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車両浸水被害は300億円以上 北陸新幹線復旧が長期化するこれだけの事情

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2019年10月17日 17:30  AERA dot.

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写真10月16日、水が引いた車両基地(C)朝日新聞社
10月16日、水が引いた車両基地(C)朝日新聞社
 2019年10月11日未明から13日にかけて、東北・関東甲信越・東海地方を襲った台風19号は、各地に大きな爪痕を残して太平洋へ去って行った。今回の台風は典型的な雨台風で、各地に猛烈な雨を降らせ、鉄道の被害もこれまでとは比べものにならないほど大きいものだった。

【写真】目を疑う、水没した北陸新幹線の車両

 千曲川が氾濫したことで、長野市にある北陸新幹線長野新幹線車両センターが浸水し、留置されていたE7系10両編成8本、W7系10両編成2本が側窓下レベルまで冠水したニュースも、驚きとともに取り上げられた。10編成すべてが廃車になると、その損害額は車両だけで三百数十億円ともいわれているが、再び日の目をみる可能性はあるのか。この車両の特徴に着目して検証した。

*  *  *
■車両の気密性が高いから浮いた

 北陸新幹線用には設計が共通仕様のE7系(JR東日本所属)19本、W7系(JR西日本所属)11本、計30本が在籍しているが、今回冠水したのはそのうちの3分の1に相当する。一部の車両は脱線したが、これは車内の気密性が高いため客室が浮輪の役目を果たし、水面に浮いてしまったものとみられる。

 JR東日本は15日の時点で詳しい現地調査ができていないため、被害状況が把握できていないとしていたが、16日にようやく車両基地の水が引いて点検が行える状態にまでなり、ヘルメットをかぶった作業員が車両の床下を点検する姿が見られた。今後状況が解析されるが、床下機器には電子部品が多く使われ、半導体が水に浸かったことが容易に想像できることからも、修理をして使用するには部品の交換は必須だろう。さらに現段階では発表されていないからわからないが、車内まで浸水していたなら内装や座席の交換まで対象になり得る。

■1本に計20基のモーターを搭載

 北陸新幹線用のE7系・W7系とはどのような車両なのだろうか。車体はアルミニウム合金製で軽量化を図り、東北・北海道新幹線用のE5系・H5系と同等の出力300kWの交流モーターを1両につき2基、12両編成のうち両先頭車以外は電動車なので、1本に計20基のモーターを搭載する。この交流モーターは電圧と周波数をコントロールすることで制御するVVVFインバータ制御方式を採用、直流電気を交流電気に変換する装置に半導体素子が用いられている。

 台車にはモーターとブレーキ装置、床下にはVVVFインバータ制御器、主変圧器・補助電源装置など搭載されているが、北陸新幹線の沿線は降雪地帯のため、台車や床下に着雪しないようカバーされている。これは東北・上越新幹線の車両も同じで、東海道・山陽新幹線では見られない。とはいえ、カバーされていても今回の台風では隙間を縫って台車なども浸水したことは想像に難くない。

 東北・北海道新幹線のE5系・H5系は10両編成で、電動車は両先頭車を除いた8両。これで営業最高速度は時速320キロをマークする。一方、E7系・W7系は車両が増えているとはいえモーターの数も多いが、営業最高速度は時速260キロ、設計最高速度は時速275キロに抑えられている。これは北陸新幹線が整備新幹線計画に基づいて敷設されたため、準拠する法の違いにより時速260キロが上限となっているからである。

 また、在来線時代も難所だった碓氷峠越え(新幹線では安中榛名〜軽井沢間)について、財政難で工費を抑える目的で当時の新幹線の基準では最大12‰(パーミル)に抑える勾配を、連続30‰としたため、北陸新幹線用の車両には強力な編成全体としての出力とブレーキが必要だった。

 なお、北陸新幹線は新幹線で唯一、電気の周波数が変わる特徴がある。東京〜軽井沢間は50Hz、軽井沢〜上越妙高間は60Hz、上越妙高〜黒部宇奈月温泉間は50Hz、黒部宇奈月温泉〜金沢間は60Hzである。E7系・W7系は高速で走行中に車両側が周波数を切り替える専用の装置を搭載している。

■さらなる車両不足を引き起こす可能性も

 2019年10月15日のJR東日本とJR西日本の発表では、北陸新幹線は東京〜長野間、上越妙高・糸魚川〜金沢間で折り返し運転を行い、当面は日中1時間1往復程度の特別ダイヤでの運行とする。長野〜上越妙高間については、長野〜飯山間で線路が冠水した箇所の点検が同日から始まった。信号関係の被災があり、これの復旧には1〜2週間程度がかかるとされ、このほかのインフラに不具合が発見されれば、東京〜金沢間の全線復旧はさらに時間を要する。

 では、全線開通すればダイヤが台風直撃以前に戻るのかといえば、3分の1の車両が浸水したため車両が足らない。他の新幹線から車両を回そうにも、前述の連続30‰勾配や異周波数に対応していなければ走行できない。また、被災した長野新幹線車両センターの復旧具合も気になるところだ。

 新幹線車両は「30日または当該車両の走行距離が3万キロメートルを超えない期間のいずれか短い期間」での検査が法律で義務づけられている。W7系はJR西日本の白山総合車両所で検査・メンテナンスを行うが、長野新幹線車両センターが機能しないとE7系は東北新幹線や上越新幹線の車両基地に回さねばならなくなり、さらなる車両不足が起こりえる。これらも考慮して特別ダイヤが組まれるだろうが、E7系・W7系の復旧の見通しは立っておらず、北陸新幹線の受難は長期化しそうだ。

○平賀尉哲(ひらが・やすのり)/1964年、徳島県生まれ、三重県育ち。鉄道雑誌の編集部に勤務し、2008年にフリーランスの編集者、ライターとして独立。「週刊JR/私鉄 全駅・全車両基地」(朝日新聞出版)、大手私鉄を各社ごとに取り上げて前面展望映像のDVDと詳しい車両紹介、歴史などを記した「完全データDVDBOOK」シリーズ(メディアックス)の企画・編集・執筆に携わる。車両に乗って旅をしているだけで幸せになる「乗り鉄」派である。スキューバダイビングの経験も長く、インストラクターの一歩手前までのライセンスを所有する。

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