うた☆プリ『マジLOVEキングダム』がロングラン 人気を後押しするライブアニメーションの魅力

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2019年10月13日 08:01  リアルサウンド

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『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』(c)UTA☆PRI-MOVIE PROJECT

 ST☆RISHの7カ月連続ソロベストアルバムのリリースなど、10周年に向けて大きく盛り上がりをみせる『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズ(以下、『うた☆プリ』)。2010年6月に発売された人気ゲームソフトを原作とし、2011年から2016年にわたり4期までテレビアニメ『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE』シリーズが放送され、男性ユニットアイドルアニメの草分け的存在となった。今年6月より公開された『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEキングダム』では、9月末には国内興収17億円、動員人数100万人を突破した。好成績を収める鍵となった「ライブアニメーション」とはどのようなものなのかを考察し、『うた☆プリ』の魅力と合わせて紹介する。


■『うた☆プリ』9年の軌跡、鍵となるのは“多彩なライブ表現”


 『うた☆プリ』とは、アイドルを目指す男子学生たちを中心に始まった作品であり、その後デビューを果たし、仲間やライバルと更なる高みを目指して切磋琢磨する姿が現在までに描かれている。原作ゲームでは恋愛模様を、TVシリーズでは男の子たちの成長を描くなど、メディアによって焦点を当てる部分が異なる、多面的で濃密なシリーズとなっている。“ライブ”一つにしても、アニメではストーリーやエンディングにライブシーンが組み込まれ、キャスト陣による声優の域を超えたパフォーマンスが魅力のライブイベント「マジLOVE LIVE」、容姿や動作が忠実に再現されたCGキャラクターが投映されるリアルなライブイベント「CG STAR LIVE」、ライブをモチーフにしたリズムゲームアプリ『うたの☆プリンスさまっ♪ Shining Live』の配信など、様々な方法で表現している。そのため、何を見てきたかによって、各々が抱く“『うた☆プリ』らしさ”に多少の違いが現れるように思う。しかし、「ライブアニメーション」で描かれた劇場版は、誰が見ても「これが『うた☆プリ』」となる作品だ。


■ストーリーではなくライブを描くことで見える“アイドル像”


 劇場版が冠されている『マジLOVEキングダム』とは、アイドルたちの所属する事務所、グループの壁を超えた3組の合同ライブのタイトルでもある。映画にストーリーはなく、グループ曲やシャッフルユニット曲、MCパートと週代わりのアンコールで構成されている。今作では、全編を通してライブのシーンのみを描くことを「ライブアニメーション」としているようだ。上映方法は、通常上映とマジLOVEライブ上映の2種で、後者はペンライトを振ることができるなど、やはりライブのように映画を楽しむことができる。


 ライブアニメーションの利点は、テレビアニメ版を見て事前に予習をしておく必要がなく、作品を知らない人でも気軽に見ることができる点である。キャラクターデザイン・総作画監督を務めた藤岡真紀氏は「アニメを作っているというよりも、本当のライブを作る裏方的な作業」と振り返っており、作品自体もライブそのものが映し出されている。そのため、パフォーマンス・エンターテインメントを見ることや応援することが好きな人にもオススメだ。また、恋愛ゲーム『うた☆プリ』の要素は薄く、今作ではアイドルとしてステージに立つ彼らを応援することができる。ライブのみを描くことでアイドルの本質は残しつつも、これまでの『うた☆プリ』を知らない人でも作品の世界に入りやすい作品となった今作。テレビアニメや楽曲が豊富で、既にコンテンツが充実しているため、映画を機会にハマり始めたという人は、これから深く楽しむことができる。


 一方で、これまで応援してきたファンとしては、まだあまり掘り下げられていないグループ「HE★VENS」や、彼らも含めた限定ユニットなどを通して、新たな一面を楽しんだり、グループ曲やMCパートでの振り返りなどを通してアイドルたちの成長を感じることができたように思う。前述したとおり、ファンではない人でも見やすい作品ではあったが、これまでのシナリオや出来事を示唆するシーンもあり、ファンからすると感慨深さもある作品だった。また、映画が公開される以前までは、テレビアニメシリーズの新作や「マジLOVE LIVE」の開催は年に1度くらいのペースであったため、何度も足を運ぶことができ、短期間ですぐ会いに行くこと・ライブの熱を感じることができた公開期間は、とても幸福な時間である。


■広まるライブアニメーション、永遠を目指す『うた☆プリ』


 『うた☆プリ』シリーズの原作・企画原案・音楽プロデューサーを務めている上松範康氏が同じく音楽プロデューサーとして参加している『劇場版「BanG Dream! FILM LIVE」』も9月13日より全国公開しており、こちらもライブアニメーション作品となっている。音楽アニメーションの表現の幅を広げるであろうこのジャンルを、今後は様々な作品が取り入れ、新たな映画の楽しみ方として広まるのではないだろうか。


 上松氏が自身の書籍で、「僕と紺野さやかさんが考える『うた☆プリ』の美学は〈攻める〉です」と述べているように、『うた☆プリ』ではインパクトを大切にしている。美麗なイラストに魅力的な個性を持つアイドルと仲間たち、キャッチーな音楽と共に展開していくストーリーは、多くの人の心を掴んで離さなかった。この度の劇場版化と、そこで好成績を記録したこと、また「マジLOVE LIVE」も、さいたまスーパーアリーナ(スタジアムモードで最大で37,000人収容。2デイズ)で行ったことなどは、心を掴まれたファンが何度も足を運んだり、周囲の人におすすめし、広めたりした結果なのではないだろうか。もし劇場版『うた☆プリ』が円盤化するのであれば、友人に自分が好きなアーティストのライブDVDを貸すような感覚で、さらに広まって行くのではないかと期待している。


 来年で10周年を迎える今、コンテンツの成長に対して上松氏は、「多くのユーザーの皆様が青春や人生の一部を捧げてくださる作品になったということを自覚しています。それはある意味で罪深いことであるのかもしれませんが、僕は『うた☆プリ』を永久に続けることで、その責任を果たしていこうと思っています」と述べている。その思いもあってか、現在も様々な表現に挑戦しており、作品は10年前よりも大きな存在となったが、同時に近い存在にもなったように思う。今後も、革新的なアイドルアニメである『うた☆プリ』と、夢のようなステージへ誘ってくれるアイドルたちから目が離せない。(文=土屋三咲)


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