AI搭載で公道を走行? トヨタのコンセプトカー「LQ」が画期的だった

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2019年10月11日 13:42  マイナビニュース

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トヨタ自動車が発表した人工知能(AI)搭載コンセプトカー「LQ」が画期的だ。そもそも、自動車メーカーが作るコンセプトカーというものは、将来的な製品化に結びつくことはあっても、ほとんどが「夢のクルマ」といった雰囲気で、公道を走ることは滅多にない。ところがLQは、2020年にも公道を走るというのだ。

○AIエージェント「YUI」はクルマをどう変えるのか

トヨタの「LQ」は、「YUI」と名づけたAIエージェントや自動運転などの機能を搭載する電気自動車(EV)だ。車名には、新しい時代の愛車を提案するきっかけになればとの思いを込め、「Beloved Car」(愛車)の「L」と「きっかけ」を意味する「Cue=Q」を組み合わせた。

「クルマは“愛”がつく工業製品であり続けてほしい」。これがトヨタの考えだ。そのためには、YUIを介して、クルマに乗る一人一人のニーズに合わせ、特別な移動体験を提供したい。そんな思いでトヨタはLQを開発した。YUIを搭載するLQでは運転中、どんなことが起こるのか。トヨタはドライバーが眠気を催すケースを例に挙げて説明する。

まず、LQは赤外線カメラと三次元センサーにより、ドライバーの状態をチェックしている。そしてAIのYUIは、ドライバーの趣味・嗜好を学び、把握している。それが前提だ。YUIはLQを運転しているドライバーの「覚醒度」を見ていて、本人が自覚する前に、もうすぐドライバーが眠気に襲われそうだと推察することができる。

例えば、あと15分で眠くなるものと考えられるドライバーが高速道路を走行中で、次のサービスエリアに到着するまでには30分かかるとする。そうすると、サービスエリアで休憩するとしても、到着までの15分は眠いままでクルマを運転し続けなければならない。そんな時、YUIはドライバーの趣味・嗜好に合わせた話題で会話を始める。ドライバーはYUIと会話しながら、無事、サービスエリアに到着できる。YUIが活躍するシーンは、例えばこんな感じだ。

ドライバーの眠気を覚ますには、何をするのが最適なのか。いろいろと試した結果、会話が最適解だとトヨタは判断した。ほかには例えば、冷たい空気を当てることや、シートを膨らませて背中を押すなどといった方法も試したそうだ。

とはいえ、人間のパートナーとなるAIエージェントを、なぜトヨタが作るのかについては疑問が残る。わざわざAI搭載車に乗らなくても、スマートフォンをクルマにつなげば、スマホ側のAIが話し相手になってくれたり、ナビを設定してくれたり、空調を調節してくれたりしてくれる未来が、すぐそこまできていそうな気がするからだ。そのあたりについて、LQの開発責任者であるトヨタの井戸大介さんは以下のように語る。

「トヨタはクルマのことをよく知っています。そして、クルマにしかできないことがあるとも考えています。例えば、クルマは多彩なセンサーを搭載していて、ドライバーモニタリングシステムなどで乗員の状態を読み取れますし、車内のコミュニケーションや乗員の行動履歴などから、その人の好みを推察することも可能です。乗員の状態が分かって、何が好きなのかも把握できていれば、『じゃあ、どうするか』も考えられる。車室内は姿勢と視点が限定されているので、『どうする』の部分も比較的、設計が容易です。高度な要素技術を組み合わせれば、AIエージェントから、さまざまなアクションが可能になります」

AIはIT企業の専売特許というイメージが強かったのだが、クルマとの組み合わせで何ができるかを考える時には、自動車メーカーの知見が活用できる。これがトヨタの考えらしい。クルマが「所有するもの」から「(必要な時だけ)使用するもの」に変わったとしても、ユーザー一人一人に合わせて学び、成長したYUIが存在することで、AIを介在させた人とクルマのつながり(愛?)は、将来も実現可能なのかもしれない。所有するクルマに乗る時にも、レンタカーを使う時にも、自分のYUIがパートナーとして、そのクルマに乗り移ってくれる。そんなイメージだ。
○公道を走るコンセプトカーが生まれた理由

それが実現可能かどうかは、とにかく、乗ってみてから考えたい。そういう人には、LQに乗るチャンスがあるかもしれない。トヨタは2020年6月〜9月の期間で、「トヨタYUIプロジェクトTOURS 2020」という試乗会を実施する予定としている。事前に公開されるスマホアプリを通じ、趣味・嗜好をYUIに教えておくことで、一人一人に合わせてパーソナライズされたLQに試乗できるそうだ。

トヨタはLQを販売するつもりがないのに、なぜ公道を走れる仕様としたのか。井戸さんは「トヨタはよく、売らないコンセプトカーばかり作るといわれる」とした上で、以下のように説明する。

「トヨタの開発部隊には、先行開発に従事する人たちと市販車を開発している人たちがいます。先行開発の技術者は、限定された条件下で成功すれば、あるいは10回のうち2回成功すれば『できた!』という人たちですが、一方で市販車を開発する技術者は、100万台に1台の不具合があっても、まだ『できていない』という人たちです。この意識の差が、最新技術をなかなか製品化できない理由のひとつになっています」

そんな状況を踏まえトヨタは、売らないけれど公道は走るクルマ=LQを作った。中間的な位置づけのクルマを作る利点として井戸さんは、開発部隊では「(先行開発と市販車開発の)双方からの歩み寄りが期待できる」し、結果的に、「新しい技術をより早いタイミングでお客様に見てもらうことができる」ことを挙げた。公道試乗で得られるユーザーの声も、トヨタにとって新車開発に向けた貴重なデータになる。(藤田真吾)

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  • いっそ、搭乗者もAI化しちゃえば、車そのものもいらんな。
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