『今日俺』『3A』『あな番』日テレ22時半枠好調のカギは? 『金田一』から続く最大の武器

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2019年09月29日 06:11  リアルサウンド

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テレビ

 最終話の平均視聴率が19.4%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を獲得した『あなたの番です』が放送された日本テレビ系の日曜ドラマ枠(日曜夜10時30分〜)に注目が集まっている。


【写真】『あなたの番です』で話題になった人物たち


 前クールでは、ある女子生徒の自殺の真相を探るために生徒たちを人質にして教室に立てこもった教師を主人公にした学園ドラマ『3年A組 −今から皆さんは、人質です−』が放送され、前々クールにはコメディテイストのヤンキードラマ『今日から俺は!!』が放送。どれも話題作となり、普段はあまりドラマを見ない10〜20代の若者層にアピールする結果となった。


 脚本家の森下佳子は、若い世代はドラマよりもアニメを見ている人の方が多く、ドラマを観ている人の方が「ドラマオタク」と言われるのではないか? と、文春オンラインのインタビューで「若者のドラマ離れ」に懸念を抱いていた(参考:「ドラマファンがオタクと呼ばれる時代が来る」“朝ドラ脚本家”森下佳子を突き動かす危機感)。


 彼女が脚本を担当した『だから私は推しました』が放送されたNHKのよるドラ枠(土曜夜11時30分〜)は、若者向け作品を作ろうという攻めた姿勢のドラマ枠だが、良い意味でも悪い意味でもコアなドラマオタク向け作品となっているNHKの「よるドラ」に対し、日本テレビの「日曜ドラマ」は、新規参入の視聴者にとって敷居が低く、気軽に楽しめることが功を奏している。


■はじまりはティーンエイジの男性向け作品


 日曜ドラマは2015年4月クールからはじまった。最初の作品はEXILEのTAKAHIRO主演の『ワイルド・ヒーローズ』、その後は『デスノート』、『エンジェル・ハート』と漫画原作のドラマが続いた。基本的な方向性はティーンエイジの男性向け作品である。


 同じ日本テレビの老舗ドラマ枠・土9(土曜夜9時枠、現在は10時に移動)が1995年の『金田一少年の事件簿』以降積み重ねてきたミステリードラマ路線が継承され、高齢化著しい民放地上波ドラマの中では数少ない若者向け枠を維持してきた。


 とは言え2015年から18年にかけては試行錯誤が続いている。『金田一』の堤幸彦がチーフ演出を担当した『視覚探偵 日暮旅人』や宮藤官九郎が脚本を担当したゆとり第一世代の若者たちの群像劇『ゆとりですがなにか』、『野ブタ。をプロデュース』や『ど根性ガエル』の河野英裕がプロデュースした人造人間が主人公のファンタジードラマ『フランケンシュタインの恋』、タイムリープとホストモノのハイブリッド・ドラマ『トドメの接吻』など、個性の強い観るべき作品は多数あったものの、ドラマ枠の方向性を決定づけるようなヒット作にはなかなか生まれなかった。


 そんな中、転機となったのは2018年10月クールに作られた『今日から俺は!!』だろう。福田雄一が脚本とチーフ演出を担当した本作は、80年代カルチャーの懐かしさを全面に押し出したコメディテイストの学園ドラマに仕上がっていた。作品のテイストは福田雄一が『勇者ヨシヒコ』(テレビ東京系)シリーズ等で展開してきた深夜ドラマの方法論の延長だったが、地上波のプライムタイムで展開したことで、かつて、とんねるずやウッチャンナンチャンが展開していたようなパロディテイストのコント・バラエティが持っていたメジャー感を獲得し、80年代の風俗を懐かしむ大人世代だけでなく、10〜20代の若者層まで幅広くリーチする作品となったのだ。


 とは言え、本作は福田だからこそできたワン&オンリーの作品であり、他の作り手が本作を真似することは難しいだろう。


■『金田一』から続く日テレ・ドラマ最大の武器


 その意味でも、今後、日曜ドラマのスタイルを作っていくのは『3年A組』の成功かもしれない。異色の学園ミステリーとしてスタートした本作は、一話ごとに話のテイストが変わっていき、先の読めない展開が話題となった。学園ドラマとミステリーという組み合わせは、それこそ『金田一』の頃から脈々と続いている土9ドラマを発展させたものだったが、何より現代的だったのは、本作が最終的に描いたのが「SNS批判」だったことだ。


 犯人探しのゲームによってSNSの関心を引張りながら、最後の最後にSNSに蔓延する無責任な言動を批判する本作のスタンスは、快楽を与えながら同時に批判するという意味においてマッチポンプ的だったが、今の若者がもっとも関心のあるSNSをターゲットにすることで、普段はドラマを見ないような10代の中高生に響く作品となったことは間違いないだろう。


 そして、次の『あなたの番です』は、『3年A組』が切り開いたSNSに対応したミステリードラマというフォーマットを2クール(半年)に渡って展開し、犯人探しゲームの快楽によって、視聴者の関心を極限まで引っ張ることに成功した。


 『あなたの番です』には秋元康の名前が企画・原案としてクレジットされているが、やはりキーワードは「企画」だろう。


 何が起きるかわからないバラエティ番組的な犯人探しのゲームを支える企画力。これこそが『金田一』から続く日テレ・ドラマ最大の武器である。


 次クールの『ニッポンノワール ー刑事Yの反乱ー』は、『3年A組』と同じ世界観の作品だという。どのような企画が仕掛けられているのか、今から楽しみである。


(成馬零一)


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