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改正法の影響は? ビッグローブ有泉健社長に聞く「BIGLOBEモバイル」の今後

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2019年10月15日 06:12  ITmedia Mobile

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写真BIGLOBEモバイルのトップページでは初月無料や手数料無料などのキャンペーンを訴求している
BIGLOBEモバイルのトップページでは初月無料や手数料無料などのキャンペーンを訴求している

 KDDI傘下として、2017年9月に再スタートを切ったビッグローブ。ブランドを「BIGLOBEモバイル」に一新し、“SIM替え”を打ち出してから2年がたった。その間、同社は徐々に回線数を伸ばし、2019年3月時点ではシェア6位(MM総研調べ)をキープしている。その間、同社は「エンタメフリー」と呼ばれるゼロレーティングのサービスを拡充。ユーザー層も拡大してきたという。



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 一方でビッグローブは100万契約未満のMVNOながら、10月1日に施行した改正・電気通信事業法の影響を受け、端末割引や長期契約の違約金などの制限が適用される。KDDI傘下のサブブランドと見なされるからだ。この状況に対し、同社はどのような手を打っていくのか。ビッグローブの代表取締役社長を務める有泉健氏にお話を聞いた。



●改正法の規制は想定外だった



―― 10月に改正・電気通信事業法が施行されました。その影響も踏まえつつ、最新の取り組みを教えてください。



有泉氏 直近では電気通信事業法の改正がありましたが、それより前に、楽天のMNO参入が明確になっていました。期初には、社員には「われわれは選ばれるBIGLOBE」になるとげきを飛ばしています。商品の差別化もそうですが、信頼、品質など、ベースになる部分を磨いた上で、さらに差別化する。今まで以上に選んでいただくポジションになるため、楽天が参入する10月は厳しいことになるという前提で作戦を練ってきました。



 そこに、電気通信事業法の改正がありました。MNOだけかと思ったらわれわれまで対象になってしまったのは想定外でしたが、いずれにせよ、何が起こっても、やらなければいけないことは変わりません。固定系ではau光を中心に光コラボがありますから、これを右肩上がりで伸ばす。MVNOにはついては当初から変わらず、ID数を増やしていく。そのためには、信頼と品質が必要です。



 MVNOを選ぶとき、最初の決め手になるはやはり価格ですが、ご存じの通り、通信速度もハイライトされるようになってきました。ここでは、コスパ感を追求しなければいけないと思っています。ゼロレーティングについても、われわれは老舗だと思っていますが、お客さまに喜んでいただける対象となるサービスを広げてきました。直近では、ドコモのd系コンテンツを取り入れていますし、その前にはLINE MUSICも対象にしています。オープン化しているサービスについては、ニュートラルな立場で中身を充実させていく予定です。



 価格と速度とゼロレーティングに加え、さらには他社にない特徴として光があります。BIGLOBEモバイルと光回線をバンドルすると、さらにお客さまにお得感が出るようにしていますが、この辺で差別化を図っていこうとしています。



 もう1つ忘れてはいけないのが、お客さま接点です。コールセンターのクオリティーはこの2年間で格段に上がっています。Help Desk Instituteというサポートのメンバーシップがありますが、私たちは格安SIMの問い合わせ窓口として、三ツ星という栄誉あるレーティングをいただくこともできました。バックヤードの品質も上っているのです。AIチャットbotも手掛け、フロントラインもバックヤードも選ばれるBIGLOBEということを進めてきました。



 プロモーションでは、Abema TVで単独スポンサーの番組を持ち、そこで収録したインフォマーシャルを交通広告やネット媒体で広く拡散させる取り組みをしています。料金がベンチマークだったため、そこをハイライトしていましたが、それに加えてゼロレーティングや光とセットの世界を訴求するようにしました。そのおかげもあり、ゼロレーティングはお客さまに受け入れられてきた実感があります。MVNOとしての契約者数の伸びも、マクロ以上に伸びています。



 キャンペーンを打っていることもありますが、ゼロレーティングは若い方にも関心を持っていただけたため、結果として音声SIMにゼロレーティングをつけてご契約いただけることが顕著に増えてきました。



―― やはり、改正法が適用されるのは想定外だったんですね。



有泉氏 ここは意外ではありましたが、逆にチャンスだとも思っています。端末の利用が長期化し、SIMフリーや中古端末が活況を呈する一方で、解約手数料(違約金)が下がってユーザーは流動化します。その反面、長期利用特典には制限がついてしまうため、特典以外のところが重要になってきます。



 私たちは、攻めと守りの両方を固めようとしています。まず攻めについてですが、われわれはSIM単体の需要に応えてきましたが、SIMフリー端末や中古端末とのセット販売も既に量販店や中古店で始めています。ここは拡大を狙っていく動きをしています。



 守りについては、ゼロレーティングや光のセットの販売で、解約率が顕著に抑えられることがデータでも証明できました。ここは、引き続き磨いていこうとしています。



―― いわゆる違約金はどうされたのでしょうか。



有泉氏 10月1日以降、特に料金プランの変更は行っていませんし、翌月を起点とした1年の最低利用期間も変えていません。ただし、解約手数料については8000円から1000円に変更しました。MNPの手数料も、これまでは利用開始から3カ月以内は6000円、それ以降は3000円でしたが、こちらも一律で3000円にしています。



●エンタメフリーで解約率が下がる効果も



―― エンタメフリーはニュートラルに拡充するというお話でしたが、新サービスを追加する際に、何か基準のようなものはあるのでしょうか。加入目標もあれば教えてください。



有泉氏 数値目標としてどのぐらいの加入数に持っていくかということは、特にベンチマークにはしていません。ただ、これからはしていかなければいけないと思っています。帯域を広く使うサービスですし、いい意味でも悪い意味でも、収益にフィードバックがかかりますからね。一方で、BIGLOBEモバイルの看板になりつつあるサービスなので、方針として数値目標はしっかり持っていきたいと考えています。



 コンテンツの数は、方針として、広くあまねくお客さまに喜んでいただけるものを投入していくべく、拡大路線を考えています。一定の料金を頂戴しているため、結果としてARPUは上がりますし、解約率が下がる効果もあります。この辺をにらみつつ、経営指標にしていきたいと思います。



―― ARPUが上がるのは分かりますが、解約率も下がるというのは意外でした。



有泉氏 データを見ると、明確に下がることが分かります。そういう目的があって始めたサービスではありませんが……。



―― 半分ぐらいになるといったところでしょうか。



有泉氏 そこまでは下がりませんが、微々たる数値というわけではないといったところです。



―― 半分より下の数割といったところですね。ユーザー層も変化したというお話でしたが、これもエンタメフリーの成果でしょうか。



有泉氏 若い層を増やしたかったというのはあります。BIGLOBEは老舗なので、やはり40代、50代、60代の男性が中心でしたが、これからの世代として20代を厚くしたいと考えていました。エンタメフリーがかなり認知されたおかげで、それが若い人の加入にかなり効いています。



―― ただ、料金だけを見ると、UQ mobileが値下げした結果、サブブランド同士の差が少し埋まってきた印象もあります。ここについてはどうお考えでしょうか。



有泉氏 MVNOの宿命ですが、やはりお客さまにとっては料金が一番のプレゼンスになっています。UQ mobileはサブブランドと位置付けられてきましたが、今はMVNOの料金もダウントレンドです。(UQ mobileの値下げは)そこよりさらに下げないと、プレゼンスがなくなるという判断があったと推測しています。おっしゃる通り、確かに近づいてきてはいますが、料金はどこかに収束していきます。ですから、最後は色をどう出せるかの勝負になってくるのではないでしょうか。法改正の話だけでなく、いずれのステージでも、差別化が生き残りのコアな要素になります。



 そこに力を注ぎ、どう色を付けていくのか。モバイルだけでは限界があるところに、固定の色を付けつつ、個人から家庭に単位を上げることも考えなければなりません。そのため、2つのメディア(固定とモバイル)で浸透させていく、差別化のシナリオメークに注力しています。



●端末ならBIGLOBEという色がなかった



―― 先ほど端末を強化するというお話もありました。こちらについては、具体案は何かありますか。



有泉氏 通信料金と端末価格の分離の話があり、お客さまの利用も長期化していきます。その中で、SIMフリーや中古端末という選択肢が出てきて、もう1回お客さまが見直しをかけるフェーズに入ってくると見ています。私もSIMフリー端末をBIGLOBEモバイルの回線で使っていますが、最近は端末のプロセッサの性能が上がっていて、MVNOの回線でも動画の品質が悪くない。端末のパフォーマンス向上に、事業を助けてもらっている側面もあります。これまでは、SIMカードのみをハイライトしていましたが、これからは端末セットに力を入れていきます。



―― とはいえ、セット販売自体はこれまでもありました。



有泉氏 はい。していました。ただ、Webが中心で端末ならBIGLOBEという色はありませんでした。既に始めてはいますが、これからはネットはもちろんのこと、量販店や併売店、あるいは中古端末の販売店とも一緒に、セット販売を強化していきます。



―― そういった店舗では端末を単体で扱っていますが、いわゆるBIGLOBE端末ということではないということですね。



有泉氏 量販店で売れるSIMフリー端末があったとき、そこでBIGLOBEモバイルをレコメンドしていただいたり、中古端末にBIGLOBEモバイルのSIMカードをセットして売っていただいたりといったことを、トライアルとして実施しています。



―― BIGLOBE自身でラインアップを拡大するということもあるのでしょうか。



有泉氏 まだ最終的に(P30、P30 liteを)出せていませんが、Huaweiさんがああいう状況になってしまったこともあり、それに代わるSIMフリー端末として、市場の受けがいいものを加えていきます。また、日本製、特にシャープ端末は非常に引きが強く、この路線も続けていきます。他にも、まだ出せていない海外製品はラインアップに加えていきたいですね。



―― iPhoneも取り扱っていますが、いかがですか。



有泉氏 出てはいますが、扱っているラインアップの中では、他とほぼ同等ぐらいという印象で、飛びぬけているわけではありません。格安SIMとセットでとなると、比較対象のスコープを広げるのではないでしょうか。それだけiPhone以外の端末も、パフォーマンスが上がっているということで、自分の実感としてもそれはあります。



●独自ショップの計画はなく、量販店などをパートナーにする



―― 量販店などが中心とのことですが、ユーザー層が広がる中で、顧客接点として独自のショップを持つMVNOもあります。こういった取り組みはお考えでしょうか。



有泉氏 以前からそうですが、独自のショップは持っていません。販路の中心は自社のWebショップになります。ただ、ご指摘の通り、MVNOに詳しい方は一巡して、キャズムを超え、今はマジョリティー層に移っている段階です。そういう方々に、ネットだけで販売するのはやはり厳しい。フェーストゥフェースで説明して、買っていただく場は増やさなければいけないと考えています。ただ、独自ショップの計画はなく、量販店などをパートナーにしていく計画です。リアルなショップを求められているところはあるかもしれませんが、事業オペレーション上、どうしてもWeb中心になってしまうところはあります。



―― auショップを活用するということはありえますか。



有泉氏 モバイルに関しては、まだそういうところまで行っていません。希望としてはリアルな接点でという思いはありますが……。ただし、固定回線についてはauショップで扱っています。法制度が変わり、KDDIグループでファンを増やしていく取り組みも出てくると思います。



―― au IDもオープンになりましたが、これを活用していく計画はありますか。



有泉氏 私どももBIGLOBE IDでオペレーションをしていますが、これからは、au IDを持っていただくようにすることも事業計画として考えています。au経済圏などのお客さまに使ってほしいものについては、環境を作っていく取り組みを進めていきます。



―― 増税もあり、au Payやau WALLETなど、キャッシュレス関連のサービスはユーザーにはオススメしやすいかもしれません。



有泉氏 私たちには「Gポイント」がありますが、このポイントをau WALLETのポイントに変換することができます。そういう形で、au WALLETやau Payの原資として使えます。キャッシュレスの原資になるということは、もっとハイライトしていきたいですね。



―― 2年前の発表会では、動画視聴時などの帯域制御を最適化し、体感をよくしていくという取り組みを発表されていました。こちらについては、何か変更点はありましたか。



有泉氏 その技術は、MVNOは帯域があまり取れないところで、どのぐらい快適にできるかという例として紹介しました。バッファリングで帯域を取り、動画の再生中は他の方に帯域をアサインするというもので、体感上は途切れないよう、動画を再生できる技になります。この技術も、もちろん進化させなければいけないと考えていて、今、技術陣がリファインをかけようとしているところです。



●ドコモと「回線貸し出しをやめる交渉」はしていない



―― 2年前の会見では100万回線という目標を掲げていました。こちらについてはいかがでしょうか。



有泉氏 就任後最初の記者会見で、2020年に100万回線で黒字化を目指すとたんかを切ってしまいましたが、回線使用料もあり、そのレベルでもなかなか黒字化するのが難しいのが実情です。今はモバイル事業がはじき出せる月額料金のストックを、何とか黒字化することをベンチマークにしています。それがどのぐらいの回線数かというと、帯域の使用料の話もあり、なかなかたんかを切りづらいのですが(笑)。



―― 回線に関しては、現状、ドコモとauの両社から借りています。一方で、ドコモは、MNOのグループ会社のMVNOに対して回線を貸し出すことについて、難色を示し始めています。以前、吉澤社長にお話をうかがった際には、やめてもらうような交渉も始めていると伺いましたが、実際にはいかがですか。



有泉氏 楽天の話として、MNOとMVNO同時進行はどうかとおっしゃっていましたが、楽天だけでなく、他のMNOとMNO傘下のMVNOについても、同じように見られていると受け取っています。ただし、現実的には、特にドコモと直接のネゴシエーションをしているということは起っていません。



―― その部分は、どうしていくおつもりですか。



有泉氏 私の認識ですが、NTTグループとは古くからの付き合いがあり、NTT東西との光コラボや、ドコモのMVNOをやってきました。確かにBIGLOBEはKDDIグループではありますが、ニュートラルな立場のスタンスを変えるつもりはありません。われわれはオープンになったものを使っていくプロバイダーで、それがひいてはお客さまのメリットになります。今の立場をまったく変えることなく、各社がオープン化するところがあれば、それをわれわれの商材に取り入れていきたいと思います。



―― au回線についてはいかがですか。速度的にはやはりそちらの方が出しやすいと思いますが。



有泉氏 最初はお客さまも様子見されていましたが、いったん使っていただければ快適度も高く、レピュテーションも上っています。タイプD、タイプAともに、デーリーの動きとして、ほぼ同数ぐらいの獲得になるまで、認知が広がって評価もされるようになってきました。とはいえ、収容しているお客さまの数が圧倒的に違うこともあり、そういった面で、速度感の違いはあると思っています。



●取材を終えて:守りを固めて堅調に成長



 10月1日の電気通信事業法改正を機に、BIGLOBEモバイルはその戦略を徐々に変えようとしていることがうかがえた。エンタメフリーの推進と、光回線のセット販売で守りを固めつつ、端末とのセット販売を強化する攻めにも転じるというのが同社の基本方針だ。若年層が増えるなど、エンタメフリーは守り以上の効果も着実に出ているようだ。



 一方で、MNO傘下のMVNOが他のMNOの回線を使うことについては、ドコモが問題視しているのも事実。ビッグローブとしては継続する意思が強いようだが、楽天の新規参入を機に議論が本格化する可能性もあり、予断を許さない状況といえそうだ。


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