「求人詐欺」は減少傾向、さらに求められる「求人サイト」の取り組み

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2019年09月23日 10:21  弁護士ドットコム

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求人票の内容と実際の労働条件が異なる「求人詐欺」。厚労省によると、近年は減少傾向にあるようだ。全国のハローワークにおける2018年度の相談件数は6811件で、前年度から20%ほど減った。


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相談を受けると、ハローワークはすぐに事実を確認する。2018年度はこのうち2967件で相違が判明。是正指導をしたという。



人手不足などを背景にハローワークへの求人は増加傾向にある。しかし、相談件数と実際に求人詐欺が判明した件数はいずれも減っている。2017年の職業安定法(職安法)改正などの影響が考えられそうだ。



とはいえ、まだハローワークだけで毎年度3000件ほどの事例が確認されている。残された課題にはどんなものがあるのか、市橋耕太弁護士に聞いた。



●救済が難しい「求人詐欺」

ーー求人詐欺の被害ではどんな類型が多いのでしょうか?



「いわゆる求人詐欺とは、求人で示された労働条件と実際の労働条件が異なることをいい、実際の労働条件よりも好待遇であるかのように示すことで求職者を集める手法として利用されています。



特に、いわゆる固定残業代(みなし残業代などとも呼ばれ、一定の残業時間を想定して定額の残業代を支払う仕組み)を給与額に上乗せして、給与が高いと誤信させる手法が問題になっています。



働き出した後で実際には不利な労働条件であることを知ったとか、入社前後に求人時より不利な労働条件を示されたが断れずに同意してしまったなどのトラブルとして表れています」



ーー「ほかの企業の選考を断ってしまった」「早期退職すると次の転職で不利になる」といった理由から、不利な条件でも辞められないという話も聞きます。法的に救済できないのでしょうか?



「法的には、求人時の有利な労働条件で労働契約が成立しているものとして、不利な労働条件が適用されないとか、不利な労働条件についての同意が無効である、などとして争う余地がありますが、泣き寝入りしてしまうケースも多発しています」



●求人サイト、情報の適正化は「努力義務」に留まる

ーーハローワークでは求人詐欺が減っているそうです。職安法改正の影響は感じますか?



「職安法の改正に伴い、前述した固定残業代を含む労働条件について募集の当初から明示しなければならないことなどが定められました。



また、違反した求人者(募集企業など)等に対しては勧告ができ、勧告に従わない場合にはその旨を公表できるようになりました。



相談にいらっしゃる方について、求人詐欺が減ったという感覚はまだありませんが、こういった改正が未然にトラブルを防ぐことに役立っている可能性はあると思います」



ーーどのような部分に課題が残っていると感じますか?



「今回の改正において、いわゆる求人サイトなどの『募集情報等提供事業者』が職安法の規制対象となりました。



しかし、掲載する情報を適正化する措置は努力義務にとどまり、重要な求職ツールである求人サイトに対する規制がまだまだ不十分であるといえます。



求人詐欺に対しては、労働者も十分なワークルールの知識とそれを実践する能力を身につけることが有効です。ワークルール教育の拡充も必要だといえるでしょう」




【取材協力弁護士】
市橋 耕太(いちはし・こうた)弁護士
日本労働弁護団事務局次長。ブラック企業被害対策弁護団副事務局長。労働事件・労働問題について労働者側の立場で取り組む。大学等で授業を行うなど、ワークルールの普及にも精力的に活動している。

事務所名:東京合同法律事務所
事務所URL:http://www.tokyo-godo.com/


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