『まだ結婚できない男』阿部寛演じる桑野が“まだ結婚できない”ワケ 面倒臭すぎる生態をシビアに分析

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2019年10月15日 08:11  リアルサウンド

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『まだ結婚できない男』(c)カンテレ

 阿部寛主演ドラマ『結婚できない男』から13年ぶりの続編『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)が10月8日からスタートした。53歳となった阿部寛演じる桑野信介は、相変わらず偏屈で独り身を謳歌する日々を送っている。その変わらない姿に嬉しくもあり、まだ独身だったのかとちょっと残念でもある。13年経過しても桑野はなぜ未だ結婚できないのか? シビアに分析してみたいと思う。


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 2006年に放送された『結婚できない男』での桑野信介は、建築家としてテレビに取材されるほど仕事の評価は高く、背は高いし顔もよく、高級マンションに住む収入もあり、一見モテ要素満載の男なのだが、とにかく皮肉屋で偏屈。何事も余計な一言が多く、結婚に関してはメリットがないと嫌悪し、それでいて自分の趣味には徹底的に凝るタイプなので、40過ぎても「結婚できない男」であった。そんな人柄だが、根は常識人で自分なりの正義感があり、元隣人の田村みちる(国仲涼子)がお金に困っていたら貸してあげようとしたり、ストーカー被害にあっていると助けてあげたり、犬が逃亡したら必死に探すなど実はいい人。桑野を本当に嫌いになる人は少なく、気がつくとみんな桑野の話をしてしまうほど、周りから愛されている存在でもある。


 まず桑野の面倒臭いところは、女性に対し、その人のネガティブ要素を抉るように皮肉を言いまくるも、決して相手が嫌いではないという、こちらが察するのが難しい心情の持ち主であること。それも桑野的には一つのコミュニケーションなので、言い過ぎて相手のリアクションが悪いととても気にしていたりする。その性格が理解されても恋愛対象にならないのは当然の結果。例え好きな人ができても、桑野の性格なら、ちょっとでも嫌われる要素があったら決して深追いをしないのも美学だと考えていそうだ。


 こうしてみると、桑野は女性嫌いのようにも見えるが、決してそうではない。キャバ嬢を元彼から守ろうと擬似彼氏を演じ、それでちょっと好かれるとその気になってしまうエピソードがあったが、デートや恋愛をしたくないわけではなく、むしろ女性から褒められたい気質が感じられる。つまり、桑野は単純に女性の扱いが慣れていない「恋愛下手」という考えもできる。恋愛感情ではないのに、ちょっと優しくされると勘違いしてしまい、その繰り返しで他人に幻滅し、変な壁ができていったパターンかもしれない。それに加え、コミュニケーション下手で善意が相手に伝わらないことも多々あり、他人との行動は面倒臭いという境地に達して、合理的な行動をとるようになったと考えられる。当初はみちるのペットである犬のケンを毛嫌いしていたが、母親の育代(草笛光子)に「あんた子供の頃犬が大好きだったのにね」と言われる。桑野は「そんなことないだろ」と返していたが、やはり元々はピュアで、色んなことを経験してきたことで偏屈になったことが垣間見える。


 また、独身生活が長いと他人の干渉がないために、自分の世界観やルーティーンができあがる。特に桑野は色んなものに興味がありこだわる性格から、そのペースを崩されるのを異常に嫌う。ただ、その桑野ワールドに共感し、自ら入って行くような人なら喜んで迎え入れるだろうが、未だ独身というのが結果を物語っている。


 そして、桑野が独身でい続ける最大の原因は、彼の周りには何だかんだ程良い距離感に話し相手をしてくれる人がいるということではないだろうか。桑野は実家暮らしではないが、常に母親や妹夫婦が桑野を見張るように周りにいるというのも実家暮らし状態と変わらず、桑野的には母親の面倒を見ていることになるのかもしれないが、独身でも寂しくないというのは、婚期が遅れる大きな要因だ。


 そんな中でも一番気心を知る良き理解者が、内科医・早坂夏美(夏川結衣)だった。彼女がいたからこそ、40過ぎの桑野は独身でも楽しくいられ、救いでもあった。前作『結婚できない男』では、あれだけ素敵な恋のキャッチボールをし、プロポーズが成功するのかと思いきや、桑野が最後に「理想の家のイメージができない限り結婚できない」という、建築家らしい変なこだわりで行く末が曖昧に。結末をハッキリと描かないからこそ、『結婚できない男』は粋な名作ドラマになっていた。


 13年ぶりの続編『まだ結婚できない男』で、桑野が早坂先生とは結婚していないという答えが出てしまい、本当に残念としか言いようがない気持ちでいっぱいだ。桑野のような性格は歳をとればとるほど頑固になるし、前作を観返すと、早坂先生はやはり良き理解者ではあるが、一生付き合える「友達以上恋人未満」の関係にも見えてくる。


 40代は結婚に対しても切迫感があったが、53歳となった桑野はもう人生100年の独身生活を送る腹を括ったようなスッキリとした雰囲気さえ漂わせ、元部下で今は共同経営者となった村上英治(塚本高史)に対しての嫌味にも、余裕がありどこか達観したようにも感じる。もちろん年齢的なものもあるが、あの早坂先生と結婚できなかったのだから、もう色々と諦めて感情をシャットダウンしたのではないだろうか……。ただ、弁護士の吉山まどか(吉田羊)が独身と聞いて話に食いついてきたように、まだ結婚には未練があるようだし、達観した桑野のペースを乱すブロガー・やっくんの存在が、今後桑野にどういった刺激を与えていくのか。そして早坂先生との関係は語られるのか。相変わらず面白い桑野の生態を今後も観察していこう。 (文=本手)


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