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子ども向け伝記のラインナップから見える「女らしさ」とは? 日本は「愛の天使」、アメリカは「強い先駆者」

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2019年10月15日 10:25  AERA dot.

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写真アメリカの伝記で常連なのが、この女性たち。左から奴隷解放運動家ハリエット・タブマン、飛行家アメリア・イヤハート、力強い作品が特徴のメキシコ人画家フリーダ・カーロ(写真/本人提供)
アメリカの伝記で常連なのが、この女性たち。左から奴隷解放運動家ハリエット・タブマン、飛行家アメリア・イヤハート、力強い作品が特徴のメキシコ人画家フリーダ・カーロ(写真/本人提供)
「テレビの女性アナウンサーを見ると、その国で理想とされている女性像がわかる」と言われます。すごく大雑把な言い方をしますが、日本の女性アナウンサーは「かわいい系」のかたが多い気がします。甘く優しい顔立ちで、ひざ下スカートにふんわりトップスといういでたち。対してアメリカの女性アナウンサーは「キレイ系」です。マスカラとアイライナーで目じりをキリッと吊り上げ、ボディラインを強調した服に身を包んだ、迫力ある女性が多い印象です。

【写真】アメリカの男女別子育て本の表紙は?

 国によって形を変える「理想の女性像」。女性アナウンサーだけでなく、広告やAIなど、社会のいろいろな場所に投影されています。そして、子ども向けの伝記もそのひとつじゃないかと思うんです。

 アメリカの子ども向け伝記を見ると、「強い意志で社会を変えた女性運動家」や「女性としては先駆的な活躍を遂げた女性」が好まれているように見えます。書店・図書館には必ずあるといっていい伝記定番シリーズ5種類(※注1)のラインナップを調べたところ、次のような女性偉人たちがよく取り上げられていることがわかりました。

ローザ・パークス(公民権運動の母)
ハリエット・タブマン(奴隷解放運動家)
マザー・テレサ(修道女)
マリー・キュリー(キュリー夫人。科学者で物理学者)
ジェーン・グドール(チンパンジー研究者)
アメリア・イアハート・イヤハート(パイロット)

 初めの3人は人種差別や貧困問題に正面からぶつかった運動家、あとの3人はほとんど女性がいない分野で大きな功績を残した人物たちで、「強い」「勇敢な」「革新的」「先駆者」といった言葉が連想されます。
 
 さて、日本の子ども向け伝記はどうなっているでしょう。主要出版社5社(※2)の伝記シリーズを比較したところ、どの出版社も必ずラインナップに入れている世界の女性偉人が3人いることがわかりました。皆さん、誰かわかりますか?

 その3人とは、
・アンネ・フランク
・ナイチンゲール
・ヘレン・ケラー
 です。

 この3人、どんなイメージがありますか。「けなげ」「世のため人のために尽くした」「優しい女性」のような言葉を連想しませんでしょうか。実際、各社の伝記タイトルには「愛」や「天使」といったキーワードが使われています。「愛を伝える女性伝記」と題して3人の伝記をセット販売している出版社もあります。

 ただ、言うまでもなく3人とも、優しさだけでなく強さや賢さ、自由な発想力を持ち合わせている女性でした。アンネ・フランクはジャーナリストになるとの固い意志を胸に日記をしたため、ナイチンゲールはダンスやお茶会そっちのけで勉強に精を出して、変わった子だと噂されました。ヘレン・ケラーも強く優秀な女性で、ラドクリフ大学(現在のハーバード大学)を卒業したあと仕事がないときには、「自分の三重苦の障害を売りに、本の執筆や講演活動をしてお金を稼ごう」なんていうしたたかさもあった人です。それが、日本の伝記だと「愛の天使」と形容される。もちろん間違っているわけではないけれど、それは日本で理想とされている女性像が「愛の天使」だからではないかな、と思うのです。ちょうど、かわいらしい女性アナウンサーがもてはやされるように。

「日本の伝記って遅れてる〜。アメリカみたいに、もっと強い女性を取り上げればいいのに!」と言いたいわけではありません。単に文化の違いだと思うのです。ふんわり優しい女性を目指す日本と、キリッとたくましい女性を好むアメリカ。どちらがいい、悪いという話ではありません。

 ここで述べたいのは、「日本で理想とされている女性像は、日本の外では通用しないかもしれない」ということ、そして「それを子どもにも教えておきたいですよね」ということです。日本の伝記だけを読んでいたら、もしかしたら子どもは「女の子は愛らしく優しいのがいちばん」と思って育ってしまうかもしれません。でも愛らしく優しいだけでは、少なくともアメリカではやっていけません。キリッとたくましい女性たちに先を越されてしまいます。

これからは、というかすでにもう、社会はグローバル化していますよね。日本的なジェンダー像にとらわれることなく他国の文化を取り入れて育てていけたら、きっとお子さんは世界で活躍するバランスのとれた逸材になると思うのです。

【注釈】
※1 ペンギンランダムハウス発行の「Who was?」「Ordinary People Change the World」「step into reading」シリーズ、ハーパーコリンズ社発行の「I can read!」シリーズ、フランシスリンカーン社発行の「little people, big dreams」シリーズの計5種類です
※2 角川書店、講談社、集英社、小学館、ポプラ社の計5社を調べました

※AERAオンライン限定記事

◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

このニュースに関するつぶやき

  • アンネ・フランクのイメージとしてトップに「優しい」は出てこないけどな。家族に対してかなり辛辣でキツイよ。(非難するのではない)
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  • 女に「家庭の天使」という役割を求める風潮は西洋人にだってあった。
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