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「未知との遭遇」に期待する読者へ 「小説家が偏愛する本」のアンソロジー刊行

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2019年10月15日 08:00  AERA dot.

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写真皆川博子(みながわ・ひろこ)/1930年生まれ。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞、ミステリーをはじめ、多彩なジャンルで執筆を続ける。受賞多数(撮影/写真部・加藤夏子)
皆川博子(みながわ・ひろこ)/1930年生まれ。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞、ミステリーをはじめ、多彩なジャンルで執筆を続ける。受賞多数(撮影/写真部・加藤夏子)
 小説家・皆川博子さんによる『彗星図書館』は、小説の女王とも呼ばれる皆川さんが耽読し、永遠に残したいと思った本を紹介したエッセー集。自身の偏愛する本を紹介し始めたきっかけは、なんだったのだろうか?

*  *  *
 圧倒的な世界観を持つ物語、言葉を自在に操り、時に残酷なまでに美しい日本語表現。皆川博子さんは、本を愛する読者を魅了し続けてきた。

 本書は『辺境図書館』に続いて、皆川さんが偏愛する本を蒐めた一冊だ。国内外の小説、そして戯曲やアンソロジーを取り上げた26篇がおさめられ、巻末には索引もついている。

「フランス革命を背景にした『クロコダイル路地』という作品を書いた時のことです。タイトルをマンディアルグの短編『ポムレー路地』から思いついたんですが、生田耕作さんの素敵な訳の本をなくしてしまって。担当編集者に作品が入っている『黒い美術館』を取り寄せてもらいました。そうしたら彼がマンディアルグを初めて読んで、こんなに面白い作品があったとは、未知との遭遇でした──と言ってくれて。そこで若い読者に向けて、本を切り口にした連載を始めることになりました」

 品切れになった本も、最近はネットで探すことが容易になった。

「せっかくの機会なので『隠れてしまっていて惜しいなあ』と思う本を紹介したいと思いました。作品そのものの魅力を感じてもらえるよう、なるべく引用を多くして、本と読者がじかに向き合うような書き方にしています。書いていると自分の記憶が蘇って、つい寄り道をしてしまいますね」

 その「寄り道」が読者には楽しい。読書の記憶、作家の思い出と作品のつながりは、本を読むという体験が身体化されていく過程を覗き見るようでもある。

 たとえばメリメの「マテオ・ファルコーネ」を読んだ、東京・上野の児童図書館の様子。ミハル・アイヴァスが描く水の描写からは、同じく水が重要なモチーフとなる泉鏡花が導き出される。皆川さんの手にかかると、「作品紹介」も一篇の作品を読むような複雑で豊かな文章になるのだ。

 さて本書の最後に置かれたのは「清水邦夫『ぼくらが非情の大河をくだる時──新宿薔薇戦争──』を再読しつつ」。作者の名前は「皆川博子」とある。清水作品を引きながら、ここで語られるのは1964年から72年ごろにかけての、デビュー前の皆川さんの経験だ。自身のことを書くのは好まないという皆川さんだから、貴重な文章だといえるだろう。

「(短歌編集者で作家の故)中井英夫さんが記憶について『砂金のように残るいくつかがある』と書いていらっしゃいましたが、ますます、その言葉に共感するようになりました」

(ライター・矢内裕子)

■東京堂書店の竹田学さんのオススメの一冊

『どうして、もっと怒らないの? 生きづらい「いま」を生き延びる術は障害者運動が教えてくれる』は、他者を排除せず共に生きるための対談集だ。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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「どうして、もっと怒らないの?」。これは障害者差別に対して激しい抗議運動を展開した脳性マヒ者の運動団体「青い芝の会」の伝説的闘士・横田弘が、晩年、繰り返し著者に語った言葉だという。

 著者は横田の言葉や障害者運動史を掘り起こし、相模原事件以後蔓延するヘイト表現や差別に対する「まっとうな怒り」を甦らせ、他者を排除せず共に生きるための途を探る。障害者運動を牽引する尾上浩二や川口有美子、「青い芝の会」のドキュメンタリー映画「さようならCP」監督の原一男や横田に薫陶を受けた九龍ジョー、政治学者・中島岳志など、強烈に魅力的な人々との対話は横田らの運動を深く多面的に描き出し、その怒りを現在に共振させる。

 怒りを込めて振り返り、憎悪に染まらず怒りを分かち合う。人間の尊厳を守り闘うための確かな言葉がここにある。

※AERA 2019年10月14日号

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