あなたは大丈夫? 住宅ローンが返済できずに老後破産に陥るケースと予防策

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2019年09月19日 07:02  マイナビニュース

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老後は年金以外に2000万円が必要……そんなに準備できるのか、不安に感じている人は多いはず。しかし、老後資金の不足以上に老後破産のリスクになりがちなのが、「住宅ローン」だと気づいている人はどれだけいるでしょうか?

住宅ローンが返済できず、老後破産寸前の状態となった人たちを多く支援してきた高橋愛子さん(NPO法人住宅ローン問題支援ネット 代表理事)に、住宅ローンがからむ老後破産の恐ろしさと、その対策について聞きました。

○住宅ローンがからむ老後破産、最も多いケースとは

――住宅ローンが返済できず、老後破産の危機にある高齢者がたくさん相談に来られるということですが、どのような状況の方が多いですか?

バブル時、もしくはバブル直後に住宅を購入して、その後住宅ローンの返済が難しくなったという団塊世代の方が非常に多いです。

住宅時価の大幅な下落に加え、当時の金利4〜5%のままだったり、ゆとりローン※を組んでいたりして、借り換えもせず返済してきた結果、定年後も残債が自宅の時価を上回る、いわゆる「オーバーローン状態」になってしまったケースが目立ちます。

また定年後、毎月の返済はできているものの、年に2回設定しているボーナス払いで躓いてしまう方も多いです。審査条件が通れば高齢でも借り換えができますし、ボーナス払い分を毎月の返済にならすこともできるのですが、既に手遅れという方もいらっしゃいます。

不当に高額な物件を、無理にローンを組んで購入せざるを得なかったという時代背景があるので、これらのケースは自業自得とは言い切れないと考えています。

※1992年〜2000年に出された旧住宅金融公庫の住宅ローン商品。5〜10年のゆとり期間中は返済金額を抑え、期間終了後にその分を上乗せして返済するという仕組みが特徴。

――老後破産に住宅ローンの問題がからむと、どのような点が悲惨なのでしょうか?

賃貸物件であれば、家賃が払えなくなっても、支払いを止め、家を出て終わりです。しかし持ち家の場合、ローンの返済が厳しい、借り換えもできない、貸せないし売るに売れないといった状況になったとき、身動きがとれません。

定年後、年金だけでは住宅ローンが返済できないとなると、仕事を続けなくてはいけなくなりますが、年齢や身体的な理由によって仕事を見つけるのが難しく、経済的に厳しい状況に追い込まれる方も多いです。

また、住宅が売れたり、貸せたりしたとしても、この世代の方は持ち家志向が強いので、家を出ることが非常につらいと感じるようです。相談者の方に「引っ越さなければならないのなら、私はここで死ぬ!」と言われたことは、何度もあります。

――住宅ローンの組み方や住宅の買い方によって、こんなに苦しい状況になるとは想像もできませんでした

住宅ローンって「自分は大丈夫だろう」と思いがちです。しかし、組んでいる額が何千万円という単位なので、少し歯車が狂っただけで、簡単に何百万円単位のオーバーローン状態になってしまいます。

目の前の返済はできていても、転職や妊娠・出産、病気などのライフスタイルの変化によって返済が難しくなる状況は誰にでも訪れる可能性があります。そんなとき、軌道修正ができるような住宅の買い方・ローンの組み方を考える必要があると思います。
○20〜30代が注意すべき住宅ローン破綻のケースは

――現在起きている住宅ローン破綻のケースでは、時代背景が大きく影響しているとのことでした。20〜30代の私たちが、将来的に問題となる住宅ローン破綻のケースとしては、どのようなものが考えられますか?

低金利だからと無理してローンを組んだ人が陥る「低金利破綻」の増加が考えられます。
3年前くらいから住宅ローンの低金利は続いている一方、不動産バブルで住宅価格は高騰しているので、無理にフルローンを組んで住宅を購入した人の破綻が増えるのではないでしょうか。

また「ペアローン破綻」も増えると思います。夫と妻がそれぞれローンを組んで、住宅を共有持ち分にするという方法で、住宅ローン減税などのメリットもあるのですが、無理にローンを組んだ場合、夫婦どちらかの収入が病気や転職などで下がると、家計は厳しくなります。

さらに離婚となったとき、オーバーローン状態で家が売れないケースでは、トラブルとなりがちです。このローンはお互いを連帯保証しているので、どちらかが抜けることはできませんし、一方が支払えなくなった場合、負債分はもう一方が返済する必要が出てきます。問題の解決が難しくなってくるのです。
○老後破産・住宅ローン破綻に陥らないためにできること

――このような事態を防ぐためには、どうしたらよいでしょうか?

とてもシンプルなのですが、適正な価格の物件を選び、2割ほど自己資金を入れて、住宅ローンを8割くらいで組んでおけば、基本的に破綻しないと思います。物件価格が住宅ローンよりも高くなるので、たとえローンが返済できない事態になったとしても、資産オーバーの状態で、負債を残さずに対策が打てるからです。

一方、フルローンを組んでしまうと、物件の時価より住宅ローンの負債額が上回るオーバーローン状態になりがちです。

例えば新築物件は、物件価格に販売業者の利益等が上乗せされていますし、1日でも住んでしまえば中古物件になるので、購入したとたんに価値が下がることがほとんどです。これをフルローンで購入すると、その時点でオーバーローン状態となります。

しかし、たとえ自己資金を入れて無理なくローンを組んでいたとしても、物件の買い方を間違えると、物件の時価の下落率が大きくなり、負債を抱えてしまいます。

――住宅の選び方・ローンの組み方を見極める必要があるとのことですが、住宅を購入する際、どのようなことに気を付けたらいいでしょうか?

信頼できる不動産屋さんから話を聞いたり、周辺の相場を調べたりして、物件価格が不当に高くないか調べてから購入するようにしましょう。「角部屋」「日当たり良好」「駅近」というポイントがあるだけでも、物件価格は下がりにくくなります。

――住宅ローンの組み方についてはいかがですか?

月々の収入に対して、返済額の割合(返済比率)が25%以内に収まるようローンを組めると安心でしょう。

一般的に、返済比率は35%以内であることが望ましいとされていますが、この割合だと何かあったときに、家計が苦しくなると思います。

住宅にかかる費用はローンだけではありません。固定資産税のほか、マンションであれば管理費や修繕積立費、戸建てでも修繕費の備えが必要です。こういった費用も見込んで、返済比率を考えましょう。

――情報を集めたり、知識をつけたりすることも大事ですね

不動産屋さんの中には、フルローンで組めるだけ組んで「こんな物件も買えますよ」と高額な物件を勧めてくる方もいらっしゃいます。

「賃貸物件の賃料よりも、毎月の返済額の方が安い」「賃貸は掛け捨て、持ち家は資産になる」「金利が安い」「消費税が上がる前に」……こういった言葉に惑わされず、冷静に考えましょう。

ファイナンシャルプランナーにライフプランを組んでもらい、アドバイスをもらうのも手だと思います。

家を買うタイミングって、結婚や出産など、基本的には幸せな時期ですよね。そういう前向きな気持ちを持っている時期に、人は勢いで物事を進めてしまいがちです。少しの勉強や相談で、住宅ローンのトラブルは減らせると思いますよ。(横山茉紀)

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