“手放し運転”を公道で実践「歴史的事件といえるほどのデキ」/ニッサン・スカイライン試乗レポート

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2019年09月26日 14:31  AUTOSPORT web

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日本を代表するプレミアムセダンであるニッサン・スカイライン。2019年7月にマイナーチェンジで内外装の装いに手が加えられるとともに、先進運転支援システムなど新技術を採用。
話題の新車や最新技術を試乗する『autosport web的、実践インプレッション』企画。第1回はニッサン・スカイラインを取り上げます。最大の注目は、あの“YAZAWA”も驚いた自動運転系の技術の最新バージョンが搭載されていること。実際にハンドルを離して走ったときの状況をレポートします。

 お届けするのは、クルマの好事家、モータージャーナリストの佐野弘宗さん。“技術”で勝負するニッサンの底力に迫ります。

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 最近なにかと話題のニッサンが、他社以上に強い思い入れをもって手がけているのが自動運転系の技術(ニッサンでの商品名はプロパイロット)である。

 2019年7月にマイナーチェンジを実施した13代目スカイラインは、あの“E.YAZAWA”がステアリングから手を離しているテレビCMからも分かるように、ハンズオフ運転(高速道路の同一車線内のみ)を実現した『プロパイロット2.0』の搭載が最大のニュースである。

 ⋯⋯とはいえ、国内初のハンズオフ運転は、タッチの差でBMWが先んじてしまった。
 ただ、プロパイロット2.0(スカイラインではハイブリッド車のみに標準装備)最大のキモは、じつはハンズオフ運転ではない。

 ナビに目的地をセットしたルート案内で高速道路を走るときに、プロパイロット2.0はジャンクション(JCT)やインターチェンジ(IC)における分岐・合流も、(そこではさすがにハンズオフ運転は許されないが)クルマが積極的にドライバーを導くように走っていく。

 これはBMWにも備わらない機能であり、ただの(?)ハンズオフ運転や既存のレーンキープ走行とは別格の“自動運転感”は感動的ですらある。

 それを可能としているのが、日本全国の高速道路ほぼすべての道路形状や傾斜、分岐構造などを網羅した『高精度3Dマップ』である。高精度3Dマップそのものはクルマ業界全体の共有財産だが、プロパイロット2.0はそれを活用した初めての市販システムである。
■実際に公道で『プロパイロット2.0』を試した感想は?

 当然だが、プロパイロット2.0機能をフル稼働させた“半”自動運転走行では、道路標識を認識しながら速度制限を守って走る。日本の高速JCTやICの制限速度は30〜50km/hだが、みなさんお察しのとおり、そんな速度で走るクルマは現実にはほとんど存在しない。

 実際、空いた高速道路をプロパイロット2.0で走っていると、分岐では後続車からあおられて、合流で行き詰まってしまうことも、しばしばだった。 

 周囲の交通の流れを乱さずに走るには、現状ではプロパイロット2.0を作動させつつも、アクセル操作による加速や“あうん”の呼吸での車線変更など、人間による運転を適度に追加トッピングするのがコツだ。

 それでもプロパイロット2.0による走行はこれまでにない安全でストレスの少ない世界を味わわせてくれるが、同時に「今の日本の制限速度は正しいのか?」といった交通行政の問題点まで浮き彫りにするのが興味深い。

 分岐や合流、ハンズオフ運転でない通常の『アダプティブクルーズコントロール+レーンキープアシスト』的な走行でも、先々のカーブや傾斜まで想定して走るプロパイロット2.0は、前方に見えている情報だけで走る他車の同種機能より、何倍もスムーズで、ライン取りも見事というほかない。

 好事家には否定派も少なくない『自動運転』や『運転支援システム』だが、この種の技術もあるレベルを超えると、これまでとは別種のクルマとの一体感が生まれる⋯⋯のも事実だと思う。
 それにしても、久々に乗った現行スカイラインは、剛性感、乗り心地、操縦安定性、V6ハイブリッドのパワー感と滑らかさ⋯⋯は、今もライバルに大きく劣らないことに感心した。

 聞けば、毎年のように密かな改良の手も加わっているのだという。当初は不自然さが目立った可変レシオのステアリングも今や違和感はほとんどない。また、驚くほど安定したプロパイロット2.0走行には、シャシー性能や可変ステアリングなど、スカイラインの基本フィジカル能力も間違いなく効いている。

 ⋯⋯と、ニッサンの技術力をまざまざと見せつけてくれるスカイラインもすでに5年選手。今回のマイナーチェンジでも内外装の手直しは最小限。フルモデルチェンジしろ⋯⋯とはいわずとも、搭載されるクルマそのものが新鮮味に欠けることで、プロパイロット2.0の注目度もいまひとつ盛り上がらないのも事実だ。

 このスカイラインはともかく、新型車もめったに発売されず、守りに入っているだけのニッサンの国内販売戦略は、日本人としては残念というほかない。繰り返すが、プロパイロット2.0はちょっとした歴史的事件といえるほどのデキなのに⋯⋯である。

■Profile 佐野弘宗 Hiromune Sano
1968年生まれ。モータージャーナリストとして多数の雑誌、Webに寄稿。国産の新型車の取材現場には必ず?!見かける貪欲なレポーター。大のテレビ好きで、女性アイドルとお笑い番組がお気に入り。

このニュースに関するつぶやき

  • 技術の進歩は大歓迎だ。でもね、R32、R34とスカイラインを乗り継いできた者として、スカイラインは乗るものであって乗せられるものではない、と言いたい。
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