リゾ×AB6IX、リル・ナズ・X×BTS RM……さらに接近していくK-POPと英米アーティストの関係性

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2019年10月07日 10:21  リアルサウンド

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Lizzo『Truth Hurts(feat. AB6IX)』

 アメリカで4週連続1位となっているリゾの「Truth Hurts」。最近では、今年デビューしたばかりの韓国の男性グループ、AB6IX(エイビーシックス)が参加した同曲のリミックスバージョンも公開された。


(関連:リゾ×AB6IX 「Truth Hurts」試聴はこちら


 また7月には、最終的に全米チャート新記録となる19週連続1位を達成したリル・ナズ・Xの「Old Town Road」のリミックス版にBTSのRMをフィーチャーした「Seoul Town Remix」が加わったことも記憶に新しい。全米1位になった楽曲のリミックス版にK-POPグループが参加するという例が2つも続いた。こうした事例は、現在のK-POPが持つ影響力の大きさを物語っているといえるだろう。今回は、ここ最近一段と増えている「K-POPと英米のアーティストのコラボレーション」に注目し、代表的なものを紹介しながら、コラボレーションが増えている背景も追ってみたい。


 まずは、ここ1年でリリースされたコラボ作の代表的なものをいくつか紹介しよう。


●デュア・リパ×BLACKPINK「Kiss and Make Up」
 世界的な大ヒットとなったデュア・リパの同名デビューアルバムのコンプリートエディションに収録された一曲。デュア・リパがソウルに滞在した際、BLACKPINKのメンバーと会ったことがきっかけで、彼女からコラボを提案したようだ。BLACKPINKのパワフルなボーカルがデュア・リパとあまりにマッチしていて、5人の強いケミストリーを感じさせるし、この一回に限らないコラボも期待したくもなる。同曲によって、デュア・リパは本国イギリスでも36位にチャートインし、BLACKPINKはK-POPの女性グループでは初の全英トップ40入りという快挙も成し遂げた。


●エリー・ゴールディング×ディプロ×Red Velvet「Close To Me」
 エリー・ゴールディングが、スワエ・リーをゲストに迎え昨年秋に発表されたデュエット曲「Close To Me」を、”Red Velvet remix”として今年4月に発表。Red Velvetのイェリとウェンディが新たに書き加えた韓国語リリックは、スワエ・リーのパートを入れ替えただけでなく、コーラス、ブリッジ部にまで及び大々的なアップデートが施された。男女の対話として聴くことができた原曲が、Red Velvetのメンバーたちの声が重なりあうことで共感し合う女性たちの歌にも聞こえてくる。このコラボもソウルでの公演時にライブを見て印象に残ったというエリー・ゴールディングからの提案がきっかけだという。


●リゾ×AB6IX 「Truth Hurts」
 冒頭でも紹介した現在全米1位をひた走るこの曲。リミックス版では、韓国語と英語を混ぜたリリックをAB6IXが追加したという。コラボの経緯こそ明らかになっていないが、若く爽やかなAB6IXのボーカルが加わることによって、パワフルかつコミカルなイメージが強いリゾが一人で歌う原曲とは異なる印象を与えた。


 そのほか、先述の「Old Town Road」以外にもホールジー、チャーリーXCXなどと多数のコラボ曲を発表しているBTSを筆頭に、フレンチ・モンタナとMONSTA X、ジェイソン・デルーロとNCT 127&EXOのレイ、エイバ・マックスとNCT 127、ジョナス・ブルーとIZ*ONEなど今年だけでもその例は挙げていけばキリがない。いずれのケースも、コラボレーションの相性の良さに驚かされたり、リリックやボーカルに新たな意味、テイストが加わったりと、一度の企画とはいえ侮れない質の高さのものばかりだ。


 K-POPリスナーならよくご存知の通り、「K-POPと英米アーティストのコラボレーション」自体、何も最近になって始まったことではない。JYJの楽曲にカニエ・ウエストが、BIGBANGのG-DRAGONの楽曲のリミックス版にフロー・ライダーが参加した2010年あたりから徐々に増えている。だが、昨年のRealSoundでの記事でも最も多い例と紹介されていた(参照:https://realsound.jp/2018/09/post-253728.html)BIGBANGのG-DRAGONと元2NE1のCLがその流れを牽引していた2010年代前半の場合は、この2組のように英米のアーティストとの交流が深い一部のアーティストに限られていた印象だ。現在のようにコラボレーションがどんどん気軽に実現されるようになるには、何かしらの契機があったはずだ。


 その一つは言うまでもなく、K-POPの世界的なファンベースの存在を可視化させたBTSの成功だろう。世界各国の総合チャートでトップ10に入るほどのBTSの成功は、ヨーロッパでも、南米でも、中東でも、K-POPが一部のマニア層だけでなく、大衆的なレベルで注目を浴びていることを証明した。f(x)「4 Walls」やEXO「Power」などのプロデュースで知られるイギリスのプロデューサーデュオ・LDN Noiseはビルボードのインタビューで「K-POPの注目度は、信じられないほどの国際的なファン・ベースを通じて世界中で大きくなっています。アーティスト、レーベル、ソングライターがシーンを発見し、その一部になりたいと思っていて、楽曲はこれまで以上にチャートに入り、より多くのビューを獲得しています」と話している(参照:https://www.billboard.com/articles/news/bts/8099617/k-pop-producers-stereotypes-diplo-skrillex-ldn-noise)。BTSの成功以来K-POPシーンの重要度が上がったことは、先述のデュア・リパ、エリー・ゴールディングの例が示す通り、英米のアーティスト側からもコラボ実現のためにオープンに歩み寄る例が増えることに繋がったと思う。


 もう一つ、ここ最近K-POPグループがアメリカの現地レーベルと契約する例が急速に増えていることも注目に値する。最近1年だけでも、<Interscope Records>と契約としたBLACKPINKを始め、<Capitol Records>とNCT 127、<Epic Records>とMONSTA X、<Republic Records>とTXTとその例が多い。新人のTXTを除けば、すでに英米アーティストとのコラボ曲を発表しているアーティストたちであることは偶然でないだろう。現地における流通拡大等のコマーシャルな面が主な目的だと思うが、現地の大手レーベルとの契約は各グループが晴れてアメリカの音楽シーンの一員になったことも意味する。K-POPと英米シーンが産業的にもより接近したことで、本稿で紹介したようなコラボレーションが増えるのもより自然なことだろう。


 こうして国境を大きく超えたコラボレーションが増えることはリスナーたちに、アメリカ、イギリス、韓国といったそれぞれの国のシーンをよりフラットに捉えることを促すはずだ。もちろんそれは韓国だけに限らない。近年、アジア各国や、中南米、ヨーロッパの非英語圏のなどに出自を持つアーティストが英米のシーンの表舞台に立つことは珍しくない。それぞれのアーティスト同士のコラボレーションは一度きりでも、その積み重ねはポップミュージックの世界地図を塗り替えて行く。(山本大地)


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