ユニクロはジーユーより「高価格」「高品質」って本当? 冬用セーターで比較すると……

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2019年09月28日 21:32  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

ユニクロ公式サイトより

――ファッションライター・南充浩氏が、いま話題のファッションニュースに斬り込む!

ファーストリテイリングのブランド「ユニクロ」と「ジーユー」。どちらも一般的に低価格ではあるものの、2つを比較した場合、「ユニクロはジーユーより値段が高く、高品質」といったイメージを持たれているようです。しかし、果たしてこれは本当か聞かれると、そもそも「品質の高い/低い」を語ること自体が、非常に難しいと言えるでしょう。

家電やパソコンなど、機械類の「品質の高い/低い」は、一部に例外こそありますが、総じて、価格が高ければそれに比例して性能や耐久性が向上するのではないでしょうか。3万円と10万円のパソコンなら、圧倒的に10万円のパソコンが高品質だといえます。一方、衣料品の品質の高さとはなんでしょうか。これはケースバイケースで、その状況と用途に応じて変わるとしか答えられず、やっかいなことに、高額品が必ずしも高品質(耐久性や機能性が高い)とも言えないのです。ここが「高品質のものを買いたい」という消費者を惑わせる部分ではないかとも思います。

 例えば、織りでも編みでも、糸の密度を非常に高めた生地――いわゆる高密度生地は、糸がたくさん使われているため、単純に糸値だけ考えれば高額品ということになります。ちょっと極端な例え方をすると、同じ10本の糸を使って織った生地と、1万本の糸を使って織った生地だと、製造にかかった糸値は、後者の方が1000倍高いということになります。おわかりでしょうか。

 しかし、高密度な生地の商品だけが「高品質」かと言われると、それは違います。なぜなら服にはそれぞれ「用途」というものがあるから。例えば、シースルーっぽい夏用のジャケットを企画していたとします。このとき、高密度な生地を使用して「高品質」と言えるでしょうか。じゃあ、低密度のシースルー生地は安物で低品質かというと、これもそうとは限らないのです。通常のシースルー素材よりもさらに低密度の薄い生地ができた場合、その生地の製造が非常に難しいものであれば高級品、高品質品と呼ばれることになります。

 それから、一般的には、概して、細い糸で作られた柔らかくて光沢のある生地が「高品質」と呼ばれることもありますが、これまた違うのです。確かにそのような生地のTシャツは「高品質品」と認知される一方、8オンス(生地の厚さを表わす単位)以上の重くて分厚い生地のTシャツも、これもまた「高品質品」と言われます。これらを厳密に考えれば考えるほど、衣料品の高品質とは何なのかがますますわからなくなると言えるでしょう。

 ちょっと前置きが長くなりましたが、衣料品の品質とはこういうものなので、何を持ってユニクロとジーユーの品質を比較して論じるのかというのが、かなり難しい作業であるということを理解していただけたのではないかと思います。

 しかし、一般的に広く言われるように、ユニクロの方がジーユーより“総じて”高品質であることは間違いありません。冬用のセーターに的を絞れば、一般の方にもわかりやすく比較ができるかと思います。

 ユニクロの冬用のセーターですが、2018年秋には、「プレミアムラムウールセーター:2,990円」が最も定番だった印象です。こちらは、ちょっとざっくりしたミドルゲージセーターで、生地はウール100%。期間限定で、1,990円で販売されていたこともあります。なお、19年8月時点でも、同商品がすでに店頭投入されています。

 このウールは「高品質」素材と言え、また近年、その原料価格は高騰し続けています。昔ですと、ウール100%のセーターは、ユニクロに頼らずとも、低価格ブランドの店頭で、普通に3,000円くらいで売られていましたが、原料価格高騰によってほぼ姿を消しました。そんな中、2,990円で高品質素材のウールセーターを発売するユニクロは、すさまじいと言わねばなりません。同じ商品をセレクトショップに並べたら、恐らくは最低でも1万円前後になると考えられます。

 一方、ユニクロを下回る低価格ブランドのジーユーは、合繊100%またはウールを少しだけ混ぜた合繊主体の生地でできています。価格は1,490〜1,990円が中心で、ユニクロのプレミアムラムウールセーターより確かに安価(期間限定価格時と比較すると同等)ですが、使用素材は大きく異なります。つまり、冬用セーターで比較すると、「ユニクロはジーユーより値段が少し高く、高品質」かつ、もしくは「ユニクロはジーユーと値段がほぼ同じで、高品質」と言えます。何せ、ウールの原料価格は毎年上昇し続けていますから、ウール100%のセーターを2,990円で発売することは並みのブランドには困難なのです。

 少しだけことわっておくと、ジーユーが格別に安い生地を使っているということではありません。ジーユーと同等価格の他社低価格ブランドはもっと粗悪な合繊100%セーターを発売していますから、それらに比べるとジーユーはまだマシなのです。

 ちなみに、ユニクロの高品質ぶりが一層顕著になるのは、春夏シーズンよりも秋冬シーズンだと言えます。それらは原料高騰のウールとダウンをふんだんに使っているにもかかわらず、2018年秋まで価格はほぼ据え置きだったからです。ラムウールセーターしかり、ダウンジャケットしかり、ウール素材のコート類しかりです。

 今秋冬も高品質低価格ぶりをユニクロが続けられるのかどうか、注目してみたいと思います。
(南充浩)

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