『こまどりの詩』作者&1億円プレーヤーの美容師が語る、美容界の“理想と現実”

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2019年09月23日 08:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

桜沢エリカ(56)、MISS ESSENCE MAYUMI(59) 撮影/矢島泰輔

 老舗「朝倉椿美容室」を舞台に、四代にわたる女性美容師一家が日々奮闘する姿を描いた漫画『こまどりの詩』。桜沢エリカが華麗に描くその世界を、現実世界で切り開いてきたのが“日本一個人売り上げが多い美容師”と話題のMISS ESSENCE MAYUMIだ。

 今回初めて会ったふたりが、美容師の世界の奥深さ、髪に悩む女性へのアドバイスなど、多くを語ってくれた。

  ◆      ◆   ◆

きっかけは面長というコンプレックス

桜沢 初めまして。今日は、“日本一個人売り上げが多い美容師”として話題のMAYUMI先生にお会いできるのを楽しみにしていました。

MISS ESSENCE MAYUMI(以下MA) こちらこそ、桜沢先生の『こまどりの詩』を読ませていただき、美容師の世界をこんなに素敵に描いてくださっていることに大感激しまして。

桜沢 ありがとうございます。長年漫画を描いていますが、実は美容師さんを描くのは今回が初めてで。MAYUMI先生は、美容師であり、美容室のオーナーさんでもいらっしゃるんですよね?

MA 名古屋と東京の青山で「MISS ESSENCE」という美容室を経営しています。この秋で60歳、美容師歴は40年になりますね。

桜沢 奇跡の60歳ですね!美容師になろうと思ったきっかけは?

MA 叔父が美容室を経営していて、幼少時から美容室には馴染みがあったんです。でも、当時は美容師になろうとはまったく思っていなくて。

桜沢 それがどうして?

MA すべては「顔が長い」というコンプレックスからなんです。「髪型で変わるかもしれない」と思い、中学生のころには住んでいた愛知県から、毎月青山や原宿の美容室に通うようになって。

桜沢 新幹線で!

MA 親には参考書を買いに行くとウソをついて(笑)。でも満足いくことはなくて、毎月、ガッカリして帰るの繰り返しでした。

寝る間も惜しんで研究した20代

MA 高3になって進路を決めるとき、親の意向に従いたくなくて、当時はロンドンにいた叔父のところに家出同然で行ったんです。そのとき、世界的な美容師だったヴィダル・サスーンの店にカットに行きまして。

桜沢 ヴィダル・サスーン! 「ハサミ一つで世界を変えた」と言われる、神様のような美容師ですね。実は『こまどりの詩』に出てくるジェム・サンダースは、彼をイメージしているんです。

MA すぐわかりました(笑)。で、お店の一番上の方にカットしていただいたのですが、そのときに気づいてしまったんです。「あ、私の後頭部は欧米人と違って絶壁なんだ」って。

桜沢 仕上がりが違ったんですね。

MA そう、それでその場で受付にあったスクールに申し込んで、そこからはもうカットの研究に夢中になって。

桜沢 カットのどこが面白かったんですか?

MA 空中展開で、落ちた位置でデザインが完成されるところですね。そして、どうしたらヴィダルのデザインを日本人に似合わせることができるのか、ひたすら研究して、20代は1日に20時間カットの練習をしたことも。

桜沢 そうなんですね!? うわー、『こまどりの詩』には特にモデルなどはいないのですが、まさか日本の女性美容師さんで、ここまでヴィダル・サスーンに影響されている方がいるなんて思いもしませんでした!

MA 私も、作品が私の人生にリンクしていることに驚きました。作中で、平成元年に椿さんが青山に「朝倉椿美容室」をオープンさせますが、私も平成元年に独立して、「MISS ESSENCE」を出店したんですよ。あと最初のほうで、藤子(とうこ)さんが、「朝倉椿美容室は基本エレガンスな店」と言っていましたよね?

桜沢 そうです。

MA 私も本当は前衛的なスタイルが得意で好きなんですが、仕事にあたっては、フェミニンでエレガンスを大事にしています。椿さんや藤子さんとは気が合いそう(笑)。

桜沢 うーん、MAYUMI先生は、あまりにも作品にピッタリで。これはもう、この対談とは別に取材させていただかないと(笑)!

日本人の悩みにフォーカスした、「MAYUMI CUT」

MA 桜沢先生の漫画の登場人物は、みなさん素敵な髪型をしているのですが、どうやって研究されているのですか?

桜沢 私は、特に何かを参考にすることはないんです。でもそういえば過去に、若い女性たちが私の漫画を美容室に持っていって「これと同じ髪型にしてください」と注文する、ってことがよくあったようで、それがきっかけでファッション誌で特集されたことがありました。

MA わかります。実際に真似したくなるくらい素敵ですね。

桜沢 私自身の髪型は、カリスマ美容師ブームに翻弄されてきたといっても過言ではなくて(笑)。有名な方に切っていただいたこともありましたが、でも正直、それがすべて満足だったかというと……。

MA 男性美容師さんは、パフォーマンス的に見栄えもいいので、髪を「切る」というよりも「削ぐ」ことが多いですね。でも日本人のキューティクルは反りかえっているので、削ぐとバサバサになって疲れて見えてしまうんですよ。

桜沢 MAYUMI先生のカットは違うんですか?

MA 私がロンドンで学んできた結果、考案した「MAYUMI CUT」は、削がずに毛先まで太さを保って切るのでツヤが保てるんです。あと、前から見えるところは全部、前髪としてデザインして流線形になるように細かく切っていきます。なので日本人特有の悩みである絶壁をカバーしたり、小顔に見せることができます。

桜沢 研究し尽くされているんですね。MAYUMI先生は先ほどお顔が長いのが悩みだったとおっしゃっていましたが、全然長くない……。

MA そう見せられるのが「MAYUMI CUT」(笑)。

女性の気持ちがわかる美容師を増やしたい

ーー『こまどりの詩』は女性美容師の物語ですが、MAYUMI先生は、“世界でもまれな1億円プレーヤーの女性美容師”と言われています。

MA 美容師業界は今も昔も圧倒的に男性社会なんです。女性は辞めてしまうことも多くて。でも私は、女性の気持ちがわかる美容師の人口をとにかく増やしたいので、女性の美容師にもっと働き続けてほしいと願っているんです。私自身も年をとって初めて、加齢にともなう女性の髪の悩みが痛切にわかるようになりましたし。

桜沢 白髪が増える、ボリュームやツヤがなくなるなど、加齢によって悩みが膨大に増えますよね。

MA そうです。エイジングによる変化に悩む女性は多いのに、現場の美容師は若い男性ばかり。大きなギャップがあるんです。

桜沢 確かに。MAYUMI先生のようなベテランの女性美容師さんって少ないかも。

MA 私は2018年は約3800人のお客様をカットしました。

桜沢 そんなにたくさん!今、MAYUMI先生にカットをお願いすると、おいくらなんですか?

MA 3万円です。私はいずれはさらに高額にしても、その価値があると支持される美容師を目指しています。美容師業界は今、切羽詰まっています。低賃金で、社会的地位も高くない美容師の世界を変えていきたい。今は、これからを担う美容師を育てることにも注力しています。美容師という仕事にワクワクしてほしい。そういう意味でも、『こまどりの詩』のような漫画が描かれたことに、感動しているんです。

桜沢 それは、私も頑張らないといけませんね。

MA ぜひ作品を通して、多くの方に、美容師という仕事の魅力を伝えていただけたら嬉しいです。四代目の茉莉花ちゃんも、これから頑張って!

年を重ねた自分に相応しい髪型を

ーー週刊女性の読者世代は、髪の悩みを抱えて、どういう髪型にしたらいいか迷っていることも多いです。

MA 40歳と50歳では老化において、すごく差がありますね。そして52歳あたりからは、直滑降で悩みが増える。

桜沢 いったいどうしたらいいのでしょう?

MA 年齢ごとに似合うスタイルは違うので、それを意識するといいですね。例えばボブですが、20代まではどんなボブでも似合ってしまう。30代は左右対称、40代もできれば左右対称のボブのほうが、お顔の老化は目立たない。ここまでは、最先端のモードなボブもいけます。

桜沢 ここから先ですね。

MA そう、ここからは対策が必要で。50代は直線的なボブだと、ちょっと寂しげで疲れて見えてしまうんですね。なので、ふんわりした優しげなボブ、そして60代には、フェイスラインや首が若々しく見えるようデザインされたボブがおすすめです。

桜沢 私は、最近はほぼ同じ感じの髪型にしていまして。

MA よくお似合いです。桜沢先生はお着物も着られるので、ご自身でアレンジできる髪型がいいですね。

桜沢 今の一番の悩みは白髪なんです。放っておくと、もう大変なことに。

MA 今はまだ若すぎるけど、桜沢先生は白髪もお似合いになります。色白のピンク系の肌で、目の色がダークで、服は黒やグレーがお似合い。なので70代後半あたりになったら、白髪にされても粋ですよ。

桜沢 そうなんですね。MAYUMI先生は?

MA 私は肌が黄色系で、目が茶色い。白髪は似合わないので、ハイトーンのカラーで染めています。服も似合うのは生成りやベージュです。似合う髪の色は、服のカラー診断と同じことがいえますね。

桜沢 なるほど、参考になります。今は白髪に悩んでいますが、いずれは真っ白にするのも憧れなんです。

MA 先ほどボブの話をしましたが、60〜70代からは白髪をアシンメトリーで前衛的なカットにするのも素敵です。こんな素晴らしい漫画を描いていただいたお礼に、恐縮ですが、そのときは私に切らせていただけたら光栄です。

桜沢 それはぜひ! うわー、今から楽しみです! 

(取材・構成/小林延江) 

《PROFILE》
桜沢エリカ(さくらざわ・えりか)

7月8日東京生まれ。10代で漫画家デビューして以来、コミック誌やファッション誌など多方面で活躍。女性の心情をリアルに描写した漫画やイラストを数多く出がけるほか、そのファッションセンスでも注目を集める。『メイキン・ハッピィ』『シッポがともだち』など代表作多数。趣味は健康道追及、お買い物、バレエ、歌舞伎&バレエ鑑賞。

MISS ESSENCE MAYUMI(みすえっせんす・まゆみ)

岐阜県出身。コーセー美容専門学校卒。1988年名古屋に「MISS ESSENCE」をオープン。1995年に東京・青山に出店。2016年から早稲田大学招聘研究員として、カットによるアクティブ・エイジングを研究。美容師歴約40年でのべ100万人の顧客にカットや美容の知識を提供。10年連続年間個人売り上げ1億円超えが話題に。

《INFORMATION》
『こまどりの詩 〜ビューティレジェンド四代記〜』
 朝倉茉莉花は、東京・青山の老舗「朝倉椿美容室」の新人美容師。母の藤子、祖母の椿、曾祖母のキク乃が継いできた店の4代目として奮闘していたが、自信を喪失。実は、今は厳しい母の藤子も、若かりし頃は紆余曲折あってーー。美容業界を舞台に、昭和、平成、令和と人生を切り拓く女たちの物語。

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