人手不足解消に期待される「特定技能」制度の課題とは?

2

2019年10月03日 07:31  JIJICO

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

JIJICO

写真


特定技能制度とは?


2019年4月1日から、外国人が日本で就労するための新しい在留資格である「特定技能」が創設されました。「特定技能」は、介護、建設、宿泊など14の業種に特定して、外国人が日本で就労することが認める在留資格です。


これまでは、日本で就労できる外国人は、高度な専門知識や技術が求められる職に就いた人や、日本人と結婚した人などでした。留学生や家族として日本に滞在する外国人は、許可を取れば就労できますが、一週間に28時間という時間の制限があります。フルタイムで就労できる時間と能力があったとしても、「在留資格」の都合で、働けない外国人がたくさんいます。


「特定技能」は、「外国人が日本で働く」をこと認める新しい制度です。


人手不足解消に期待される特定技能制度


長い間、外国人を働き手として受け入れてこなかった日本が、外国人を働き手として受け入れることを決めた理由は、「人手不足」です。ここ数年「技能実習生」を多くの企業が受け入れていますが、「技能実習」は日本で技術を習得して本国に持ち帰るための制度です。にもかかわらず、企業による「技能実習生」の酷使が問題視されるようになりました。


「特定技能」外国人を受け入れるにあたって、法務省は新たに「登録支援機関」を創設しました。「登録支援機関」は、「特定技能」外国人の日本での生活を総合的に支援するための機関です。


特定技能制度の課題


長年、日本で暮らす外国人支援に関わってきた私は、法務省に申請して、社会保険労務士事務所として「登録支援機関」の登録を受けました。「特定技能」も「登録支援機関」も始まったばかりで、全くの手探り状態で動いていましたが、先日、「特定技能」の「外食」に合格したというベトナムの女性と会う機会がありました。


彼女は、日本語学校から調理関係の専門学校に進学し、「特定技能」の試験に合格したのですが、まだ就職先が見つかっていません。彼女は、専門学校卒業と同時に、在留資格を「留学」から「特定活動」に切り換えました。「特定活動」は就職準備をするために認められた在留資格で期限があります。もし、期限内に就職先が見つからなかった場合は、せっかく試験に合格したのに、彼女はベトナムに帰国しなければなりません。人手不足で苦労している日本の外食産業も、貴重な人材を一人失うことになります。


「技能実習」から「特定技能」への移行も可能なので、技能実習生がそのまま同じ職場で「特定技能」として働くことになった例はあります。しかし、留学生などが「特定技能」の試験に合格したからといって、すぐに就労に結びつかないのは、この制度の現在の課題だと思います。「特定技能」試験は、日本国内だけではなく、海外でも行われます。


海外で合格した人が、どうやって日本での就職先を見つけるのか。また、人材を求めている企業が、どうやって海外にいる人材と接触するのか。「特定技能」制度が、軌道に乗るためには、しばらく時間がかかると推察します。



(小倉 越子・社会保険労務士)

このニュースに関するつぶやき

  • 外国人受入で人手不足を解消しなければならなくなったのは、職場環境改善や長期的に人材を育てる努力を企業が怠る様になったからだ。リストラのやり過ぎも問題があり税金対策に力点を置く税制にも問題がある。
    • イイネ!6
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

前日のランキングへ

ニュース設定