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あの「キョロちゃん」も徹底考察! 知られざる鳥類学者の世界

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2019年10月14日 08:00  AERA dot.

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写真東京大学 総合研究博物館勤務 松原始さん(50)/1969年生まれ。京都大学理学部卒。同大学院理学研究科博士課程修了。専門は動物行動学。著書に『カラスの教科書』など多数。現在の勤め先は東京大学と日本郵便が協働で運営する博物館「インターメディアテク」。オフィスの窓から丸の内のカラスたちを観察するのも日課(撮影/岡田晃奈)
東京大学 総合研究博物館勤務 松原始さん(50)/1969年生まれ。京都大学理学部卒。同大学院理学研究科博士課程修了。専門は動物行動学。著書に『カラスの教科書』など多数。現在の勤め先は東京大学と日本郵便が協働で運営する博物館「インターメディアテク」。オフィスの窓から丸の内のカラスたちを観察するのも日課(撮影/岡田晃奈)
 どんなジャンルでも研究者たちの探究心と情熱で切り拓かれてきた。もちろんマイナー分野でもそれは同じだ。ライター・福光恵氏が鳥類学者の2人から知られざる研究の世界をレポートした。AERA 2019年10月14日号から。

【写真】森林総合研究所の主任研究員、川上和人さん

*  *  *
「この木のこのへんに、黒い巣があるのが見えますよね?」

 東京大学総合研究博物館に勤務し、カラスの生態、行動、進化などを研究テーマとしている松原始さん(50)は、そう言って画面の中の森の写真を指さした。

 はい。素人には、まーったく見えません。実はこれがカラスの巣らしい。専門家になると、電車のなかから遠目に森を眺めつつ、カラスの巣を確認できるようになるそうだ。

 松原さんも、研究対象と運命で引き合わされた「赤い糸派」のひとりだ。カラスに興味を持ったのは、小学校に入学する前。カアカアと鳴くカラスに、試しにカアカアと口まねをしてみたところ、カアカアと返事があったのがきっかけだった。

 今でこそ、カラスだけの研究をしている鳥類学者はいるが、松原さんが研究者になった当時は、ほかにライバルがいないブルーオーシャン状態。そんな独壇場で、これまでさまざまな発見もした。例えば、森にすむハシブトカラスの生態。

「街にすむカラスのことはよく知られていますが、実はもともと森にもカラスはすんでいて、それも針葉樹の植林に多くすんでいることを発見しました」

 今も週末は全国の森に出かけ、カラスを観察するのが主たる活動内容。とはいえ、先輩研究者もいないマイナージャンル。最初は森にカラスの巣を見つけることさえ、簡単ではなかったという。

「森には刺激がないので、カラスはいたって静かなんです。諦めて帰ろうとすると、後ろで静かに立っていることもあった(笑)。森に足を運び、3年目にようやく巣を見つけました」

 研究費用は、旅費、カメラ、ドローンなど。クラウドファンディングで「約7万円」集めたことはあるが、基本は「自腹」でまかなう。

「私は科研費をもらうのがヘタ。とくに『この研究はこれだけのメリットがある!』といった白々しい文書を書くのが苦手で……。同僚には、甘いと怒られています」

 休みの日は昼すぎからコインランドリーへ。夕食の材料を物色しに商店街を回り、カラスに出合えば、しばし観察。テレビを見ながら腕を振るった料理を味わうそうだ。ちなみにこの夏のドラマでは「偽装不倫」がお気に入りだった。意外。

 一方、同じ鳥類学者でも、森林総合研究所の主任研究員、川上和人さん(46)の研究はずいぶん違う。島嶼(とうしょ)生物学(島に生息する生物についての生物地理学)が専門で、鳥が生態系の中でどういう機能を持っているのかなど、鳥と別の種とのネットワークがメインの研究課題だ。

 今年の調査の舞台は、数年前に噴火した西之島(小笠原諸島)。まだ溶岩しかない新しい島に鳥が一番乗りですむことで、土壌などの環境がどう変わっていくかを、今後100年、千年にわたって観察していく。

「鳥を守ることによって我々の環境も守ることができるとか、研究には実はいろいろ役に立つこともある。でもそれ以上に伝えたいのは、鳥類学はおもしろいということ。役に立つからじゃない。こんなにおもしろいからみんなも知ってくれよ、とね」

 自身も普通の感覚を持った、普通の人でいたいという。そのために川上さんが決めていることがある。「疑問を持ったことを放置しない」ことだ。

「なぜ植物は緑なの?から、あの映画に感情移入できなかったのはなぜ?まで、いろんな疑問を放置せず、ちゃんと考えて自分なりに納得できる答えを出すようにしています」

 と、ここで、川上さんの著書『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』にある「二次元妄想鳥類学事始め」と題した章を思い出した。ここではチョコボールのキャラクター「キョロちゃん」がいったいどんな鳥なのか、専門家の川上さんならではの視点で分析をおこなっている。

 例えば、キョロちゃんは二つの目が顔の前方に集まって、広い視界を確保できない人相……いや鳥相。また大きなくちばしを持つことから「捕食者がおらず警戒を必要としない地域で、樹上の果実を食べて暮らしている」といった仮説を立ててみせる。こんなユニークな分析も、「放置しない」ルールの一例だ。(ライター・福光恵)

※AERA 2019年10月14日号より抜粋

このニュースに関するつぶやき

  • ある意味本物の学者ですよね��������自身の研究を追求し考察して結論を導き出すが学問の真髄。昆虫学者も昆虫になりきって生態を解明した方も居ますからねɽ���ʴ򤷤���
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  • (本人はあまり意識していないけど)アウトリーチ能力に長けた、キャラの立つ研究者。決して「鳥マニアのカリスマ」ではない。生物学の普及や裾野拡大のために活躍してほしい。
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