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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第11回】スパ&モンツァでトップスピード不足が大きな足かせに。混戦の中団を抜け出せず

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2019年09月20日 11:51  AUTOSPORT web

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写真小松礼雄チーフレースエンジニア(ハースF1チーム)
小松礼雄チーフレースエンジニア(ハースF1チーム)
 今シーズンで4年目を迎えるハースF1チームと小松礼雄チーフレースエンジニア。これまでタイヤを機能させることに苦労してきたハースF1だが、サマーブレイク明けの第13戦ベルギーGP、第14戦イタリアGPではトップスピード不足という大きな問題にも直面することとなった。またタイトルスポンサーとの契約終了という報道もあり、チームへの影響も気になるところ。小松エンジニアが現場の事情をお伝えします。

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 約1カ月のサマーブレイクが終わり、後半戦が始まりました。サマーブレイクの間は2週間に渡って規則でファクトリーも閉鎖され、仕事のメールを受け取ることもありません。昨年は飛行機に乗りたくなかったのでフランスの田舎に車で旅行に出かけましたが、今年の夏休みは家族で日本に行きました。

 子供たちにとっては夏の日本は初めて。暑くないか少し心配していましたが、まったく大丈夫で元気に遊び回っていました。セミの声、風鈴の音色、浴衣を着ての花火など初めてづくしで大喜びです。あっという間の2週間でしたが、日本を満喫してとても良い気分転換になりました。

 さて、今回は夏休み明けのベルギー、イタリアの2連戦を振り返りたいと思います。まずはベルギーGPですが、スパ・フランコルシャンではタイヤをうまく機能させつつクルマの抵抗を削って直線スピードを稼ぐことの折り合いをつけるのが難しかったです。

 とはいえ予選の手応えはそれほど悪くなくて、ケビン(マグヌッセン)はQ3に進んで10番手(スタートは8番手)でした。ロマン(グロージャン)はケビンとわずか0.059秒差の11番手(スタートは9番手)でQ3進出を逃しましたが、実はロマンのクルマには問題があって、低速コーナーでクルマがうまく動いていませんでした。それがなければ2台揃ってQ3に進めていたはずなので、クルマ自体の競争力としてはまあまあだったと思います。

 決勝レースではロマンが上手くスタート直後の1コーナーの混乱を避けて、6番手までポジションを上げることができました。ピットストップも良く、狙い通りのところでコースに復帰することができましたが、その後にダニエル・リカルド(ルノー)に追いついてからが良くなかったです。ロマンはリカルドよりも1秒以上速いペースで走っていましたが、1コーナー立ち上がりからオールージュを抜けて行く直線区間でルノーを抜くことができず、結果的には40秒ほどタイムロスしてしまいました。

 当初ロマンよりも後ろを走っていたセルジオ・ペレス(レーシングポイント)がどの位置でレースを終えたのかを見れば、その差は一目瞭然です(ペレスは6位、ロマンは13位)。ペレスはロマンを抜いた後、2周くらいでリカルドのことを追い抜き、その後は単独走行で6位に入っています。

 それでも第1スティントでは、ロマンはランド・ノリス(マクラーレン)の後ろでまあまあなペースで走ることができたので、ある意味想像通りのレースペースではありました。第2スティントでリカルドを抜けなかったことがすべてです。

 トップスピードが伸び悩んだせいで、ケビンも第1スティントではペレスをはじめ後続車からポジションを守ることができませんでした。ミディアムタイヤに履き替えた後は、クリーンエアのなかで良いペースで走ることができ、最後は12位でレースを終えました。ロマンとは逆に、ケビンは第1スティントのロスでレースが決まってしまいました。

 2台ともミディアムタイヤに履き替えた後のペースが思いのほか良かったのは収穫でした。金曜日のフリー走行の時点ではペースが悪かったので、レースではなるべくミディアムタイヤを使いたくないと思っていたのですが……。こういう点は、まだウチがレース前にうまく理解できていない部分のひとつで、これから改善していかなければいけません。

■中団は相変わらずの激戦区。トップスピードとトウの影響を受けたモンツァ

 続いてイタリアGPですが、フリー走行から忙しかった週末でした。ウエットコンディションでのフリー走行1回目はインターミディエイトタイヤ(2種類ある雨用タイヤの一つで、コース上の雨量が比較的少ない時に使うモノです)で走り始めましたが、モンツァ用の低ダウンフォース仕様のクルマでは、なかなか安定して走ることが出来ませんでした。

 それでも確認したいことは確認できたので、路面も乾いてきたセッション終了直前にはドライで走ろうと思っていたのですが、ドライバーが2人とも「リスクを取りたくない」と言ったのは少し以外でした。

 というのも、この時点では日曜日のレースが雨で始まるかもしれないという予報だったので、出来ればこの路面状況でドライタイヤを履いてクルマの挙動を把握しておきたかったのです。しかしそこまでドライバーが自信を持てない状況で走らせても、得るものはあまりないですし、最悪の場合は事故にもなりかねないので、走りませんでした。

 フリー走行2回目では雨が降ってくることがわかっていたので、早めにミディアムタイヤで走り出して、それからすぐにソフトタイヤを履いて走行しました。完全なドライコンディションで走ることはあまりできず、途中で赤旗中断もありましたが、それでもレースに向けてのロングランもこなすことができましたし、実りのあるセッションでした。フリー走行3回目はセッションが10分短縮される形となりましたが、それでも予定していたプログラムは終えることが出来たので問題はありません。

 モンツァは直線が長いので、予選ではどれだけトウ(スリップストリーム)の恩恵を受けることができるか、というのが鍵になります。Q1では、コース上に送り出した位置は良かったのですが、ロマンはアタックを止めたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)にコーナーの出口で遭遇してしまい、タイムをロスして16番手でQ1落ちとなってしまいました。

 ケビンはQ1は上手く数台のマシンのスリップストリームを使い、10番手で順調にQ2に進出しました。Q2では前にクルマが1台しかいなかったので、スリップストリームの影響が減り、直線で思ったようにタイムを稼げませんでした。さらに1コーナーでのミスもあり、12番手に終わってしまいました。10番手のライコネンとはコンマ1秒の差だったので、十分にQ3進出は可能だったと思うので残念です。

 そしてトウといえば、Q3で7台がアタックできなかったというのは前代未聞です。第3戦中国GPの予選でも似たようなことがありましたが、あの時アタックできなかったクルマはウチの2台も含めた4台でしたからね。

 Q3では各車がほかのクルマのトウを使おうとして、隊列の先頭になることを避けていました。だから誰が最初に出て行くのかとみんなが見ていたのですが、そんななかでフェラーリが最初に動き出しました。

 ところがフェラーリはトラブルがあったのか、あるいは意図的だったのかはわかりませんが、クルマを出した直後にガレージの前で一旦止まったんです。結果、フェラーリが動き出したことに反応して出て行ったニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)が先頭でコースで出て行くことになりました。

 この時点で残り時間は既にギリギリなんです。しかし、先頭にいることを嫌ってヒュルケンベルグは1コーナーを曲がらず、真っ直ぐ行きました。このため、後ろにいたランス・ストロール(レーシングポイント)が今度は自分が先頭になることを嫌って、かなりスピードを落としました。そうこうしているうちに時間はどんどん無くなっていきます。

 9台が集団となって第2シケイン手前に来た段階で、もうアタックに間に合わないクルマが少なくとも数台出ることは明らかでした。結果、時間内にアタックを開始出来たのはカルロス・サインツJr.(マクラーレン)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)のみ。なんとも観ている方々にとってはアンチクライマックスになってしまいましたね。

 決勝レースの戦略は、2台とも1ストップ作戦でした。ケビンが第1スティントでアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)に追い抜かれたのは仕方ないですが、ペレスを抑えてよくやってくれました。なるべくハードタイヤを履きたくなかったので20周目までソフトタイヤで引っ張ってからミディアムに履き替えました。

 この後のペースは良くて、ペレスがピットインした際には5秒以上の差を築けている予定した。しかしサインツがピットストップした際に右フロントタイヤがちゃんと締まっていないままコース上に出てしまい、ピットストレートでストップ。これでバーチャルセーフティカー(VSC)が出てしまいました。

 ペレスはこのVSCの最中にピットストップを済ませたので、一気にケビンとの差が詰まりました。1度目のリスタートはなんとか持ちこたえましたが、ダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)がコース上に止まったことで2度目のVSCが出て、この際のリスタートで抜かれてしまいました。

 その後はノリスにずっとプレッシャーをかけられて、最終的にはケビンがミスをしてブレーキをロックさせてしまい、ノリスとピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)の2台に抜かれてしまいました。さらにこのロックアップでタイヤを傷めてしまったので、2回目のピットストップをせざるを得なくなり、これでポイント獲得の望みはほぼなくなりました。

 またこの頃から油圧が落ちるトラブルが出ており、様々なことを試しながらなんとか最後まで走ろうとしていたのですが、パワステにも影響が出そうな段階まで油圧が落ちてしまったので、リタイアすることにしました。

 ロマンはスタート直後の1コーナーでガスリーに後ろからぶつけられ、その後はクルマのバランスが非常に悪くなってしまいました。その影響で7周目にアスカリシケインでスピンし、これでタイヤを壊したためピットイン。その後もバランスは改善せず、まったく戦えないまま16位でレースを終えました。

 とにかく、この2戦はトップスピード不足に苦戦しました。今年のクルマにはいくつか弱点がありますが、空力効率もその一つだと思っています。

 次戦シンガポールGPはコースレイアウトの特性上、ストレートスピードを要求されないサーキットなので、その点の不安はありません。それでもウチのクルマは低速コーナーを苦手としているので、どれだけそこでクルマを合わてドライバーに自信を持って走ってもらえるかがカギとなります。

 最後に、先日報道されたリッチ・エナジーとのパートナーシップ終了についてです。ウチのチームは他と少し状況が違っていて、たとえスポンサーがいなくなったとしても、チームオーナー(ジーン・ハース氏)にはスポンサー無しでチームを経営できるだけのお金があるので、今回の一件によってチームの業務に何か影響が出るようなことはありません。2016年のチーム創設時からこの点は変わっていないですし、そういうところには助けられています。ですから今シーズン終盤に投入が予定されているパーツも予定どおり進んでいます。

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