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息子を失ったある家族の出来事 亡くなった家族のApple IDやGoogleアカウントは引き継げるか

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2019年09月18日 12:12  ITmedia NEWS

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 遺族にとってもかけがえのないデータがロックのかかった故人のスマートフォンやクラウドサービスに残されているとき、残された側は何ができるのだろうか? 突然の不幸で子どもを失ったある夫婦は、悲しみの中、子どもの作品を守りたいとサポートに訴えた。その結果、故人のApple IDを引き継ぐことができたという――。



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●亡き息子がiCloudに残した作品を守りたい



 2019年の夏、都内で一人暮らしをしている20代の男性が自室で突然死した。



 警察によると他者が侵入した形跡はなく、ベッドでうつぶせになっていた男性の胸にはiPhoneの跡がくっきりついていたという。事件性はなし。実況見分後、そのiPhoneは財布などの所持品とともに両親のAさん夫婦に渡された。



 国の捜査機関であってもiPhoneのロックを解除する確実な手だてはなく、事件性がない今回のようなケースでは外部機関が持つ特殊技術に頼れる可能性はゼロといっていい。IT業界に長らく身を置き、iPhoneのセキュリティ事情も理解している両親は、戻された息子のiPhoneが手つかずであることに察しがついていた。そして、パスワードを知らない自分たちがロックを解除できないことも分かっていた。



 人に見られたくないデータは誰にでもある。ましてや自分たちの息子が触られるのを嫌がる領域はなんとなく想像がつく。そこは永遠に知らないままでとどめたい。しかし、息子は趣味の域を超えて写真や音楽を使った創作活動に取り組んでいた。その作品のことが気掛かりだった。



 息子が日頃からiCloudの有料プランに契約し、iPhoneのバックアップを丸ごとiCloudに保存していたのは知っている。おそらくはそこに作品が保管されているはずだ。本人が死亡して契約が切れたら、クラウド上のデータも失われてしまうのではないだろうか? 銀行口座の凍結やクレジットカードの停止はすでに済ませているが、よくよく考えてみると、クレジットカードはiCloudの自動引き落とし先になっていたはず。支払いが滞ったら、無料で使える5GB分を超える領域はどうなってしまうのか……?



 そう思い至ってAさんが行動に移したのは、息子の死から二週間後。通信キャリアに連絡してSIMを解約した翌日のこと。電話の先はAppleのサポートだった。



 一般に、通信キャリアは端末の内部には干渉しない。一部の例外を除いて対応してくれるのは初期化までだ。端末ロックの解除となると、スマホに対応しているデータ復旧サービスに持ち込む手もあるが、必ず解除できるわけではない。すでにiPhoneのロック解除を諦め、iCloudに保存されたデータに照準を絞っていたAさんは、Appleサポート以外の選択肢が思い浮かばなかったという。



●相続人の総意を示してApple IDの移行を実現



 「亡くなった息子のiCloudにアクセスしたいのですが……」



 マニュアルが用意されているような質問ではなかったが、必死に事情を説明すると電話の向こうのスタッフにも熱意が伝わり、一緒に手だてを考えてくれることになった。



 2日後、社内の専門部署の確認を経て、遺族には3つの選択肢があることを告げられる。



(1)Apple IDを無効にする。復旧は不可能



(2)Apple IDを削除する



(3)Apple IDを停止せず移行。知的財産としてアカウントを相続する



 Aさんの希望に沿うのは(3)になる。ただし、iCloudの中身は移行後にしか確認できず、5GB以上のデータが残っているか保証はできないという。しかも(3)の手続きには3カ月から6カ月かかるとのこと。だが、これに賭ける他ない。



 事を進めるには、Apple IDの持ち主が本当に亡くなっていることや依頼者が相続人であること、相続人の総意であることなどを証明する必要がある。具体的には公的な死亡証明書や相続人全員の戸籍謄本などで身元を証明し、アカウントを移行する場合は相続人全員の同意書や印鑑証明で相続人の総意を形にして提出しなければならない。Aさんは10日程度で全書類をそろえて、Appleが指定したページにアップロードした。



 すると、想定よりもずっと早く、申請から半月ほどでApple ID変更の手続き完了メールが届いた。次に、Appleサポートと密に連絡を取りながら、「iCloudにサインイン」ページにアクセスし、ひも付いているiPhoneやiPad、MacBookなどのアカウント設定をリセットした。息子が亡くなるまで使っていたiPhoneはそのまま残しておきたかったので、前に使っていた古いiPhone上に、iCloudのバックアップデータをリストアした。結果的に、息子が亡くなる直前のiPhoneの状態がそこに再現されることになった。



 手続きの過程で、息子はiCloudの最大容量となる2TBプランを契約していることが分かった。その中身にアクセスしてみると、思い描いた通り、作品の全てが整理されて置かれていた。クレジットカードの停止から1カ月しかたっていなかったこともあり、完全な状態で残されていたようだ。取り急ぎiTunesカードを購入して1カ月分のiCloud料金を支払った。



 こうしてAさんは息子のApple IDとiCloudを引き継ぐことに成功した。データを残せる可能性に賭けて、粘り強く手続きを進めたAさんたちの努力、故人が端末外のクラウド環境にデータをバックアップしていたことなど、さまざまなポジティブ要素が加わっての成功だった。Aさんは「Appleのサポートの方々が私の事情を理解し、継続して親身にサポートしてくださったおかげです」と語る。



●Apple IDやGoogleアカウント、Microsoftアカウントは相続できる?



 Aさんの出来事を踏まえつつ、一般にApple IDは相続できるといえるのか。



 Appleのサポートページにある「死亡した家族のAppleアカウントへのアクセスをリクエストする方法」には、「Appleでは、故人のデバイスやiCloudに保存されている個人情報にアクセスするお手伝いをする前に、最近親者の方にお願いして、亡くなられたお客さまの個人情報を相続する権利を持つ人を指名した裁判所命令を入手していただいております」とあり、Aさんのケースとは多少の差異がある。



 今回の件を踏まえてアップル広報に確認したところ、「弊社からは回答できることがございません」ということだった。筆者は過去にも何度か質問を同社に送っているが、相続関連の質問には意識的に明言を避けている印象を持っている。遺族には個別に対応しているものの、アカウントの相続可能性を広く告知することには消極的なようだ。悪用を恐れてのことなのかもしれない。



 ともかく、分かりやすい相続ツールのようなものを設ける考えは今のところはないようだ。最短であり正道といえるのは、サポート窓口に個別相談することといえる。



 では、他の主要ITサービスのアカウント相続対応はどうなっているのだろうか。



 Googleアカウントはアカウント自体を他者に引き継ぐことは想定していない。ただし、一定期間ログインがないときにアカウントの消去や指定した相手へのデータへのアクセス権などが託せる「Googleアカウント無効化管理ツール」というツールを用意しているので、アカウントの持ち主が事前に備えておくことは可能だ。



 また、故人のアカウントを閉鎖したり、アカウントに残ったデータや資金などを受け取ったりするためのリクエストページもある。これらを活用することが入り口になる。



 リクエストページに書かれた言葉が、死亡時における現状とGoogleのスタンスを端的に示している。



 「多くの方々がご自身のオンラインアカウントの管理方法について明確な指示を残さないままお亡くなりになっています。Googleでは、ご家族や代理人の方と連絡を取って、適切であると判断した場合には、故人のアカウントを閉鎖します(以下略)」



 Microsoftアカウントも相続は非対応になる。日本マイクロソフトによると、相続を含めたユーザー死亡時の問い合わせはほとんど届いていないという。日本だけでなくアジア全体でも同様とのことだ。



 このあたりはアカウントの活用拠点の違いがあるのかもしれない(スマホは端末のロックを生体認証やパスワード以外で突破するのは非常に難しいが、PCは複数の方法が残されていることが多い)。



 いずれにしろ、遺族がノーヒントの状態から、アカウントを相続したり、ひも付けられたデータを取得したりするのは相当難しいことが分かる。



 これに対し、本人が普段から手を打っておくことはとてもたやすい。家族が求めるようなデータの置き場所を整理して、手の込んだ手続きを経なくても手に入るようにすればいいだけだ。見られたくないデータはそこから遠ざければ名誉が守れる安心感も得られる。



 Apple IDの引き継ぎ作業を終えたAさんはこう話していた。



 「どんなに健康でも、どんなに若くても明日のことは分かりません。自分にもしものことがあったとき、スマホの中をどの範囲で見せてよいのかを家族に知らせると同時に、スマホのパスコードを知らせておくことをお勧めします。わが家では息子が亡くなった後、家族同士でパスコードを教え合いました」


このニュースに関するつぶやき

  • 死んだらアカウントを抹消してくれ!
    • イイネ!0
    • コメント 0件
  • この両親とAppleのやったこと、アカウントの相続が出来るということは素晴らしい事ですが、亡くなった方のデータは「個人が天国に持って行った」諦めて執着しないっていうのも大事な事だと思います
    • イイネ!27
    • コメント 4件

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