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「くまモン」は実は別案だった! 成功の秘密は“課題を超えた提案”

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2019年10月18日 11:30  AERA dot.

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AERA dot.

写真水野学さん/good design company代表。1972年、東京都生まれ。多摩美術大学卒業。98年に現会社を設立し、ゼロからのブランドづくりをはじめ、商品企画、各種デザイン、コンサルティングまでをトータルに手がける(撮影/矢部ひとみ)
水野学さん/good design company代表。1972年、東京都生まれ。多摩美術大学卒業。98年に現会社を設立し、ゼロからのブランドづくりをはじめ、商品企画、各種デザイン、コンサルティングまでをトータルに手がける(撮影/矢部ひとみ)
 教育界ではサイエンスやテクノロジーと同様、「アートの力」の重要性が言われ始めています。そこで「AERA with Kids 秋号」では、クリエイティブディレクターの水野学さんに花まる学習会代表の高濱正伸さんがインタビュー。アートと教育について語り合いました。

*  *  *
高濱:水野さんはたくさんの企業のブランディングをしていますが、読者にわかりやすいのは、やっぱり「くまモン」かな。

水野:そうですね。実は当初依頼されたのは熊本県のPRキャンペーン用のロゴだったんです。でもあれこれ考えていくうちに、ロゴ以上に必要なのは、キャンペーンを宣伝する係ではないかと。当時、宮崎県の東国原(英夫)知事が精力的に宮崎を宣伝していたこともあり、ならば宣伝マンになるキャラクターをつくったらいいのでは?という考えに至ったんです。

高濱:確かにあのころ、彼は宮崎のセールスマンとして脚光を浴びていましたね。

水野:しかもキャラクターなら人間よりもっと自由に動けるぞ、と締め切りギリギリになって構想が結実して。僕はいつも、依頼された仕事の期日は絶対に守り、A案だけでなくAダッシュ案や、全く別のZ案も添えるようにしていました。いわばくまモンは、Z案だったんです。キャンペーンに必要なキャラクターとそのアイデアを提案した。

高濱:なるほど。課題をつきつめていったら、課題を超えた提案が生まれた。

水野:まさにそうです。僕の持論なんですが、デザインには問題を発見したり解決したりする力があると思っています。どんなに内容がよくても見え方がよくないと伝わらない。だからよい見え方を提案する。今や経営とデザインはセットです。よく見えるための課題は何かを探すことがとても大切なんです。

高濱:うーん、問題を解決する以上に問題を発見できる力が大切という……。それ、今の教育の課題とどんぴしゃですよ。これまでの教育は、ひたすら問題を解く能力が重要視されていたけれど、本当に大切なのは、ないものを見つける力、課題設定能力だと。日本の教育界もようやくそちらのほうにシフトし始めてはいるんですけどね……。

水野:デザイン関連の仕事を20年以上続けてきてしみじみ思うんですが、この業界は特殊技能者の世界のせいか、面白い人が多いんです。やっぱり人は得意なことを伸ばすほうが圧倒的にいいんじゃないでしょうか。優秀な人って、頭の良しあしではなく、自分の好きなことをちゃんと見つけてそれを続けてきた人なんじゃないかと。

高濱:僕の周りのかっこいい大人は、みんなそうですね。聞いてみると、子どものころから好奇心と集中力に満ちあふれた生活を送っている。そういう経験をせず、記憶型、詰め込み型の勉強だけで大きくなると、面白く、優秀な人は生まれにくい。今や東大でさえ、これからは官僚型よりもっととがった人が欲しい、みたいなことを言っていますよ。こちらとしては、今さら……と(笑)。まあ、いろいろな意味で転換期です、現在は。

水野:こういう仕事をしていると、アートのセンスって持って生まれたものでしょってよく言われます。でも僕に言わせればアートは言語化できるし、訓練で伸ばせるんです。トータルにきちんと学んで積み上げていけば身につくものだと思う。だからこそ教育が必要なのになあ。

高濱:子どものうちからアートを学べば、社会に出てから美意識を武器に仕事ができる大人になるということですね。

水野:そう思っています。

高濱:ということは、水野さんも子どものころからアートに接していた?

水野:あ、いやいや……(笑)。ただのわんぱく野郎でした。小学生時代は野球少年で、中高時代はやんちゃのはしくれ。

高濱:おかあさん、泣かせましたか?

水野:いや、母は「やれ」「やるな」みたいな言い方をしないんです。「人としてどうなんだ」「どう生きるんだ」みたいなことにはものすごく厳しかったけど。

高濱:ほお、かっこいいですね。

水野:そういえば、父が突然仕事を辞めてきたことがあったんですが、そのときも母はものすごく激怒したあと、じゃあ3人で北海道に旅行しよう、みたいな提案がカラッとできるような……ある意味、母が一番やんちゃだったかなあ。

高濱:じゃあ、アートに目覚めたのは?

水野:実は僕、小5のとき交通事故にあってるんです。ひざの靭帯を切って、成長期のためデリケートな手術が必要で、2カ月くらい入院しました。退院後も野球はやれず、といって勉強なんてもっとやる気になれず(笑)。

高濱:生活がガラリと変わった。

水野:一人っ子だったので、自然と一人遊びに向かって絵を描くようになりました。絵といっても図面みたいなものです。住みたい家の設計図やら迷路やら。

高濱:迷路! 自分で? 迷路つくれる子どもはいいんですよ!(笑)

水野:そうなんですか? そうか、よかったんだ(笑)。方眼紙を使ってけっこう精巧なものをつくってました。500〜1千くらいはつくった記憶があります。

高濱:素晴らしい! 迷路ってほんと、ひとつの才能なんです。とんでもなく集中力が必要だし。

水野:パズルやプラモデルにも熱中しました。バイクを分解して再度組み立てたこともありましたね。50ccのカブですが。

高濱:好奇心と集中力。子どもに必要な2大要素はバッチリですね。美大を目指したのも、その延長線上?

水野:勉強は全くしなかったんですが、中学の美術の先生が面白くて美術に興味を持って。それこそ「この絵はどうしてこういう絵になったんだろう」と考えさせてくれる先生だったんです。

高濱:好きな先生の授業は好きになる。これ、すごく大切。

水野:社会に出てからのことも考えましたよ。グラフィックデザイン学科を受けたんですが、それが一番つぶしがきくだろうというのが理由。大学ではバイトと旅行にあけくれて。バックパッカーとしてヨーロッパをまわったり。

高濱:海外旅行、いいですね。

水野:実は卒業したあとデザイン会社に勤めたんですが、2年でやめて、その後また2カ月間海外を放浪しました。今の会社を立ち上げたのはそのあとです。

高濱:バックパッカー経験者は、起業家に多いですよ。動物的感覚がとぎすまされるというか。

水野:はい。先ほどから子どもに必須の好奇心というキーワードが出ていますが、僕は何に興味を持つかという中身より先に、入れるハコをつくるといいのではと思っています。旅は、そのハコをつくるのに最適でした。外的な刺激をたくさん受け、いろいろな経験を面白がる。そんなハコを最初につくっておくと、好奇心を育てられる気がします。

(構成・文/篠原麻子)

※「AERA with Kids 秋号」より一部抜粋

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