることがわかってくる。レンタルさんは「それを売りにしたくないが、たぶん(自分は)発達障害なんだと思う」 と話しており、大阪大学大学院卒と勉強はできたが文化祭などの行事はさっぱり役に立たず、その後就職しても職を転々とする。みんなができる普通のことが自分にはできなかったという強いコンプレックスを抱えていて、コピーライターや構成作家の塾に通ったりと模索を続ける。妻に出した昔の手紙では「絶対世に出たいですね」と切実な思いを綴っている。

感情や野心が見えず、ひたすらに淡々と薄情

 レンタルさんの不思議なところは、そのかなりギラギラとした野心が見た目や雰囲気に驚くほど出ないところだ。見た目に野心が出ていたら、女性は「家で掃除する様子を見ていてほしい」なんて気軽に自宅に呼べないだろう。また、番組で見る限りレンタルさんが「うんざりしてそう」「退屈そう」な様子は見えなかったし、一方で「前のめり」な様子も一切なかった。「見た夢の話を延々と聞かされる」という地獄のような依頼すら淡々と受けていた。

 さらに、レンタルさんはレンタルなんもしない人の仕事が軌道に乗り「世に出る」ことに成功すると、家庭よりも仕事を優先したいと、妻と幼い子どものいる家から“淡々と”出ていってしまう。この薄情な行いは、自身のイメージを損なう大打撃のようにも思えるが、一方でそれを隠さずTwitterでつぶやき、それでも依頼は途絶えない。「薄情なことをしている自覚はあるが、それが何か?」という居直りではなく、ただ淡々と薄情なのだ。これはなかなかできることではない。

 レンタルさんは今、「自分の自然な状態」と「職業」が合致していて、さらにそれが受け入れられているというとんでもなく幸福な状況だ。まさに天職だが、レンタルさんの見た目の小ぎれいさと、“淡々と”を貫ける独特な考え方に依るところが大きい。やっていることは何もしないことと簡単そうに見えて、なかなかこれはほかの人には真似できないだろう。

 次回のザ・ノンフィクションは『半グレをつくった男 〜償いの日々…そして結婚〜』。最凶の半グレ集団「怒羅権(ドラゴン)」の創設メンバー汪楠(ワン・ナン)は現在受刑者や出所者を支援する活動を行っている。改心のきっかけと活動の日々を追う。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

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