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脇役だった製品がいきなり売れ筋に PC用品コーナーの裏事情

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2019年09月22日 07:12  ITmedia PC USER

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 PCの周辺機器やアクセサリー製品は、お世辞にも利益率が高くないことで有名だ。アクセサリー類に関してはハードウェアのような絶望的な低粗利ではないものの、お隣の文具業界などと比較すると「普通は原価にこれくらいのマージンを乗せる」という常識がひっくり返るような薄利で製品が卸されていたりする。



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 実際には、卸業者を挟まずに家電量販店と直接取引を行うことで、きちんと利益は出る構造になっているのだが、他業界からPC用品メーカーに転職してきた人があまりの原価率の高さに驚き、将来性を危ぶんで早々に会社を去る事例もあったりするので笑えない。



 もっとも、低粗利でも回る体制故、他業界から仕入れた製品に標準的な利益を乗せただけなのに、元の業界よりも価格競争力のある製品が出来上がり、それがユーザーに受けたりするので面白い。今回は、PC用品コーナーおよびそのメーカーによる「薄利ビジネス」の事例を見ていこう。



●他業界から仕入れて、他業界よりも薄利で売るビジネス



 月に何個、週に何個のペースで売れれば「売れ筋」と呼べるかは、その業界や品種によって異なる。他業界で回転率がイマイチという扱いの製品でも、どの品種も回転率が低いPC用品コーナーでは、高利益率・高単価なオイシイ商材と見なされることもしばしばだ。



 典型例といえるのが「電源タップ」。電源タップが多く陳列されているのは主に照明器具のコーナーだが、照明器具本体に比べると低単価で、かつ電球と違って定期的なリピートがあるわけでもなく、あくまでも“ついで買い”の域を出ない脇役という扱いだ。



 しかしこれをPC用品コーナーに持っていくと、そこそこ高単価でありながら回転率のよい商材という扱いになる。PCや周辺機器は売れれば売れるほど電源が必要になるため、商材としての相性もよい。



 さらに照明器具コーナーはメーカー間の競争が少なく、やや多めに利益を乗せていることが多い。それにより、メーカーが少し利益を削れば価格競争力が生まれ、かつ(PC用品コーナーとしては)高い利益率を確保できる優良製品に化ける。近年、PC用品コーナーで電源タップ売り場が面積を増やしているのは、こうした事情も関係している。



 また現在ではやや下火になったが、かつては電源タップなどとは比較にならないほど、値段を下げるとバカ売れする他業界発の製品があった。椅子、いわゆる「OAチェア」だ。



 デザイナーズブランドの高級チェアなどは除くとして、チェアは一般的に、テーブルや学習デスクのおまけとして扱われることが多く、特に専門店ともなると、単体で値引き販売されることは少なかった。つまりユーザーにとっては、チェア単体でお買い得な製品というのは、なかなか入手しづらい状況だった。



 そのため、家電量販店のPC用品コーナーで、PCラックのセールと称して隣にチェアを並べると、ラックは見向きもされずにチェアだけがバカ売れしていた。PC用品と比べると単価も高いため、特売のチラシに載った週には、PC用品コーナーの売り上げの大部分をPCとあまり関係ないチェアが占めるという、おかしな現象が発生していたほどだ。



 近年はネットの普及でチェアが配送料込みで手軽に買えるようになったこと、ノートPCの普及によってPCラックの市場がほぼ壊滅し、PC用品コーナーで売る名目が存在しなくなったため下火になったが(現在この商法はホームセンターでよくみられる)、これも先の電源タップと同様、他業界発の製品も売り方ひとつでPC用品コーナーでは稼ぎ頭になるという事例に他ならない。



●薄利を生かして隣の売り場に殴り込み?



 ここまで紹介した2つとは逆に、他の売り場でシェアを独占している製品に戦略製品を薄利でぶつけ、PC用品メーカーが参入しようとした例がある。インクジェット用紙がそれだ。



 インクジェット用紙はPC用品のようにみえるが、大型の家電量販店では、紙やインク類の専門コーナーで扱われている。これらの紙コーナーはプリンタ本体メーカーを中心とした専業メーカーががっちりと棚を確保しており、PC用品メーカーにとっては長年、近くて遠い存在だった。



 ところがある時期、PC用品メーカー発のインクジェット用紙が、これら紙コーナーに大量に導入され、ある家電量販店では専業メーカーの定番製品をもう少しでひっくり返すところまでシェアを伸ばしたことがあった。



 これはPC用品メーカーが、専業メーカー製のインクジェット用紙が薄利なのに目を付け、家電量販店が高利益率で売れる戦略製品を投入したのが原因だ。自社の利益をギリギリまで削り、その分、家電量販店のマージン幅が広くなる仕入価格を設定し、「定番をこの製品に入れ替えるだけで利益率がアップしますよ」と持ちかけたわけである。



 面白いのは、そのPC用品メーカーがぶつけたインクジェット用紙が、既に紙コーナーで売られている専業メーカーの製品のOEMだったことだ。専業メーカーの製品にぶつける目的でインクジェット用紙の仕入元を探していたところ、よりによってその専業メーカーのOEM部隊と商談が成立し、中身が同じ製品を投入可能になった、というわけである。



 もちろん専業メーカーのOEM部隊は、まさか卸した製品が自社製品と同じ売り場に、しかも価格を破壊する目的で投入されるとは想定しておらず、専業メーカーの社内は大混乱に陥った。なにせ同じ品質で卸価格がそれ以下と来ては、出荷を続ければ定番をひっくり返されるのは必至だ。最終的にそのPC用品メーカーへのOEM供給は、当初の契約数量をもって打ち切られるに至った。



 しかしながら紙コーナーの側からは、せっかく利益率の高い製品を持ってきてくれたのにOEM元に妨害された気の毒なメーカーとして同情され、そのPC用品メーカーはそれ以降、ほそぼそとながら関連製品を納入するようになったというから面白い。「本丸」を落とすことには失敗したものの、販売店からの信頼を得ることには成功したというわけだ。



 以上のように、売り場が違えば常識もまた異なっており、ある売り場では脇役だった商材が別の売り場ではスポットライトを浴びたり、また低粗利であることを生かして別の売り場へ参入できる可能性があったりというのは、弱者ならではの戦法には違いないが、ビジネス的には示唆に富んでいる。もっとも、同様のケースは恐らくどの業界でも起こっており、これも氷山の一角なのだろう。



連載:牧ノブユキのワークアラウンド(PC・スマホの周辺機器やアクセサリーー業界の裏話をお届けします)


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