ホーム > mixiニュース > ライフスタイル > 「正直、またか」「帰宅しても誰もいない」遠距離介護に励む妻、夫の“意地悪”な本音

「正直、またか」「帰宅しても誰もいない」遠距離介護に励む妻、夫の“意地悪”な本音

0

2019年10月13日 22:02  サイゾーウーマン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

サイゾーウーマン

写真写真

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”

――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

 “遠距離”というと読者の皆さんは何を思い浮かべるだろうか。「遠距離恋愛」? いやいや「遠距離介護」という方も多いと思う。遠距離介護は、遠距離恋愛よりむずかしい、と筆者は思う。今回は遠距離介護する娘――ではなく、その夫の本音を探った。

遠距離で母親を介護する妻

 「幸い僕の母はまだまだ元気です。父と二人で暮らしていたころよりも活動的なんじゃないですか」と苦笑するのは小池武さん(仮名・53)だ。

「父は10年以上前に亡くなり、母は僕の家の近くで一人暮らしをしていますが、習い事をしたり、友人と旅行したりと、毎日忙しくしています。配偶者を亡くしても女の人は強いですね。男はそうはいかない。もし自分が奥さんに先立たれたら悲しみのあまりすぐに死んでしまうと思います」

 小池さんがそういうのは、妻・淳子さん(仮名・50)の不在がこたえているからだ。

 淳子さんの実家へは、飛行機で2時間近くかかる。淳子さんの父親ががんでここ数年闘病中だったのだが、ここ数カ月で急激に悪化し、いつ急変してもおかしくないと言われた。「お母さんも疲れているし、お父さんのそばにいてあげたい」と淳子さんが言うので、「それは娘として当然だから、こっちのことは気にしないでいいよ」と快く送り出したのだという。

 小池さんは、夫婦二人暮らし。大学院生の一人息子は都内で一人暮らしをしていて、めったに帰ってこない。淳子さんが父親の看病で実家に帰っている間は、仕事を終えた後に外で飲んで帰ることが増えた。「単身赴任した経験もなかったので、帰宅しても誰もいないということが結構こたえました」と笑う。

 淳子さんの父親は「もう危ない」と言われながら何度か持ち直したが、半年前ついに力尽きた。淳子さんは力を落としている母親のそばにいてあげたいといって、しばらく実家に滞在した。

 2カ月ほどすると、母親も落ち着いてきたといって、淳子さんがようやく戻ってきた。

「妻も疲れていましたが、やるだけのことはやれたと満足していました。一人暮らしになった義母のことは心配ではありましたが、僕の母を見ていても、残された女親の方はしばらくすれば元気になると思っていたので、そう心配しなくても大丈夫だろうと楽観していたんですが……」

 淳子さんが帰ってきて、小池さんの日常が戻ってきた。ところが、小池さんがホッとしたのもつかの間、「お母さんの様子がおかしい」と淳子さんが言い出した。

「『お母さんから、立ち上がれない、歩けないと連絡が来た』というんです。それでまた妻が実家に向かうことになりました」

 淳子さんは、母親が通っている整形外科に連れていったが、骨に異常はなかった。紹介された総合病院で検査したところ、整形外科でもらっていた膝の痛み止めの薬の副作用で、低ナトリウム血症を発症していることが判明したというのだ。

 低ナトリウム血症とは、血液中のナトリウム濃度が非常に低い状態をいう。高齢者の場合は認知症症状が悪化したり、意識障害、食欲不振などさまざまな症状が出て、重症化すると命の危険もあるという。

 低ナトリウム血症への治療を開始すると、淳子さんの母親は少しずつ回復していった。それでも、再び母親を一人にすることに不安を抱いた淳子さんは、その病院が運営するサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入居してもらうことにした。

「義母の引っ越しは大変だったようですが、ひとまず問題は片付いたので妻も帰ってきました。ただ妻と交代して義母の様子を見に行った義弟の話では、義母は環境が急に変わったせいか、自分がどこにいるのかわからなくなったり、ボーっとしていることが増えたというんです」

 母親を心配した淳子さんは、再び実家に通うようになった。

「妻の実家はそのままにしていたので、時々サ高住から義母を連れて帰って、2〜3日そこで過ごして、またサ高住に戻るというようにしているそうです。それで、また頻繁に実家に帰らなければならなくなりました。ずっとこうした二重生活をするのはお互い負担なので、義母をこちらに呼びたいと言っています。僕もそれがいいと思うのですが、義母は地元を離れる決心がつかないと。それで、やはり妻が時々義母のもとに行くというのが、今のところベストだろうということになったんです」

 妻は毎月、義母のもとに帰らせてほしいと言っている、と小池さんはため息をつく。問題はお金?

「交通費は確かにものすごくかかっていますが、それは義父がかなりの遺産を残してくれたので我が家の懐が痛むわけではない。お金に関しては、『どうぞどうぞ』という感じなんです(笑)。ただね……」

 小池さんは一瞬、言いよどんだ。

「義父が亡くなる前、何カ月も妻は家を留守にしていました。やっと戻ってきて落ち着いたと思ったら、また毎月実家に帰るという。しかも、一度帰ると10日ほどは滞在することになります。正直、『またか……』と思ってしまうんです。先の見えないこんな生活がいつまで続くんだろう。妻の大変さも、義母を大切に思う気持ちもよくわかってはいるんですが……」

 小池さんは、最近よく昔の記憶がよみがえるという。

「伯母がよく母のところに来て、愚痴をこぼしていたんです。伯母はお嫁さんと同居していたんですが、お嫁さんのお母さんの具合が悪く、『たびたび実家に帰って困る』と陰口を言っていました。我が伯母ながら、ひどいことを言うなあ、お嫁さんが自分の母親を心配して実家に帰るのは当たり前じゃないですか。それを非難するとはなんて意地悪な姑なんだろうとあきれていたんですが、今その伯母の気持ちが少しわかるような気がしているんです。妻がたびたび実家に帰ることでイヤな気持ちになるのは、あのときの伯母と変わらない。伯母のことを意地悪だと思う資格はないなと思います。伯母も、単なる嫁いびりをしていたんじゃなくて、さびしかったのかもしれませんね」

 伯母は晩年認知症になって、息子の顔もわからなくなり、最期は施設で枯れ木のように亡くなったという。お嫁さんは、最期まで伯母のもとに通い続けていた、と誰に言うともなくつぶやいた。

坂口鈴香(さかぐち・すずか)
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。 

【老いゆく親と向き合う】シリーズ

介護施設は虐待が心配――生活が破綻寸前でも母を手放せない娘
父は被害者なのに――老人ホーム、認知症の入居者とのトラブル
・父の遺産は1円ももらっていないのに――仲睦まじい姉妹の本音
明るく聡明な母で尊敬していたが――「せん妄」で知った母の本心
認知症の母は壊れてなんかいない。本質があらわになっただけ

【介護をめぐる親子・家族模様】シリーズ

    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定