MotoGP:Moto3初優勝の鈴木竜生が選んだ世界を目指す独自のルート

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2019年09月19日 17:51  AUTOSPORT web

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パオロ・シモンチェリと抱き合う鈴木竜生
MotoGP第13戦サンマリノ&リビエラ・ディ・リミニGPのMoto3クラスで鈴木竜生がグランプリ初優勝を達成した。鈴木は1997年生まれの21歳。グランプリレギュラー参戦5シーズン目、84戦目の初優勝だった。

 2019年シーズンのMoto3クラスには5人の日本人ライダーが参戦している。鈴木を除く、鳥羽海渡、佐々木歩夢、真崎一輝、小椋藍の4人はいずれも2000年生まれの同級生(小椋のみ2001年1月生まれ)で、74ダイジロウ、ミニバイクレースを同世代のライバルとして走り、アジア・タレントカップから、Moto3ジュニア世界選手権、レッドブルMotoGPルーキーズカップを経て、世界グランプリフル参戦を果たしている。

 鳥羽、佐々木、真崎、小椋より3歳年上の鈴木は4歳のときにポケバイでレースを始めた。レース好きの父親の影響を受けて始めたレース活動だったが、家から近いサーキットに毎日練習に通う生活はあまり好きではなかったそうだ。小学4年生までポケバイレースに参戦した後は、中学3年生までミニバイクレースに参戦し、頭角を現した。

 そして、ロードレースへのステップアップを控えた中学3年生のときに、世界チャンピオンのケニー・ロバーツと原田哲也に出会ったことが、鈴木のレースへの取り組みを変える。その年の暮れには、アメリカのケニーランチでのトレーニングに参加。高校生になった2013年にはロードレース地方選手権のもてぎ選手権、筑波選手権、SUGO選手権のJ-GP3クラスに参戦。もてぎと筑波では佐々木がライバルだった。

 そして、2013年シーズン後半にはスペイン選手権(CEV)の終盤2戦にスポット参戦すると、2014年からCEVのMoto3クラスにレギュラー参戦する。2014年はアジア・タレントカップが始まった年で、鳥羽と佐々木はアジアから世界をめざす道を選んだが、鈴木はスペインから世界をめざす独自のルートを選択した。

 2014年のCEVのMoto3は、GP仕様のファクトリーマシンが参戦を始めたシーズンで、市販レーサーで参戦した鈴木は善戦、2レースでポイントを獲得した。そして、2015年シーズンに向けて、所属していたフランスのCIPチームの世界グランプリMoto3クラスのシートが空き、鈴木は2015年には世界グランプリMoto3クラスにレギュラー参戦のチャンスをつかむ。

■デビュー5年目でつかんだ初優勝
 世界グランプリライダーとなった鈴木が駆ったマシンはインドのマヒンドラだった。ホンダやKTM勢に比べると劣勢のマシンで鈴木は1年目に9ポイントを獲得しランキング28位。2年目の2016年には19ポイントを獲得してランキング27位を得る。

 そして、2017年にはSIC58スクアドラ・コルセに移籍する。このチームは故マルコ・シモンチェリの父親、パオロ・シモンチェリ氏が息子の遺志を継いで立ち上げたチームで、鈴木はホンダのマシンにスイッチした。

 2017年開幕前の冬の時期にはシモンチェリ家に居候したという鈴木は、1年目からチームに溶け込み、パオロ氏との信頼関係を築く。2017年には日本GPの4位を最高位にランキング14位と躍進。2018年もランキング14位を獲得する。和製イタリア人と名乗るほど、チームとイタリアに溶け込んだ鈴木は、Moto3クラスのトップライダーのひとりに成長し、表彰台と勝利まであと一歩に迫った。

 そして、SIC58スクアドラ・コルセで3年目となる2019年シーズン。3戦目のアメリカズGPで鈴木はトップを快走。このレースは惜しくも転倒に終わってしまったが、続くスペインGPでグランプリ初表彰台となる2位に入賞。パオロ氏を歓喜させた。

 しかし、その後のレースでもトップ集団に加わるものの、巻き込まれての転倒や自身のミスによる転倒もあり、なかなか結果につながらないレースが続いた。

 そして、迎えたのがサンマリノ&リビエラ・ディ・リミニGPだった。舞台となるのはミサノ・ワールドサーキット・マルコ・シモンチェリ。マルコ・シモンチェリの名前を冠したサーキットで開催されたチームのホームレースだ。

 初日のフリー走行はあまりフィーリングがよくなかったという鈴木は総合13番手で初日を終える。2日目のフリー走行3回目でも15番手に止まり、フリー走行総合では17番手と予選Q2直接進出を逃した。しかし、予選Q1をトップ通過して臨んだQ2ではトップタイムを記録。グランプリ初ポールポジションを獲得した。

「チームのホームグランプリで初ポールポジションを獲得することができました」と鈴木は予選後にコメントする。

「まずは、がんばってくれたチームに感謝します。今日はFP3でコース上が混雑してちゃんと走ることができず、Q1からの予選となりましたが、Q1をいいタイムで通過し、Q2でもトップタイムをマークすることができました」

「PP獲得はラッキーな面もありますが、マシンが完ぺきな状態ではなく、決勝に向けてまだやらなくてはいけないことがあるので、明日の決勝に向けて少しでも前進できるようにしっかりとデータを分析したいです。今日はまだ予選なので、明日の決勝で同じ結果を残せるようにがんばります」

 そして迎えた決勝レース。鈴木はスタートからレースをリードすると、終始トップ争いを展開する。レース後半を前に一度はトップから下がったものの、ライバルの走りを見極め、終盤に再びトップに立つと、グランプリ初優勝を達成した。

「チームのホームグランプリ、そして、シモンチェリさんの名前がついたサーキットで初優勝を達成できて、本当にうれしいです。初表彰台に立ったスペインGPもうれしかったレースですが、それとは比べられないほど最高の気持ちでした」

「いいスタートが切れて、2位以下にリードを広げたときは逃げられるかと思いました。しかし、自分のミスもあり追い上げられて集団になりました。後半、後ろに下がったときに、前を走るふたりもタイヤがきつそうだったので、とにかく前に出ていこうと決めました。本当に最高のレースになりました。チーム、スタッフ、そして応援してくれたファンに感謝したいです」

 パルクフェルメではパオロ氏と抱き合って勝利を喜び、チームのメンバーはもちろん、大勢のイタリア人から祝福を受けた鈴木。アラゴン、タイの次には、鈴木にとってのもうひとつのホームレースとなる日本GPが控えている。

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